恋に遊びに業務上トラブル。悲喜交々の社会人たちを描く、おすすめお仕事マンガ

犬のように丸太のように

お仕事する漫画をセレクトしました。これも大分枠が広すぎる感じで、ある程度数のあるものは職業単位とかで独立する予定です。
ちゃんと取材されたものとか、作者がその仕事出身だったりすると資料的な価値も出てきたりするのが嬉しいところです。自分の仕事にまつわるマンガがあれば読んでみて、「これはリアルだ」とか「ここが間違ってる」とか言いつつニタニタするのもまた楽しい……のかな。

【オススメ】悪女(深見じゅん)

三流大卒コネ入社、酒が強くて宴会芸が特技の新人OL田中麻理鈴は、一流商社の近江物産ではどう見ても落ちこぼれ。そんな彼女は駅で出会った男性に一目惚れし、彼との再会を果たすため、同僚の峰岸の力を借りてなぜか出世を目指すことに。しかし時代はバブル期の90年代、今よりはるかに女性の出世が難しかった時代……時代性を織り込んだOLサクセス? ストーリー。

悪女

Face177”THE STRONGEST ARMY!”(30巻収録)より

タイトルの読み方は「わる」。基本的に麻理鈴が他部署に転属→「なんでこんな落ちこぼれ(or女)がうちに!」と嫌われる→トラブル発生、麻理鈴ピンチ! を繰り返すマンガで、そこで見せる嫌な人を描くスキルの高さ、それに対抗する麻理鈴のタフさとコミュ力と明るさが本作の最大の魅力。
謎の元気がもらえるので、人間関係で悩む方は一読をおすすめします。石田ひかり主演で1992年ドラマ化し、トレンディードラマとしても知名度がありますが、2022年にまたドラマ化されるそうです。

転課することでスポットの当たるキャラクターが切り替わり、常に何か事件が起きていて、どこから読んでもすんなり話に入れるのも連載作品として強み。各話タイトルカットが色んなゲームのパロディになってます(ほとんどわかんなかった)。
そもそも、麻理鈴の性格とも目的とも「出世」という手段が嚙み合ってない、という根本的な問題を抱えてたりもしますが……。
「BE・LOVE」で1988~1997年連載、全37巻(文庫版は全19巻)で完結

類似作 課長島耕作(弘兼憲史)

試し読み Renta!

【オススメ】ガイコツ書店員本田さん(本田)

これフィクションかと思ったらルポ漫画なんですね。主人公の性別すらわからないルポ漫画というのも珍しいですが、作者の本田さん(ビジュアルはガイコツ)がそこそこ大きめの本屋さんで働く上で遭遇したさまざまな珍客・トラブル・日々の仕事や出版関係者のあれこれなどを綴る割と読むと本屋さんで働きたくなるマンガです。

ガイコツ書店員本田さん

第2話”ヤオイガールズフロムOVERSEAS!!!”(1巻収録)より

序盤の海外から来訪したツワモノたちとの丁々発止はかなり笑いました。名前は知ってるものの何してんだかよくわからない「取次」のお仕事、販促グッズや手書きポップ、出版社についても触れていて、これ読んでから本屋さん行くとちょっと見る目が変わります。


「ジーンピクシブ」で2015~2019年連載、全4巻で完結。2018年アニメ化。

試し読み pixivコミック

ぶっきんぐ!!(美代マチ子)

2006年、美大卒業後順調に人生迷走中の主人公・かの子。彼女はとある小さな本屋で万引きに出くわしたことから、流れでアルバイトとして働き始めることになる。再販制度や取次などの書店ルールを知ったかの子が、自分なりのアイデアを使っていかに書店を盛り上げていくかを描く小型書店奮闘物語。

主人公の行動力が異様に高く、頻繁に暴走します。1話で「?」となりましたが2話からグッと面白くなりました。ご都合感ありますがワクワクするのでよし。

「本田さん」と違い取次に自分からアプローチしないといけないなど、不都合もありますがそれを逆手に取るような作戦が魅力。

試し読み 裏サンデー

コンビニで君との5分間。(一永のぞみ)

まじめで優しいコンビニ店員・柴崎くんと、常連のOLさんはよく目が合う。なんとなく彼女が気になる柴崎くんと、飼い猫に顔が似ているという意味で、勝手に柴崎くんを癒しの対象にしているOLさん。天然ふたりの会話は成立しているようで、たまにそこそこズレている。日常系コンビニラブコメ。

コンビニで君との5分間。

第14話(1巻収録)より

猫が上手い。愛を感じる。これは絶対飼育経験あるなと思ったら、案の定後書きで紹介してました。
それはさておき、本作は「いい人しか登場しない」タイプのライトラブコメ。仕掛けのある回が少なくザッピングである必然性は薄めですが、36~37話(3巻収録)とかが自然かつ意外で凄く良かったし、それ以外の回でも男目線では優雅(?)な年上の女性が、意外とろくでもないこと考えてたり子供っぽかったりするギャップがお楽しみ。


Webマンガ→商業誌連載のパターンで、元作品(現在非公開)ではドロドロした心理描写もあった?(Amazonの感想調べ)ようで、そっちも読んでみたかった。
「ヤングガンガン」で2019年~連載。

試し読み ヤングガンガン公式サイト

湯けむりスナイパー(原作:ひじかた憂峰 漫画:松森正)

あらゆる個性が吹き溜まる、山中の秘湯「椿屋」。そこで働く渋みがかった中年の男・源さんは、かつて殺し屋として人を殺めた過去を隠し持っている――過去を清算して第二の人生を歩もうともがく源さんと、それぞれに重い過去や秘密を抱えた人々が織りなすハードボイルド・ヒューマンドラマ。

湯けむりスナイパー

その5″月下美人”(6巻収録)より

松森先生の動きのある絵が素晴らしく、パラパラ見てるだけでも楽しいマンガです。原作者は狩撫麻礼先生の別名義。

序盤は源さんの元・殺し屋としての側面を強調するような話が多いですが、途中からお客さんや従業員がメインの話が増え、最後に源さんが〆る、みたいなのが主流となります。無印全16巻、Part2全2巻、Part3全3巻で完結。

帝王(原作:倉科遼 漫画:関口太郎)

キャバクラの帝王として、夜の世界にその名を轟かせる輝咲翔。その華麗にして辛苦に満ちた半生を基に綴られた小説を原作にマンガ化され、さらにドラマ化もされた偉人伝的キャバクラサクセスストーリーです。最初ホストからスタートするので、そっちが好きな方も読み応えあるかと。

どこまで実話なのか知りませんが、朴訥とした青年が夜の世界でのし上がっていく姿には爽快感があります。「普通はこれで諦める」逆境に対して果敢に立ち向かい、チャンスをモノにしていく姿は見習うべきものがあります。というか、普通は酒が飲めない時点でホストを志さないです。

夜の世界に興味がある人、チャレンジしたい人にもおすすめの全8巻。

2DK、Gペン、目覚まし時計。(大沢やよい)

バリバリ仕事をこなすできるOLと、ぐうたらデビュー前漫画家の女子ふたりが同居する、お仕事×漫画家もの×同居もの×ライト百合という作品です。OL視点では会社内の人間関係や仕事ぶりが描かれ、漫画家視点ではライバルが現れ夢に向かって切磋琢磨、さらに主人公を誘惑する謎の京都弁女も現れて……と、幅広いストーリーテリングが魅力。百合系コミックなんですが、ほとんどそういう要素が顕在化しないまましばらく話が進みます。

ここに置くぐらいなので、普通にお仕事ものとして面白いです。作中の意識高い系女子(通称ルー子)はある意味本作で最も愛されてるキャラで、一時期作者の方がtwitterで毎週月曜ルー子のやる気の出る名言をアップしてくださってました。

受付の白雪さん(吉沢緑時)

お菓子メーカー「吉沢製菓」に勤める、男性社員の間で話題の美人女子受付嬢・白雪さんと田中さん。他の人から見えない机の下で、彼女たち(主に白雪さん)は今日も変な遊びに忙しい――?

コマがほとんど正面から見た同じ顔という圧倒的なコピペ画面の安定性で話題になった、まあほぼ会社版「となりの関くん」みたいなマンガです。

ネタ的に紹介されてて知ったので正直さほど期待してなかったんですが、ショートコメディとしてちゃんとオチを付けてきてて待ち時間に読んだら一気読みさせられました。机の下のシークレットゾーンを活用したトリッキーなネタが多いです。

アニメ監獄学園を創った男たち(原作:平本アキラ 漫画:ハナムラ)

「これを……アニメ化だと……!」アニメ制作会社2社が半分冗談で出した企画書は奇しくもバッティングし、会議の俎上にあがった「映像化不可能」と言われる人気作。しかも地上波。しかしあの男なら……クレイジーボーイ・水島努監督ならやってくれるかもしれない……! むしろやりすぎないか心配……!
ほぼほぼノンフィクションでお送りされる、アニメ「監獄学園」製作裏事情ギャグ漫画。

アニメ監獄学園を創った男たち

第6話”やはり天才な男”より

基本内輪ネタなので、最近のアニメ業界や男性声優に知識ある人のほうが楽しめます。アニメのファンならマストバイ。登場声優は神谷浩史、小西克幸、浪川大輔、興津和幸、鈴村健一(各敬称略)。

こんな楽しいことばっかりでもないでしょうけど、しょうもないことでひたすらヒートアップする会議とかはまさに(労働条件以外は)夢のある仕事・アニメ制作現場の面目躍如、かなり笑えます。
「ヤングマガジン」で2015年、「ヤングマガジンサード」で2015~2016年連載、全1巻で完結

試し読み コミックシーモア

アニメタ!(花村ヤソ)

最強のブラック労働環境を誇るクールジャパンの象徴・アニメ業界。19歳の真田幸はかつて自分が魅せられたアニメの世界を志し、名門N2ファクトリースタジオへと見事入社する。だが技術的には殆ど素人の彼女の前には、圧倒的な技術的困難と労働時間、そして無理ゲー感漂う低賃金の壁が立ち塞がっていた――新感覚のスポ根系アニメーター成長物語。

動画マンをはじめ「アニメ」という仕事が具体的に語られ、この業界を目指す人は一読の価値があるマンガだと思います。もう本当に憧れだけではやっていけない職業だということがよくわかります。

解説書としても丁寧で、面白くてタメになる、最近の半実用書みたいなマンガのなかでも個人的にヒットしました。アニメ化されたらメタな感じで面白そうですが、されてもおかしくない水準だと思います。

試し読み モーニング公式サイト

NEWS×it(くろは)

人気キャスター武藤玲子が、あらゆる社会問題に鋭く毒を吐きつつ脱線し、相方鳩谷三郎がツッコみながら次のニュースへ進む話です。読んでしばらくして「ああ……マジカルロリポップの人か……」と気付いたのですが、これも絵柄とかじゃなくて「あざらしが出てくること」で判明しました。

武藤は一切ブレずにドス黒い発言しかせず、ギャグ漫画なのに読んでると徐々に心が荒んできます。

これの後に「帰宅部活動記録」も読みましたが、作を重ねるごとに順調に作風が黒くなっていることが伺えます。「ガンガンONLINE」で2015~2016年連載、全2巻で完結

試し読み コミックシーモア

新宿セブン(原作:観月昴 漫画:奥道則)

見た目はヤクザで言動は粗暴、女に目が無くすぐ手が出る――ただし鑑定にだけは嘘をつかない歌舞伎町の超一流鑑定士・七瀬。今日も彼の経営する質屋には、ゴタゴタを抱え込んだ新宿の人々が訪れる。

新宿セブン

第32話”水掛け論”(4巻収録)より

名義ちがいますが、原作者は「人形草紙あやつり左近」「100万$キッド」とかと同じ人。詐欺師など裏稼業との駆け引き、時計や宝石の真贋鑑定に蘊蓄と質屋設定をフル活用し、色々趣向の異なる一話完結のストーリーが楽しめます。ベテランの味を感じる作品です。


ちなみに1巻の表紙見て七人のチンピラが勧善懲悪する話かと思ったんですが、全然違いました。後ろの人たちまさかモブとはね……。

まりんこゆみ(原案:アナステーシア・モレノ 漫画:野上武志)

夢はアメリゴ大統領? ――ほぼノリだけで渡米し、海兵隊を志望することになった南雲弓だったが、新兵訓練所は映画さながらの暴言が飛び交うスパルタ教育機関だった。辛く厳しく合理的でたまに楽しい日々の中で鍛え上げられていく弓は、一人前の海兵隊員(まりんこ)となることができるのか、というか、そもそも海兵隊員って何をする人たちなのか?

原案のモレノ先生が海兵隊員出身とのことで、ディティールまで緻密に描かれたブートキャンプやその後の軍隊生活描写は超リアル。残念ながら連載途中でモレノ先生が亡くなられているため、いささか消化不良な形で完結します(全7巻)。

海兵隊や軍隊生活に興味がある方であればとても勉強になり、楽しく読めるマンガです。現状↓で全て無料で読めます。

試し読み 4PAGES

スパデート(聖千秋)

圧倒的イケメンにしてデザイン事務所の経営者、ついでに運動神経もいい一之瀬朋哉。神から祝福されたのごとき経歴を持つ彼だったが、心中は穏やかさとは無縁。生来の怒りっぽさに加えて、女の顔は全てゆるキャラに見える変な病気にはかかるし、スタッフに勘に触るやつはいるし、会社のPCは壊れるし――そんな中ほんの気まぐれで訪れたスパリゾートマウカで、彼は高校時代の同級生・水鳥美羽と再開を果たしてしまう。なぜかちゃんと人間に見える彼女に無自覚に引き付けられていく一之瀬だったが、水鳥が独身と知るもつかの間、彼女には既に結婚の予定が入っていた――

スパデート

第2話(1巻収録)より

聖先生初見なんですが片思い男子を得意とされるようで(レビュー調べ)、性格キツめの社長が「目立たないけど気づいちゃうと魅力的」なポジションにいそうな水鳥さんに複雑な感じで距離を詰めたり離れたりする話です。脇役もクセ者が多く、友人なんだけど嫌なところもしっかりある、悪い子じゃないけど無神経といった複雑さが各キャラクターにあります。単純な恋愛話というよりは人間ドラマという印象。

上のあらすじを読んで「読もう」と思う男性はあまりいないでしょうが、これはわりかし男性にもおすすめで、一之瀬の苦労人ぶりと毒舌に共感する人は結構いる気がします。あと、すげーできる人間が職場に来ると「あれは昔助けたカナブンの化身だ」と表現するセンスとかすごく好き。

試し読み officeYOU公式サイト

理不尽のみかた(柳原望)

司法における市民参加として、裁判員制度――よりはるか昔、昭和23年から存在する検察審査会。不起訴に対する「不満」を(それぞれ仕事や家事を抱えた)一般市民11人で審議するという人間関係軋轢の見本市のような職場で、今日もさまざまな理不尽に悩まされる審査会事務員・佐倉縁(30)。自身も苦い過去を引きずる彼女だったが、隣の部屋に引っ越してきた日本オタクのイギリス人・アンドリュー(通称:安藤竜)との関わり合いの中で、思いがけず仕事と人生に対する新しい視点を見出していくことになる。

佐倉縁

申立第1号より

ナンバリングされてますが全1巻で完結のようで、内容的にも一冊でいい感じにまとまっています。全3話ですが各話濃く、そのまま三本立てのドラマが作れそうな完成度。

「シルキー」で2011~2012年連載+描き下ろし。ベッタベタな勘違いラブコメもやってくれて、結構コメディ色強め。内容的には働くお姉さん向けですが、男性が読んでも結構楽しめる作品です。
仕事がらちょっとした発言が法律関係者っぽい言い回しになるヒロインとか、刺さる人には深々と突き刺さるのではないですかね。

試し読み コミックシーモア

ACCA13区監察課(オノ・ナツメ)

13の独立した区からなるドーワー王国。そして特色豊かな各区支部を束ね、国としての統一を図る治安・管理組織がACCAである。高級品の煙草をふかす、ACCA監察課職員「もらいタバコのジーン」は各支部を回る監視業務を命じられるが、今回はどうも色々とおかしい。期間は異常に短く、待遇は例になく丁寧。クーデターの噂、そして彼を監視する誰かの視線……。

架空の国のお役所仕事ものです。2回続けて読みました。布石の確認もありますが、全6巻および番外編(PS)を読み終えるとキャラクターに愛着を感じ、再読時にまた違った味わいが楽しめます。


ドーワー王国食べある記的な食事シーンや優雅なティータイム、大人びた友人との洒落た会話やACCA職員との交流、腹に一物もった人々に詰められていく陰謀などはいい感じに読者を違う世界へ連れてってくれます。

試し読み BookLive

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