ルールがわからなくても勢いで読め! 読めば読むほどドラが乗る、名作麻雀マンガたち

あンた、小腹が空いてるぜ

麻雀マンガのコーナーです。専門の雑誌があることもあり常時新作が補充されるちょっと特殊なジャンルで、一種類のゲームに対して作品数が異常なんですが、その中でもこれは面白い! みたいなのを紹介していこうかと思います。
なんぼなんぼでも飽和状態にあるので、能力もの要素が入ったりトーナメント始まったりペナルティが鬼だったり、文明が壊滅してたり政治パロディだったり女の子がかわいかったりとバリエーションは色々。あと地味に名言、決め台詞が多いのも特徴といえば特徴。

ちなみに僕はもう十年ぐらい麻雀を打っておらず、点数計算の正確なやり方も知りません。大雑把なルールはゲーセンとセガサターンで覚えました(詳細は省く)。そういう人のチョイスであるということを一応最初に記しておきます。

【オススメ】アカギ 〜闇に降り立った天才〜(福本伸行)

時は昭和33年、嵐の夜に、ひとりの男の伝説は場末の雀荘で静かに始まった――そのクールな風貌と圧巻の実力から「天 天和通りの快男児」で主役を喰った感のある赤木しげるの若かりし日々を描く、顎も話も尖りまくった昭和麻雀無頼伝。

アカギ ~闇に降り立った天才~

第92話”操作”(11巻収録)より

絵はいつものハンコ絵ですが、一歩間違えば即死のスリリング過ぎるペナルティ麻雀、鉄骨を渡るがごとき紙一重の妙技、アカギ先生の常識外れの麻雀講座、そして「天」のアカギに痺れた人の期待を裏切らない、読者の価値観を揺さぶる挑発的で破滅的な死生観で十分にお釣りが出ます。


序盤は様々な雀ゴロと対戦しますがほぼ「本編」と言っていいのが8巻からスタートする鷲巣麻雀。裏主人公的存在の豪運の巨星・鷲巣巌との熱戦は実に20年以上に渡り、グダグダになって晩節を汚した感はありつつも、途中までは僕の知る限り最も面白い麻雀マンガでした。全36巻で完結。スピンオフでありながらさらにスピンオフ(「ワシズ」シリーズ)が発生するというある意味珍しい作品で、メディアミックス化もさかん。

【オススメ】ノーマーク爆牌党(片山まさゆき)

打つ人の多くが麻雀マンガのベストと評価する作品です。一見暴牌、その実炸裂へ向けた導火線に火を点ける「爆牌」を武器とする傲岸不遜の天才・爆岡弾十郎と、堅実な手回しの「爆守備」をメインに、やがてバリバリの理論派として爆岡最大のライバルへと成長していく鉄壁保。そして数多い名キャラクターが繰り広げる多層的な闘牌は、序盤のギャグっぽい描写から予想できない高みへと上り詰めます。

割と有名なのは鉄壁くんによる「流れ」の説明のシーン。「爆牌とは何か」を決めずに連載スタートしたらしいですが、作中でその正体が推理されていく過程にはちょっと形容しがたい楽しさがあります。読後感もさわやかで、見切り発車という割にやたら完成度が高いです。

3巻ぐらいからシリアスみが増していき、連載途中で事実上主人公が交代してからが本番。最初2~3頭身だった爆岡が徐々にダークヒーローと化し、無言でニヒルな笑みを浮かべるのを見ると「同じマンガでいいんだよな?」と最初のほうを読み返したくなる衝動にかられます。割と序盤は大介と仲が良かったりするのに謎の哀愁を感じる。全9巻で完結。

試し読み コミックシーモア

【オススメ】むこうぶち(原案:安藤満 漫画:天獅子悦也)

80年代、東京――それは日本がかつてない好景気に沸き、狂い、溺れていた時代。史上最高の高レートでやり取りされる裏麻雀の世界に、出会うものの「格」を量るがごとき麻雀を打つひとりのむこうぶちがいた。人呼んで傀、人の鬼と書く男――

むこうぶち

第79話”群れ・1″(10巻収録)より

既刊全部読んでない状態で書き始めてます。というのもですね、このマンガ相手の手配を推理する、あるいは訳のわからない傀の打牌の謎を解くような場面が多く、まともに付き合うと物凄く読むのに時間がかかるからです。ほぼミステリ。こらー全部読んでたら最初のほうの印象忘れるぞ、ということでフライングでのご紹介。


そういうわけで麻雀に強くなりたい人はかなり参考になるかと(ただしツキや流れは肯定派というか、自明とする内容です)。麻雀全然わからんという人でも欲に狂って破滅していく人たちを見たければ一応おすすめ。ヒューマンな話も多いですけどね。
1~3巻は麻雀知識しっかりないときついので、よくわからない人は4巻ぐらいから先に読むほうがいいかも。最初はうらぶれたおっさんだった傀もそのへんになると飯田響也的オニィチャンに変貌し、交通事故みたいな主人公として悪辣なキャラクターが確立されています。

【オススメ】バード 砂漠の勝負師(青山広美)

鳥を多用した独創的な演出で、ラスベガスで毎夜人々を酔わす稀代の天才マジシャン・バード。彼の元に、日本からふたりの博徒が訪れる――無敗の怪物・「蛇」との麻雀勝負を依頼するために。
麻雀未経験のバードだが、その細やかで大胆なテクニックと合理的な思考は、麻雀においてもトッププロを子ども扱いするほどの威力を見せつける。一方不気味に微笑む「蛇」には、執念が産んだ誰にも真似のできないある秘密があった――

バード 砂漠の勝負師

stage.14″秘密”(2巻収録)より

理論上不可能とされていた「全自動卓での天和積み込み」をやってのけたことで有名な作品。主人公がマジシャンということで、当然イカサマアリアリです。

全2巻とスピーディに完結した後、山根和俊先生を作画に迎えて「最凶雀士VS天才魔術師」としてリメイク、さらに続編「雀界天使VS天才魔術師」「BLACK MARKET -闇市編-」が発表されています。どれも面白いですが、青山先生作画の本作が僕は一番面白いと思います。

あと「蛇」がビートたけしみたいで怖い。こういうとぼけたサイコパスは気を抜くと「軽く」なりますがコイツはいいですよ……。そのへんがリメイク版だと一番違和感あるところだったりもします。ただ本編とリメイク版だと全自動卓の性能が進化してたりで変化もあるので、読み比べてみるのも一興。

マジャン ~畏村奇聞~(カミムラ晋作)

麻雀が「マジャン」として、神聖な祭儀とされる僻村・麻上村。それを知らない転校生の山里卓次は、軽口を叩いたことから学校の実力者に目をつけられ、負ければ指を切断する勝負に参加させられる。さらに彼を狙う強者が次々と現れ、山里はしだいに父譲りの才覚を露わにしていくことに……。
神前試合という設定で多数のローカルルールとイカサマの禁止、そして異常な賭け代を成立させる異色麻雀マンガ。

マジャン ~畏村奇聞~

第2話″異型の打牌”(1巻収録)より

ギャンブルものでそれやったら盛り上がるよね! みたいなことを多数やってくれて、敵の能力とルールの謎で強烈に興味を引く上に、ほぼ常時サドンデス状態で勝負が進行していくので先が気になってしょうがないです。設定が上手いし、全体の構成もきれいです。


表紙の女の子率高いですが、話は目つきの据わった男だらけで進行します。あまり活躍する機会のなかったたまのちゃんもその後の麻上村では楽しそうで何より。全11巻で完結
ファミ通クリアコミックス(2巻で刊行中断)およびペーパーオンデマンド、または電子書籍での取り扱いとなります。Kindle Unlimited、マンガ図書館Zなどでも読めます。

試し読み スキマ

天竜牌(原作:杉井光 漫画:松井勝法)

ろくでなしの父が失踪し、ふたりの姉妹と一緒に雀荘の店員を勤める天ヶ崎竜也。彼の元に突然80億円の借用書を持った無法者・花竜が現れ、彼にひとつの選択を迫る。姉妹を犠牲に差し出すか、あるいはサイコロを振り、互いの所持金と生命を賭けた能力系麻雀勝負「天究牌」へ参加するか――?

天竜牌

第4話”竜は沈まない”(2巻収録)より

能力は「麻咒(マントラ)」と呼ばれ、事実上ルールを変えるほど強力なものが多いので、ほぼ毎回竜也は変則麻雀をすることになります。「弱い」とされる彼の麻咒を駆使して、いかにそこに勝機を見出していくか? というトリッキーな麻雀マンガ。

麻雀マンガでここまでガッツリ能力ものというのは珍しく、真新しいというかはっちゃけた作品です。
掲載誌が週刊少年マガジンということもあってノリは割とライト目、毎回趣向の違う変わり麻雀を楽しめる良作だったんですがこれから! というところでおもむろに打ち切られました。なぜに。全3巻で完結。

試し読み BookLive

麻雀青春綺談トバクチ(監修:小堀洋 漫画:馬場民雄)

スポーツにしろ勉強にしろなんでもそつなくこなし、裕福な家庭に生まれ女の子にもモテる海神荘司。才能に恵まれ過ぎて何をやっても満たされない彼は、ネット麻雀仲間に呼び出されて雀荘で代打ちに立ち、そこで自分が真剣になれる「勝負」、やがて好敵手までも得ることになる――

麻雀青春綺談トバクチ

闘牌第2局”天国と地獄”より

「という夢を見たのさ」という感じ。さすがに主人公がここまで完璧超人だとちょっと苦笑いしちゃうんですが、馬場先生の軽やかな絵とスピーディな展開(なんと全1巻で3回真剣勝負をする)、麻雀だけでなく学生生活やラブコメまで織り交ぜる構成力で、サッと読めて楽しめる麻雀マンガです。勝負も軽い感じではなく、どうしてなかなかハラハラするから舌を巻く。

なんとなくグルメ漫画家のイメージのある馬場先生ですがこーいうのも描いてたんですね。敵役にミサトさんがいるのが時代を感じる。マンガ図書館Zで無料で読めます。

マンガ図書館Z

トリツキくん(高田裕三)

自称日本で最も霊に取り憑かれやすい体質の高校生・天草史郎の元に今回やってきたのは、甘いものが大好きのキャピキャピ系女子大生(の霊)、しのぶ。彼女のせいでスイーツを大量に喰わされたあげく、仇討ちでヤクザとの麻雀勝負に挑むことになる史郎の明日はどっちだ。初期高田先生が送る幽霊系色モノ麻雀マンガ。

トリツキくん

”トリツキくん”より


「3×3 EYES」の伝奇アクションのイメージが強い高田先生ですが、日常(?)ラブコメでも佳作を多数発表しており、本作もそのひとつ。麻雀マンガなのはちょっとびっくりですが、高田先生は片山まさゆき先生の元アシなのでそのへんのツテ? なにげに美少女麻雀ものとして先駆的作品。

たまに変なイカサマが導入されたり、霊安室で古墳の亡霊と麻雀始めたりするシチュエーション的な面白さの印象が強いです。あと女の子がかわいい。
「別冊近代麻雀」で1989~1990年連載、移籍して「シンバッド」で1990~1991年連載して完結、全1巻。シンバッドは麻雀誌ではないので、後半の話は麻雀関係なし。

話的にもちゃんと一話完結で起承転結していて、終わり方もムチャクチャしますがこれぞ幽霊ものの終わり方! という感じ。テンポが良くスラスラ読ませ、普通に麻雀関係なく面白いです(というか麻雀マンガとしては並)。
これも時代を感じる作品で、時事ネタの多さもそうなんですが、麻雀のせいでひどい死に方をしたはずのしのぶがふつーに麻雀好きなのが今読むと若干違和感(調べた感じ、日本で「トラウマ」という言葉が一般的に周知されたのは1995年頃)。いや、そういう人もいるでしょうけど。

他にもこんなマンガが点棒に人生を乗せています

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