ザッピングは元々テレビのチャンネルをあちこち切り替えて視聴するような意味らしいですが、これが転じてひとつのドラマの中に複数の主人公が存在し、視点(チャンネル)が切り替わるような構成を指すようになりました。ゲームでは「街」「428」など、小説だと「冷静と情熱のあいだ」などが有名です。
いわゆるアンサンブル・キャストや群像劇、あるいはミステリの場合ザッピングは頻繁に発生しますが、ここで紹介している作品では視点がある程度一人称で固定、同じ場面を複数視点から描くタイプのザッピングが自覚的に連続して使われていることを条件とします。
ザッピングの性質上視点が変わるたびに軽い謎ときや伏線処理、意外性が要求され、かつ全く同じ場面は上手く処理してくどくないようにしないといけない、作者のセンスが問われる高難度のジャンルだと思います。集めてみたら恋愛ものが多めでした。
同棲ほぼ10年、仲が悪いわけではもちろんないが、恋愛初期のテンションは完全に失われたアラサーカップルの町田りつ子と野々山修一。「なんで結婚しないの?」という質問に対する答えは年々板についてきたが、いつまでもこんな感じでいいものか。同棲生活を男女両方+αの視点で追うザッピング・ラブストーリー。
試し読み マンガほっと
男性経験がなく「普通の人ができることができない」コンプレックスを抱える(しかし割とモテる)大和田若芽と、彼には理解不能な理由で恋人に何度も捨てられ、女性不信に陥っているイケメン兼末健次郎。憎からず思い合うふたりなのに、男女のすれ違いはどんどん広がって気が付けば絶望的に深い溝に。「うそつきパラドクス」の続編にして主人公を一新した新シリーズ。
「ヤングアニマル」で2012~2014年連載、全4巻で完結とコンパクトで、完成度はうそパラより高いと思います。性的要素も前作よりは抑えめだし、この作者の作品の中だと鬱要素が控えめで読みやすい。
ヒロインも栖佑さん的なズルさがなく、友達思いないい子でそれだけに不憫。前作のキャラも引き続き登場しますが、これ単体で読んでも問題なく読めます。
試し読み コミックシーモア
都内でひっそりとエロ漫画家を営む藤原秋の家はそこそこ広いが壁が薄い。隣に越してきたかつての恩師・仲井間真の、はしたない声が丸聞こえになるほどに……。元教師とその元教え子が、独特な劣情を持って異常な関係を構築していく隣人不倫(寸前)物語。
主人公が結構ゲスく、ヒロインもなかなかにアレ。ひとつの出来事がふたりの視点で交互に描かれることがちょいちょいありますが、比べて見るとある意味よく似たふたりです。爆乳猫目のヒロインはくだけた愛嬌があり、結構魅力的。真の過去を描いた「黄昏のエトス」が「ヤングチャンピオン烈」で2019年~連載。
試し読み コミックシーモア
若くして才能を認められているが、人嫌いでひきこもり気味のミステリー作家・朏素晴(みかづき すばる)。
着実に小説しか能のない扱いづらい作家への道を歩みつつあった彼だったが、「小説のネタになる」ことから一匹の猫を保護することになる。
このほんの気まぐれが思いがけない気付きと出会いを素晴にもたらし、少しずつ彼の世界を広げていくことになるとは気づきもせずに――
試し読み COMICポラリス
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