漫画家ものには「実際の出来事を描いた」ものと、フィクションの漫画家を描いたものがありますが、ここでは後者の作品を集めています。実話がだいぶ混じってたりもしますけど。
→ノンフィクション漫画家ルポとかはこちら
かくしごと=描く仕事が隠し事、というダブルミーニングのタイトルが素敵なこのマンガですが、なぜかというと「娘に知られると恥ずかしい」「娘が周りの子からいじめられる」ようなマンガを描いているからであり、アレの作者ならではの説得力があります。
試し読み 講談社コミックプラス
とりあえずコレは外せない、漫画家マンガの金字塔。前身として「燃えよペン」、「新吼えろペン」という続編もあり、時間軸的には燃え→吼えのようです。
熱血漫画家炎尾燃が日々ペンから炎を巻き上げながらマンガを描き進め、言わないでいいことを絶叫し、たまにコネを利用して声優さんに会いにいったりするマンガです。
類似作 アオイホノオ(島本和彦)
試し読み eBookJapan(吼えろペン)
主人公は絵担当とストーリー担当のコンビ。少年ジャンプ(実名)を舞台としたサクセスストーリーです。マンガ編集裏話みたいな側面もあり。
単純に秘密基地のような場所で友人とマンガを作り上げていくというイメージ自体が魅力的です。夢があるというか、見ていて楽しい。これを読んで漫画家を志した人も結構いるのでは。
試し読み eBookJapan
漫画家を目指す青年・満賀描男の家に、「未来から来た自分」を名乗るおっさんが転がり込んできた。助言とも愚痴ともつかないおっさんの言葉に惑わされつつチャンスを掴み始める満賀だったが、その後の顛末を知るらしいおっさんはある「忠告」を残して消えてしまう――
どこかで見たような漫画を描く漫画家の苦闘を描く、一応フィクションの漫画界暗黒物語。
これはどこまで描くのかな、とは思います。佐藤先生にはとりあえずこれで攻撃したい人を全員攻撃してもらって、一種の禊を済ませてほしいな、とも個人的に思っています。
試し読み トーチweb
好きな人に告白したら、サイン色紙を渡された。家についていったら、原稿にベタを塗らされた――190cmの巨体を誇る現役高校生にして少女漫画家の野崎くん(PN.夢野咲子)と、日々リボンが巨大化していくヒロイン佐倉千代を中心に、キャラの濃過ぎる面々が織りなすラブコメ(?)4コマ漫画。
比率的にはラブ0.5コメディ9.5ぐらい。
試し読み ガンガンONLINE
朝海雪夫、29歳、コンビニアルバイター。本業は漫画家……構想云年の脳内大作を連載するも無情にも打ち切られ、漫画への情熱を失いかけている彼の隣に、劇団員の女の子が引っ越してくる。彼女に触発されてなんとなくアシスタントの依頼を受ける彼だったが――(”ぼくらのゆくえは”)
表題作と編集者視点の続編の他、「親友のミカミくん。」「君の空にふる夏のあめ」を収録。
漫画家ものとしてはただの題材以上のものではないですが、アシ先の描写は妙に生々しく、実話かな? と思わせるものがあります。ここで紹介しといてなんですが、フェイバリットは高校が舞台のミカミくん。
漫画家のサキさんと、恋人のみいくん、そして猫のキャベツが同居する小さな家。忙しいなりに充実した生活を送る彼女たちだったが、時にはささいなことでイライラするし、ネームには詰まるし、猫は原稿用紙を噛み散らかす。恋も仕事も放り出して、どこかへ逃げてしまいたくなる時もある――
友人に失言して色々思い悩んだり、自分の漫画を読んでる人なんか本当にいるのかと自虐的になったり、彼氏に文句を言ってわが身を振り返ったりとサキさんの心理・行動はめちゃめちゃ身近で庶民的。ある種これほど感情移入しやすい漫画家ものも珍しいかも? 全1巻で完結。
時は60年代。黎明期とも呼ぶべきマンガの幼年期に、当時の漫画家たちはいかにして日を送り、どんな絶望にうちのめされていたのか? ――
全く漫画家事情の関係ない話もいくつかあり、資料的価値もあまり高くないです。基本思い出補正かけるか「へー、昔はこういう感じだったのね」というような楽しみ方をする本なんですが、いくつか今読んでも割と面白い作品があったりするので侮ってかかると損します。漫画史を語りたいのであれば、一度押さえておきたい作品です。
試し読み ebookjapan
で、上を踏まえて唐沢先生が描いたのがこちらです。「漫画家残酷物語」の名篇「うすのろ」をパロディした作品を冒頭に置き、後はオリジナルのやはりオムニバス。下ネタギャグと見せかけてさりげなく心を抉り涙を誘い、残酷性をテーマにした漫画家ものとしてはこっちのほうが題名に沿ってはいます。
隠しきれない悪意が濃密に漂う「お客様は神様です」が、僕は一番面白かったです。
絵はプロの技術を持つが情熱と才能の枯渇した主人公が、「女性アシスタントと紳士的に親交を深めて最終的に結婚したい」という発作的な衝動にかられて巨乳のアシさん(技術ゼロ)を雇い入れるもあれやこれやで女子校生のアシスタント(割と描ける)も雇うことになり、三者三様の意図から「ある漫画の原稿」を作製することになる……というのが1巻のあらすじ。
漫画家としては先が知れているが他の仕事ができるとは思えない主人公の微妙な悲惨さは女の子がゾロゾロ出てくることで曖昧になってますが、そこらへん……こう……グッと掘り下げてくれると嬉しかったりしますが……たぶんないですね。ウシジマくん的な嗜虐的なものを期待するとたぶんガッカリしますが、若干狂ったラブコメとしては味のある仕上がり。漫画家としてデビューすることをすごく端的に説明する場面もあり、そらそうよねと思わされます。
魑魅魍魎巣食う出版社「件社」の年末謝恩パーティーに、復讐を誓うひとりの女の姿があった。彼女の名は神藤マホ――持ち込みに行った末に件社ビルから突き落とされ、帰らぬ人となった兄の仇をとるために佳作をとり、マンガ業界に足を踏み入れた女。概ね腕力と口撃で邪魔者たちをねじ伏せる彼女(およびマンガ関係者)の格闘漫画の体を取りつつ、さりげなく(?)漫画家たちの自意識や悲哀を投影し、「今」を切り取る漫画家暗黒バトルマンガ。
試し読み モーニング公式サイト
第51回奨楽社新人コミック大賞で、問題作「でぃす×こみ」により見事大賞を射止めた女子高生の渡瀬かおる。しかし本人は心中穏やかではない――こんなBLマンガを描いた覚えはない! 兄が勝手に自分の名前で応募した作品のために、嫌々ながらもBL作家として着実にキャリアを積むことになってしまった女子校生漫画家の苦労とマンガ創作過程を綴る、BLクリエーター・コメディ。
毎回最初に渡瀬先生によるBLマンガの最初数ページがカラーで掲載されますが、こちらは原画のみゆうき先生で塗りは別の先生が担当するということで、巻末のネタばらしを見ると思わぬ大御所が塗ってたりします。どれかひとつでも誰が塗ってるか当てられたらすごい。
あくまで題材として使ってるだけで本編はBLマンガではないので一応注意。後藤さん(ぽい人)が出てくるBLはぜひ全編読みたかったものですが、まあそのへんは想像でカバーする方向で。全3巻。
試し読み 小学館公式サイト
週刊少年ゲルマンで「ときめき堕天使モモカ」を連載する小光栗夫。週1で編集者が変わるという謎制度に苦しめられ、ようやく落ち着いたと思ったら、今度は小光自身の奇行・妄想が日々アシさんを苦しめる。
奇天烈な新人漫画家の妙にリアルな失敗談で、読者の共感性羞恥を強制発動する連載ショートギャグ。
試し読み LINEマンガ
人生初の持ち込みに行くも酷評を受け、心ヘシ折られた内未一(16)。そんな彼のもとに、同い年にして既に人気作家である稲川マツのアシスタントの誘いが怪談専門誌「化談」編集部から届く。身の毛もよだつ恐ろしいストーリーを構築する女子校生作家の許で与えられた仕事とは、いわくつきの現場を訪れ、彼女にインスピレーションを与えるために怪奇現象を実体験することだった――
試し読み pixivコミック
お人よしで家事上手、頼まれごとを断れない高校生の上埜一等。周りからいいように使われ、バイトで生活費を稼ぎだし、それでもいつかはいいことがあると思っていたら、実の母が男に目がくらんで家具を持ち出して今日の飯にも事欠く始末。たまたま遭遇した少女に「即金」の仕事として紹介されたのは、人気漫画家「野薔薇ひふみ」のメシスタントだった。
超美人でナイスバディのひふみは段々彼のことが気になっていくのに、上埜くんはだらしない生活習慣と分厚い眼鏡のせいで、彼女が美女だということにすら気付いていない……始まりそうで始まらない、ちょっとシュールな年上漫画家×男子高校生ラブコメ。
そんな題材を全然活かさず、まるでラブコメしないまま話が進行するんですが打ち切りが決定、9話→10話~11話の落差にはギョッとしました。そのまま全2巻で完結。色々あったらしくamazonレビューは編集に対する怨嗟の声で満ち満ちていますが、ある意味強烈な読後感を残す作品となったのは不幸中の幸いと言うべきか。あと最近のマガジン系のラブコメが高確率で支離滅裂なのはこういう感じだからなのか、とちょっと納得がいきました。
試し読み 講談社コミックプラス
相沢幸枝(PN:愛澤ここな)、24歳。たいていの女性の心をつかむ美貌とスタイルの良さを誇り、スポーツも得意で手先も器用。さらに高校在学中にデビューと華々しく少女漫画家人生を歩み始めた彼女だったが、まさかのそこから6年読み切りのみ掲載、単行本も未経験。さらに担当も新人(毒舌)に変わりいよいよ見切りをつけられたかと思いきや、この新人担当・喜多村莉奈が実は漫研の後輩で彼女の大ファン(ただし隠している)。相沢を売れっ子にするという野望を秘めた担当から、相沢は人気作家となるための法則を学ぶことができるのか?
試し読み ComicWalker
友人たちに隠れて少女漫画の道を志す女子高生・田中は偶然同級生の寺尾に描いているマンガを目撃され、それをネタに部屋へと連れ込まれる。寺尾は女子高生にしてプロのエロ漫画家であり、田中は彼女の手伝いをさせられつつ、漫画の手ほどきを頼むことになるのだが――エロ漫画業界を舞台にした異色の漫画家マンガ。
試し読み pixivコミック
まあ、これも言ったもん勝ちですね。色んなことを空気で処理する日本的文化が花開いてる感はありますが、今後仮に欧米化が進んでもこのへんの文化は鷹揚なままであって欲しいな、と個人的には思います。程度にもよりますが。
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