恋に遊びに業務上トラブル。悲喜交々の社会人たちを描く、おすすめお仕事マンガ

犬のように丸太のように

お仕事する漫画をセレクトしました。これも大分枠が広すぎる感じで、ある程度数のあるものは職業単位とかで独立する予定です。
ちゃんと取材されたものとか、作者がその仕事出身だったりすると資料的な価値も出てきたりするのが嬉しいところです。自分の仕事にまつわるマンガがあれば読んでみて、「これはリアルだ」とか「ここが間違ってる」とか言いつつニタニタするのもまた楽しい……のかな。

【オススメ】ガイコツ書店員本田さん(本田)

これフィクションかと思ったらルポ漫画なんですね。主人公の性別すらわからないルポ漫画というのも珍しいですが、作者の本田さん(ビジュアルはガイコツ)がそこそこ大きめの本屋さんで働く上で遭遇したさまざまな珍客・トラブル・日々の仕事や出版関係者のあれこれなどを綴る割と読むと本屋さんで働きたくなるマンガです。

ガイコツ書店員本田さん

第2話”ヤオイガールズフロムOVERSEAS!!!”(1巻収録)より

序盤の海外から来訪したツワモノたちとの丁々発止はかなり笑いました。名前は知ってるものの何してんだかよくわからない「取次」のお仕事、販促グッズや手書きポップ、出版社についても触れていて、これ読んでから本屋さん行くとちょっと見る目が変わります。

試し読み pixivコミック

ぶっきんぐ!!(美代マチ子)

2006年、美大卒業後順調に人生迷走中の主人公・かの子。彼女はとある小さな本屋で万引きに出くわしたことから、流れでアルバイトとして働き始めることになる。再販制度や取次などの書店ルールを知ったかの子が、自分なりのアイデアを使っていかに書店を盛り上げていくかを描く小型書店奮闘物語。

主人公の行動力が異様に高く、頻繁に暴走します。1話で「?」となりましたが2話からグッと面白くなりました。ご都合感ありますがワクワクするのでよし。

「本田さん」と違い取次に自分からアプローチしないといけないなど、不都合もありますがそれを逆手に取るような作戦が魅力。

試し読み 裏サンデー

湯けむりスナイパー(原作:ひじかた憂峰 漫画:松森正)

あらゆる個性が吹き溜まる、山中の秘湯「椿屋」。そこで働く渋みがかった中年の男・源さんは、かつて殺し屋として人を殺めた過去を隠し持っている――過去を清算して第二の人生を歩もうともがく源さんと、それぞれに重い過去や秘密を抱えた人々が織りなすハードボイルド・ヒューマンドラマ。

湯けむりスナイパー

その5″月下美人”(6巻収録)より

松森先生の動きのある絵が素晴らしく、パラパラ見てるだけでも楽しいマンガです。原作者は狩撫麻礼先生の別名義。

序盤は源さんの元・殺し屋としての側面を強調するような話が多いですが、途中からお客さんや従業員がメインの話が増え、最後に源さんが〆る、みたいなのが主流となります。無印全16巻、Part2全2巻、Part3全3巻で完結。

帝王(原作:倉科遼 漫画:関口太郎)

キャバクラの帝王として、夜の世界にその名を轟かせる輝咲翔。その華麗にして辛苦に満ちた半生を基に綴られた小説を原作にマンガ化され、さらにドラマ化もされた偉人伝的キャバクラサクセスストーリーです。最初ホストからスタートするので、そっちが好きな方も読み応えあるかと。

どこまで実話なのか知りませんが、朴訥とした青年が夜の世界でのし上がっていく姿には爽快感があります。「普通はこれで諦める」逆境に対して果敢に立ち向かい、チャンスをモノにしていく姿は見習うべきものがあります。というか、普通は酒が飲めない時点でホストを志さないです。

夜の世界に興味がある人、チャレンジしたい人にもおすすめの全8巻。

2DK、Gペン、目覚まし時計。(大沢やよい)

バリバリ仕事をこなすできるOLと、ぐうたらデビュー前漫画家の女子ふたりが同居する、お仕事×漫画家もの×同居もの×ライト百合という作品です。OL視点では会社内の人間関係や仕事ぶりが描かれ、漫画家視点ではライバルが現れ夢に向かって切磋琢磨、さらに主人公を誘惑する謎の京都弁女も現れて……と、幅広いストーリーテリングが魅力。百合系コミックなんですが、ほとんどそういう要素が顕在化しないまましばらく話が進みます。

ここに置くぐらいなので、普通にお仕事ものとして面白いです。作中の意識高い系女子(通称ルー子)はある意味本作で最も愛されてるキャラで、一時期作者の方がtwitterで毎週月曜ルー子のやる気の出る名言をアップしてくださってました。

受付の白雪さん(吉沢緑時)

お菓子メーカー「吉沢製菓」に勤める、男性社員の間で話題の美人女子受付嬢・白雪さんと田中さん。他の人から見えない机の下で、彼女たち(主に白雪さん)は今日も変な遊びに忙しい――?

コマがほとんど正面から見た同じ顔という圧倒的なコピペ画面の安定性で話題になった、まあほぼ会社版「となりの関くん」みたいなマンガです。

ネタ的に紹介されてて知ったので正直さほど期待してなかったんですが、ショートコメディとしてちゃんとオチを付けてきてて待ち時間に読んだら一気読みさせられました。机の下のシークレットゾーンを活用したトリッキーなネタが多いです。

アニメ監獄学園を創った男たち(原作:平本アキラ 漫画:ハナムラ)

「これを……アニメ化だと……!」アニメ制作会社2社が半分冗談で出した企画書は奇しくもバッティングし、会議の俎上にあがった「映像化不可能」と言われる人気作。しかも地上波。しかしあの男なら……クレイジーボーイ・水島努監督ならやってくれるかもしれない……! むしろやりすぎないか心配……!
ほぼほぼノンフィクションでお送りされる、アニメ「監獄学園」製作裏事情ギャグ漫画。

基本内輪ネタなので、最近のアニメ業界や男性声優に知識ある人のほうが楽しめます。アニメのファンならマストバイ。僕はアニメ見ないで読みましたけど、「あーあのシーンはこうやって」とかわかったほうが楽しいマンガなのは間違いないです。

こんな楽しいことばっかりでもないでしょうけど、しょうもないことでひたすらヒートアップする会議とかはまさに(労働条件以外は)夢のある仕事・アニメ制作現場の面目躍如、かなり笑えます。資料的価値はあんま高くないですが、現場のこういう記録が残るのは幸せなことなんじゃないかな、と思います。

試し読み コミックシーモア

アニメタ!(花村ヤソ)

最強のブラック労働環境を誇るクールジャパンの象徴・アニメ業界。19歳の真田幸はかつて自分が魅せられたアニメの世界を志し、名門N2ファクトリースタジオへと見事入社する。だが技術的には殆ど素人の彼女の前には、圧倒的な技術的困難と労働時間、そして無理ゲー感漂う低賃金の壁が立ち塞がっていた――新感覚のスポ根系アニメーター成長物語。

動画マンをはじめ「アニメ」という仕事が具体的に語られ、この業界を目指す人は一読の価値があるマンガだと思います。もう本当に憧れだけではやっていけない職業だということがよくわかります。

解説書としても丁寧で、面白くてタメになる、最近の半実用書みたいなマンガのなかでも個人的にヒットしました。アニメ化されたらメタな感じで面白そうですが、されてもおかしくない水準だと思います。

試し読み モーニング公式サイト

波よ聞いてくれ(沙村広明)

人生崖っぷちのカレー屋カリスマ店員(自称)・鼓田ミナレは、飲みの席で初対面に絡み倒したところからその切れ味鋭い愚痴を公共電波で北海道全土に公開放送され、ラジオ局「MRS」に突撃したことを機に深夜放送「波よ聞いてくれ」のパーソナリティとしてデビューすることになる。運がいいのか悪いのか、次々とバイオレンス味あふれる事件に巻き込まれる(あるいは自分から頭を突っ込む)ミナレの生きざまを描くラジオライフ・アクションコメディ。

波よ聞いてくれ

第3話″奴らが憎い”(1巻収録)より

沙村先生特有の癖のある言いまわしと変なボケが続出する会話劇に目を奪われますが、起こる出来事も面白くなにげにホラー味あったりします。沙村先生的には新機軸の企画だそうですが、ラジオ漫画にしては人がヘッドシザーズ・ホイップかけられたり警察に連行されたりする場面がやたら多い。


とはいえ「人が死なない」ことがコンセプトのひとつに掲げられており、「無限の住人」に比べるとだいぶ万人向け。「このマンガがすごい!」2016年オトコ編6位。J-waveでラジオドラマ化され、その後2020年にアニメ化

試し読み アフタヌーン公式サイト

NEWS×it(くろは)

人気キャスター武藤玲子が、あらゆる社会問題に鋭く毒を吐きつつ脱線し、相方鳩谷三郎がツッコみながら次のニュースへ進む話です。読んでしばらくして「ああ……マジカルロリポップの人か……」と気付いたのですが、これも絵柄とかじゃなくて「あざらしが出てくること」で判明しました。

武藤は一切ブレずにドス黒い発言しかせず、ギャグ漫画なのに読んでると徐々に心が荒んできます。

これの後に「帰宅部活動記録」も読みましたが、作を重ねるごとに順調に作風が黒くなっていることが伺えます。

試し読み ガンガンonline公式サイト

新宿セブン(原作:観月昴 漫画:奥道則)

見た目はヤクザで言動は粗暴、女に目が無くすぐ手が出る――ただし鑑定にだけは嘘をつかない歌舞伎町の超一流鑑定士・七瀬。今日も彼の経営する質屋には、ゴタゴタを抱え込んだ新宿の人々が訪れる。

新宿セブン

第32話”水掛け論”(4巻収録)より

名義ちがいますが、原作者は「人形草紙あやつり左近」「100万$キッド」とかと同じ人。詐欺師など裏稼業との駆け引き、時計や宝石の真贋鑑定に蘊蓄と質屋設定をフル活用し、色々趣向の異なる一話完結のストーリーが楽しめます。ベテランの味を感じる作品です。


ちなみに1巻の表紙見て七人のチンピラが勧善懲悪する話かと思ったんですが、全然違いました。後ろの人たちまさかモブとはね……。

まりんこゆみ(原案:アナステーシア・モレノ 漫画:野上武志)

夢はアメリゴ大統領? ――ほぼノリだけで渡米し、海兵隊を志望することになった南雲弓だったが、新兵訓練所は映画さながらの暴言が飛び交うスパルタ教育機関だった。辛く厳しく合理的でたまに楽しい日々の中で鍛え上げられていく弓は、一人前の海兵隊員(まりんこ)となることができるのか、というか、そもそも海兵隊員って何をする人たちなのか?

原案のモレノ先生が海兵隊員出身とのことで、ディティールまで緻密に描かれたブートキャンプやその後の軍隊生活描写は超リアル。残念ながら連載途中でモレノ先生が亡くなられているため、いささか消化不良な形で完結します(全7巻)。

海兵隊や軍隊生活に興味がある方であればとても勉強になり、楽しく読めるマンガです。現状↓で全て無料で読めます。

試し読み 4PAGES

スパデート(聖千秋)

圧倒的イケメンにしてデザイン事務所の経営者、ついでに運動神経もいい一之瀬朋哉。神から祝福されたのごとき経歴を持つ彼だったが、心中は穏やかさとは無縁。生来の怒りっぽさに加えて、女の顔は全てゆるキャラに見える変な病気にはかかるし、スタッフに勘に触るやつはいるし、会社のPCは壊れるし――そんな中ほんの気まぐれで訪れたスパリゾートマウカで、彼は高校時代の同級生・水鳥美羽と再開を果たしてしまう。なぜかちゃんと人間に見える彼女に無自覚に引き付けられていく一之瀬だったが、水鳥が独身と知るもつかの間、彼女には既に結婚の予定が入っていた――

スパデート

第2話(1巻収録)より

聖先生初見なんですが片思い男子を得意とされるようで(レビュー調べ)、性格キツめの社長が「目立たないけど気づいちゃうと魅力的」なポジションにいそうな水鳥さんに複雑な感じで距離を詰めたり離れたりする話です。脇役もクセ者が多く、友人なんだけど嫌なところもしっかりある、悪い子じゃないけど無神経といった複雑さが各キャラクターにあります。単純な恋愛話というよりは人間ドラマという印象。

上のあらすじを読んで「読もう」と思う男性はあまりいないでしょうが、これはわりかし男性にもおすすめで、一之瀬の苦労人ぶりと毒舌に共感する人は結構いる気がします。あと、すげーできる人間が職場に来ると「あれは昔助けたカナブンの化身だ」と表現するセンスとかすごく好き。

試し読み officeYOU公式サイト

EGメーカー(酉川宇宙)

男の秘められた夢の花園、最後の聖域、禁断の魔境エロゲーメーカーにグラフィッカーとして就職してしまった美大卒の巨乳美女・吉見優香。そこで出会うのは仕事のためなら良識ある大人の仮面を容赦なくかなぐり捨てる、というかそもそもかぶってない頭おかしめの先輩方と、「どう塗ったらよくわからない」シモ系原画の数々。資料として怪しげなお店に足を踏み入れ、時には自分の身体を参考にする優香の情熱は彼らを認めさせることができるのか――?

EGメーカー

第3話”ピンク…です”(1巻収録)より

基本はエロギャグ漫画で各回課題の提出→試行錯誤とトラブル→解決というドラマの基本を踏み、安定したアベレージを叩き出す「中堅」感のある作品。題材的に合う・合わないはかなりあり、ハマればかなり笑えるマンガです。個人的にはアフレコの回が登場人物全員狂ってて面白かった。

実際絵ばっかり描いて仕事したければエロゲメーカーはすごくいいらしいですね、業界的にはかなり厳しいとは聞きますが、そこまで突っ込んだ話はなく、基本一塗師が目撃した業界の変な人たち、といった作り。
全4巻で割ときれいにまとまって終わりますので、軽めのクリエイターものをお求めで下ネタ耐性がある方におすすめ。

理不尽のみかた(柳原望)

司法における市民参加として、裁判員制度――よりはるか昔、昭和23年から存在する検察審査会。不起訴に対する「不満」を(それぞれ仕事や家事を抱えた)一般市民11人で審議するという人間関係軋轢の見本市のような職場で、今日もさまざまな理不尽に悩まされる審査会事務員・佐倉縁(30)。自身も苦い過去を引きずる彼女だったが、隣の部屋に引っ越してきた日本オタクのイギリス人・アンドリュー(通称:安藤竜)との関わり合いの中で、思いがけず仕事と人生に対する新しい視点を見出していくことになる。

佐倉縁

申立第1号より

ナンバリングされてますが全1巻のようで、内容的にも一冊でいい感じにまとまっています。全3話ですが各話濃く、そのまま三本立てのドラマが作れそうな完成度。

ベッタベタな勘違いラブコメもやってくれて、結構コメディ色強め。内容的には働くお姉さん向けですが、男性が読んでも結構楽しめる作品です。
仕事がらちょっとした発言が法律関係者っぽい言い回しになるヒロインとか、刺さる人には深々と突き刺さるのではないですかね。

試し読み コミックシーモア

【オススメ】フラジャイル 病理医岸京一郎の所見(原作:草水敏 漫画:恵三朗)

人間の時間は限られていて、特に患者のそれは時に一分一秒を争う。医療行為はトレードオフの連続だ。正確性を取るのかスピードを取るのか、安全性を取るのかリスクをとってリターンを狙うのか。保身や派閥に組み込まれることを選ぶのか、それとも他の医者と対立し、時にはグレーゾーンの医療行為に手を染めるのか。毒舌・横暴・実力で他科に疎んじられる病理科長・岸京一郎をメインに据えた総合病院医療ドラマ。

第6話”岸先生がまた何か言ってます!”(2巻収録)より

リアリティ8割に2割の嘘を織り交ぜ、どんなにヘビーなエピソードを展開しても最後は読者に納得のいく結末を用意する高精度の作品です。キャラは役割分担がハッキリしていてそれぞれが個性的。成長と挫折の王道ドラマと徹底したディティールによる装飾、さらに歯に衣着せぬ岸先生の痛快さがあいまって読者に「快」の感情を与え続けます。結果中毒性があります。オブラートに包んだイカン薬という感じ。


細かく見てくとベタだったり、ご都合な話もあるってことですけどね。それがどうしたとばかりに夢中で読みました。女性陣もみなさん魅力的ですが、とりわけひとりだけ木々津克久キャラみたいな顔した布施ちゃんがちょっと唯一無二な感じです。

試し読み アフタヌーン公式サイト

ACCA13区監察課(オノ・ナツメ)

13の独立した区からなるドーワー王国。そして特色豊かな各区支部を束ね、国としての統一を図る治安・管理組織がACCAである。高級品の煙草をふかす、ACCA監察課職員「もらいタバコのジーン」は各支部を回る監視業務を命じられるが、今回はどうも色々とおかしい。期間は異常に短く、待遇は例になく丁寧。クーデターの噂、そして彼を監視する誰かの視線……。

架空の国のお役所仕事ものです。これは2回続けて読みました。布石の確認もありますが、全6巻および番外編(PS)を読み終えるとキャラクターに愛着を感じ、再読時にまた違った味わいが楽しめます。


ドーワー王国食べある記的な食事シーンや優雅なティータイム、大人びた友人との洒落た会話やACCA職員との交流、腹に一物もった人々に詰められていく陰謀などはいい感じに読者を違う世界へ連れてってくれます。

試し読み ビッグガンガン公式サイト

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