人が減ってけばいいというものではない
要するに適当に人を集めて殺し合いさせれば成立するジャンル、それがデスゲームです。そのわかりやすさとキャッチーさから一時期ブームとなり、安易な作品が小説・映画・マンガいずれも大量に生み出されました。ここではなるべくそうではない作品をチョイスしたつもりです。
基本的には「何がしかのルールが存在する(ただのサバイバルではない)」「負けた時のリスクが大きい」「マンガとして面白い」「いわゆる格闘ものは入れない」程度の基準で、あとは好みとニュアンスで選んでます。ゲームの理由とか結末がちゃんとしてると好評価。頭脳戦系デスゲームは別カテゴリで扱ってます。
バトル・ロワイアル(原作:高見広春 漫画:田口雅之)
国産デスゲームを象徴するような作品で、当時のブームの火付け役でもあります。殺人プログラムへと招待された42人の中学生が武器を渡され、クラスメイト同士殺し合うという内容で、原作発表当時相当物議をかもしていましたが結局大ヒットし実写映画化されてこれもヒットしました。
マンガ版は全15巻。尺が長い分オリジナル要素が多く、各キャラクターのバックボーンが詳細に語られています。
有名作ですがこのカテゴリの中でもトップクラスにエログロです。そして絵が濃い。割と好きなんですけど、鼻につくきれいごとの鬱陶しさと冗長感は否めず、是非一読を! とはなりません。ただまあやはり最初に持ってくるのはこれ以外にないですし、デスゲーム好きなら外せない作品です。
個人的には映画版が一番良かった気がします。カイジだのデスノートだのインシテミルだの、デスゲーム映画に大体顔を出す藤原竜也の出世作でもあります。
ダーウィンズゲーム(FLIPFLOPs)
軽い気持ちでアプリを起動したことから、「ダーウィンズゲーム」に巻き込まれることになった高校生・須藤要(カナメ)。ゲームマスターから与えられた「異能(シギル)」を頼りに、凄惨なゲームから抜け出すべくゲームのクリアを目指すカナメだったが、やがて彼は目的を達成するための非情さを身に着けていくことになる――
能力ものサバイバルゲームから集団戦となっていく、盛り上げどころをしっかり押さえたデスゲームです。例によって主人公の能力がチート。最初は頼りなかった主人公が段々と成長していく姿も楽しく、展開もスピーディ。
緊迫感はヌルめですが、サバゲー系のデスゲが好きなら普通におすすめです。エンタメマンガの王道を歩む作品だと思います。
類似作 NOT LIVES -ノットライヴス-(烏丸渡)
FLIPFLOPs 秋田書店 2013-06-07
人狼ゲーム(原作:川上亮 漫画:小独活)
村人の中に潜む人狼を見付けだせなければ、夜ひとりずつ住民が殺されていく。突然拉致された高校生は館に集められ、目的の見えないリアル人狼ゲームに興じることになる。勝者に与えられるのは自由と一億円、敗者に与えられるのは死――シリーズがのきなみ映画化された人気小説のコミカライズ版。
一時期流行った人狼ゲームをそのままデスゲームにした作品。参加者同士にある繋がりがあり、各キャラの「裏面」が暴露される趣向も古典的で楽しい。ただし「リアルに人が死ぬ」というルールのせいで陣営戦になりえず、普通の人狼ゲームとは別ゲーと思って読むほうが吉です。
意外な展開やルールの穴を突いたトリックはあまりなく、サスペンスも抑えめで、かなりスムーズに話が進行します。グロあり。
https://twitter.com/attaka_koudon/status/1007582440745984000?ref_src=twsrc%5Etfw 漫画化されてるのは無印(全3巻)、ビーストサイド(全3巻)、クレイジーライクアフォックス(全4巻)まで、全て
完結済。原作および映画はこの後数作続きます。前作の致命的なネタバレを含むことがあるので、シリーズ順に読むことを薦めます。
人狼ゲームの漫画だと、webマンガの
「汝は人狼なりや?」も(下品ですが)おすすめ。
試し読み LINEマンガ
プラチナエンド(原作:大場つぐみ 漫画:小畑健)
生きる希望を失った13人の前に天使が現れ、彼らを次世代の神を決めるための試用期間へといざなう。武器は相手の心、あるいは命を奪う「矢」と見えない速さで飛び回る「翼」。気弱な青年・架橋明日はなるべく力を使わずに生活しようとするが、夜神月ポジにいる生流奏の卑劣な罠を目にし、他の神候補と協力して立ち向かう必要に駆られていく。
「デスノート」の裏をとったような作品です。デスノの面白さのひとつは「頭脳明晰な主人公が特殊な能力を手に入れ、すごい行動力で邪魔者を排除していく」という有能ピカレスクぶりにあったと思いますが、本作の主人公は戦闘力の高い小市民でしかありません。フラストレーション溜まる部分もありますが、同じこと二回やってもしょうがないですしね。
とはいえ能力を逆手にとった駆け引き(およびたまにあるツッコミどころ)は健在、6~8巻でゴリゴリ盛り上げる決戦など手に汗握る展開も楽しめます。
「ジャンプスクエア」で2015~2021年連載、全14巻で
完結。最終回は「令和にこれやるか」と思いました。
試し読み ジャンプSQ公式サイト
大場つぐみ/小畑健 集英社 2016年02月04日
ラパス・テーマパーク(成家慎一郎)
ある”トラウマ”を抱えた男、赤星は、ラパス・テーマパークを訪れる。そこは人の想像や記憶が具現化される世界。毎日夕方の4時から6時の間、キリンの顔をした「ラパス」が彼らを襲いにやってくる。ラパスを倒すことができれば、テーマパークから脱出し、「人生をやり直すチャンス」を手に入れることができるという。ただし出ることができるのは、彼を含めた5人のうちの誰かひとりだけ――
主人公がクズいという一点において、まずなかなかのユニークさを発揮する作品です。記憶や想像よりもトラウマのほうが強い等、何がどうなってそうなるのかわからないんですがなぜか納得してしまう謎理論が横行し、深く考える余裕もないままハイスピードで物語が進みます。
段々面白くなってくるタイプですので、ある程度まとめて読みたいところです。
100万の命の上に俺は立っている(原作:山川直輝 漫画:奈央晃徳)
中学三年の四谷友助は同級生とともに、殺されても数十秒で生き返る剣と魔法の異世界で「ミッション」を果たさないといけないと告げられる。全滅すれば、あるいは制限時間を超えれば、そこにあるのは完全なる死。ミッションを終えるたびに与えられる質問権、増えていく仲間……その先にある「10周目の光景」の後には何が待つのか? ドライな少年の目を通して語られる変奏・非ゼロサム(?)デスゲーム。
#1″ゲリラ農奴と終わりの始まり”(1巻収録)より
内容的に明らかに「GANTZ」の影響を強く受けていますが、生きるか死ぬかのギリギリのサスペンスよりもキャラクターの考え方のズレとか、効率重視のプレイングを重視した作品。人がバンバン死ぬ割に全体的にどこか長閑で、世界を俯瞰するような妙なのどかさがあります。
「別冊少年マガジン」で2016年~連載。2020年にアニメ化。
試し読み マガポケ
奈央 晃徳/山川 直輝 講談社 2016年10月07日
異世界勇者の殺人遊戯(原作:らふげーむ キャラクター原案:ミタマイ 漫画:有馬明香)
今、輝かしい冒険が始まろうとしていた。女神により異世界能力を与えられ、勇者として転生しようとしていた少年・四月一日(わたぬき)通――しかし次の瞬間女神は何者かに撲殺され、四月一日は謎の館へ誘拐される。謎の司会者「キャットマン」に操られるようにして、集められた異世界勇者たちと殺人遊戯(デスゲーム)にたわむれるために!
シチュエーションは凄く好みです。閉鎖空間×推理×異能力×デスゲームということで、要するにファンタジー版ダンガンロンパ。あまりにもダンガンロンパでええっ……となりましたが、細かいこと気にしなければ結構イケます。こういうの読んでうっかりファンタジー系クローズドサークルが流行らないかな、という個人的な思惑もある。
https://twitter.com/laugh_GM/status/923108151401988096?ref_src=twsrc%5Etfw 原作は2016年自作ゲームフェスMVで
やたら色んな賞を授賞した、ゲーム投稿コミュニティサービス「RPGアツマール」の人気作。難易度とかはいかにもゲーム原作だなという感じですが、序盤は大体の推理ゲー簡単なのでまあ……。
「コミックフラッパー」で2017~2018年連載、全2巻で「第一章 おわり」として
完結。しばらく気付きませんでしたがマンガはここで打ち止めのようで、気に入った方はゲームで続きをお楽しみください、ということのようです。
類似作 ダンガンロンパ(ゲーム)
試し読み ComicWalker
有馬 明香/らふげーむ KADOKAWA 2017年09月23日
ダンジョンバトルロワイヤル~魔王になったので世界統一を目指します~(原作:ガチャ空 キャラクター原案:ペコー 漫画:なぎはしここ)
突然携帯に届いた長大な「世界救済プロジェクト」開始のお知らせ。長大な適性検査に答えた元大学生のシオンは、「カオス」の適性を持つ魔王のひとりとして目を覚ます。ほとんどの人としての記憶と引き換えに……。
支配領域を「ロウ」陣営の勇者たちから守り、眷属を使って他の魔王の領域を奪う。この馬鹿げたゲームには、人類の生存がかかっていると「主催者」は言うが……。
流行りのダンジョン経営×デスゲーム。人が死ぬ描写が色んな意味で非常に軽く(「普通」の人たちが、仲間が殺された直後にSNSで獲得したアイテムを自慢したりする)、他者不在マインドに溢れた作品で設定も適当。ほんのり漂う貴志祐介っぽさというか、ゲームのルールを手探りで探っていく感じが割と好みですが、そのへん堪能したいなら原作で読んだほうが面白い作品かも。
無機質な気楽さはあり、ソロゲームのリプレイ読んでるような感じです。「マンガBANG!」で2020年~連載。
試し読み ニコニコ静画
なぎはし ここ 一二三書房 2020年10月15日頃
ガチャ空/ペコー ホビージャパン 2019年04月23日頃
ナカノヒトゲノム【実況中】(おそら)
謎のフリーゲーム「ナカノヒトゲノム」をプレイしたゲーム実況者入出アカツキは、妙な世界でそれぞれ得意ジャンルの異なる実況者とともに様々なゲームに参加させられることになる。目標は「閲覧数1億人」!
協力型デスゲーム×ギャグということで緊迫感なさげ、とはいえペナルティがエグいゲームも混じってます。謎が多すぎるんですが、そもそも閲覧してんのは誰なのか?
絵はきれいでギャグも面白いですが、そもそもゲームに参加する理由がよくわからないというか、女の子が温泉入ってる時とかのほうが閲覧数が稼げてるというズレみたいなのはちょっと気になります。意外とホラーな展開もあり。
試し読み pixivコミック
おそら KADOKAWA/メディアファクトリー 2015-06-27
愛してるって言わなきゃ、死ぬ。(三生)
クラスで孤立する少年・本田あらたの元に、突然三人の美少女が現れ、全員があらたの彼女候補だと告げる。押しかけ女房ならぬ押しかけ彼女として強引に家に上がり込み、肉体言語(ダブルミーニング)であらたの歓心を買おうとする少女たちの「理由」とは――先の読めないハーレムデスゲーム。
独断と偏見で言えば、正統派負けヒロインつばさちゃんの活躍を見守るマンガです。この子いるといないとで全然ちがうマンガです。果たして彼女は無事負けヒロインとして退場してしまうのか……!
序盤は色々とケレン味強いですが途中から化けた印象で、意外にほっこりするシーンも多く、終わり方もデスゲに珍しくきれいでした。
https://twitter.com/sanjomanami/status/1030735278913150976?ref_src=twsrc%5Etfw 2018~2020年「マンガワン」および「裏サンデー」で連載、
完結。全5巻になると思います。3巻以降は電子のみ。
同じく恋愛デスゲームだと、「僕らはみんな死んでいる♪」というのも昔読んで割と面白かったです。あい死ぬがあいのり系デスゲームなら、こちらはテラスハウス系デスゲームという感じ。
試し読み 裏サンデー
異世界デスゲームに転送されてつらい(水あさと)
「死にたい」と呟いた瞬間、異世界に転送されてしまったブラック企業会社員・氷見。宙を竜が舞う闘技場で「シニガミゲーム」に巻き込まれることになった彼は、とりあえず司会者の死神の言動の揚げ足を取り、ルールの詳細な説明を求め、ゲームをうやむやにし、さらに謝罪と賠償を求めるゲームブレーカーぶりをまざまざと見せつける。その後、氷見はしょっちゅう死神にデスゲームに巻き込まれては怯えさせることに――殺し合いが「始まらない」、ポンコツ死神×社畜によるデスゲームコメディ。
毎回結構趣向が違って割と手が込んでます。水あさと先生は前に「デンキ街の本屋さん」読んであんま合わないかな、と思ってたんですがこれは楽しく読みました。一応コメディなんですが氷見も死神サイドも謎の哀愁を漂わせており、このへんの常に漂う報われなさは水先生の持ち味ですね。
個人的にはぜひそのままシニガミゲームがスタートして欲しかったところですが、まあたまにはこんなのも。デスゲームもすっかりジャンルとして定着してこういうカウンターカルチャー的な作品も増えてきて、その中だと読んだ限り一番面白かったです。
「月刊コミックフラッパー」で2018~2019年連載、全3巻で
完結。 試し読み ComicWalker
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