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読者の腹筋と作者の精神を破壊する、おすすめギャグマンガ傑作群

時代とともに笑いは変わる

おすすめのギャグ漫画をセレクトしましたが、かつて大ヒットしたギャグでも今読むとあまり面白くないということが普通に起こる世界なので、評価がちょっと難しかったりもしてます。
結局「自分が面白かった」ものを紹介するしかないわけです。ギャグは長期的に描いてるとだんだん頭がやられてくると俗に言い、辟易して別ジャンルへ移行する方も多いようです。面白いギャグ漫画とはそうした犠牲を払った、一筋の流れ星なのです(謎のきれいなまとめ)。
なお、パロディ4コマは別カテゴリとしています。

セクシーコマンドー外伝 すごいよ!! マサルさん(うすた京介)

90年代に突如として現れ、そのあまりにも独特なギャグ・擬音・ポエムなどで一世をを風靡したうすた京介の代表作です。

うすた先生は大体そうですが話は支離滅裂で、謎の武術・セクシーコマンドーを操る花中島マサルと、普通の少年にしてツッコミ役代表藤山起目粒との出会いを中心に描き、あとはひたすら予想不可能な角度から飛んでくるギャグの嵐で読者の思考回路を破壊しにかかります。

詰まる所文章で説明できるような漫画ではありません。
この作品以前・以降でギャグ漫画の「定型」を塗り替えた印象すらありますが、その現状を踏まえた上で読んでも独特という、誰にも(たぶん今のうすた先生自身にも)たどり着けないところまで行っちゃったマンガです。全7巻で完結。

行け! 稲中卓球部(古谷実)

ド定番ばかりで恐縮ですが、これも紹介しないと納得しない人が多いであろう、当時の中高生の絶大な支持を集めたギャグ漫画界殿堂入りの作品。
一応卓球マンガのはずなんですが、基本は下ネタ系ギャグ、試合が始まっても下ネタ系ギャグで、ついでに卑劣なゲームメイクも楽しめます。

これもマサルさんも連載期間はそれほど長くないんですが、濃度がおかしい。後のダークな作品にもつながるような、ちょっと「黒い」タイプの笑いがこちらでは多く、意外に思索的で、男子中学生の心理をリアルに描いていたりもします。

古谷先生唯一の純粋なギャグ漫画であり、新人漫画家の絵が物凄い勢いで上手くなっていく過程を楽しめる作品でもあります。アゴなしゲンと並ぶ作画出世魚ぶり。全13巻で完結。

試し読み ヤングマガジン公式サイト

南国少年パプワくん(柴田亜美)

90年代でみっつギャグ漫画をあげろといわれれば、上のふたつとあとこれだと思います(異論は認める)。

これひとつでガンガンの売り上げを大きく底上げしたといわれる作品で、謎の島に漂流したブラコン青年・シンタローが、半裸の少年パプワくん、喋るカタツムリ、足の生えた鯛などと交流をしつつも、時折訪れる組織の刺客たちと死闘を繰り広げるバトルものへと移行していく話です。

柴田先生はもともとドラクエの4コマとかで活躍されていた方で、そのあたりのノリがうまく長期連載にマッチしてます。後半は普通にバトル漫画なんですが、前半の続々と出現する化け物、変な方向にキャラ立ちした美形のお兄さんたちなどの造形、センスあふれる暴言などは今読んでも笑えます。

今でも色んなマンガでよく使われている、カメラから後頭部だけ見える状態で静かにツッコむ、というスタイルはこのマンガで定着した気がします。全7巻で完結。

ギャグマンガ日和(増田こうすけ)

で、2000年代に入るとこれが出てきます。まんがを漫画でなくマンガと書くあたりに親しみを感じますね。
特にあらすじとかないんですが、聖徳太子や松尾芭蕉などの偉人パロディ、名探偵うさみちゃんなどの説明しがたいやつ、単発のどう説明していいのかわかんないやつなどで構成された一話完結オムニバスギャグ漫画です。うすた系とはまたちょっと違う、流れるようなカオスぶりで読者を変なテンションへ誘うタイプのマンガで、これも結構フォロワーが多い印象。

第16幕”がんばれライト兄弟”(2巻収録)より

かなり当たり外れがあるんですがたまにおそろしく面白い回がゴロッと混ざりこんでいて、一度その快楽を知ってしまうと今か今かとページをめくらざるを得なくなります。アベレージはあまり高くないです。(※個人の感想です)


(ネットで)有名なのは麻雀のやつ(10巻収録)と、今や「ギチギチに詰め込んだ打ち切り回」を指す固有名詞と化したソードマスターヤマト(5巻収録)。数あるエピソードの中でも個人的に一番「すげえ」と思ったのは「ラストコンサート」(11巻収録)。
アニメ化もされて、クマ吉くん役のうえだゆうじさんがやたらイキイキと仕事してたのを覚えてます。無印が全15巻、続編(?)のGBが連載中。

帰宅部活動記録(くろは)

校内に部室を構え、特に何をするでもなく楽しく過ごすことを目的とした部活「帰宅部」――「あるのかよ」とツッコみつつなんだかんだで入部することになった安藤夏希は、マシンガンのような他の部員のボケに対応できる貴重なツッコミ要因として部内で確固たる地位を築いていくのであった……。アニメ化もされた女の子うじゃうじゃ系日常ギャグ漫画。

ギャグとしてはスタンダードなボケとツッコミで、勢いと言語センスが高く、流れに乗ってる時はめちゃめちゃ笑えます。

第20話”うろおぼえ御伽草子”(2巻収録)より

意味もなくアザラシを出すことで知られるくろは先生のデビュー作。あっという間に担当氏とズブズブの関係になり、電話で毒舌を浴びせ合う欄外マンガも割と好き。全5巻で完結。

月が爆発したので(まことじ)

爆発した月から飛んできたのは、兎の耳が生えたエイリアン?
隕石の直撃を受けて家が消滅した幸田親子は、なし崩し的にうさ耳ふたりと公園でホームレス生活を始めることになる。滅茶苦茶ピンチのはずなのに妙にのどかな日常はボケ倒しで浪費されていくが、実は日本にいる月の住人は彼女たちだけではなく――

ラジオDJ編第1話”乙女の花盛りラジオ”(1巻収録)より


日常系とギャグの中間ぐらいのスタンス。お気楽な本編とは別に、ややシニカルなラジオのパーソナリティを主人公とするDJ編が同時進行で進み、そのうちクロスミックスしていく……と見せかけてあまり交流なくそのまま終わりました。「月刊アクション」で2013~2014年連載、全3巻で完結
密室で一話まるまる喋って話を成立させる会話センスはなかなか。絵はかなり雑で、マンガというか話芸を見たような印象です。

試し読み ニコニコ静画

化物と少女(富田陽介)

少女は河川敷で化け物と出会った。そっと置かれた「拾ってください。」と書かれた段ボール。ふたりの利害が一致した時、ペットという概念の模索が始まる……! web媒体で好評を得たサイレントゆるギャグ漫画。

第1話(1巻収録)より

サイレントという割にはやたら文字数多いし、なんならほぼ喋ってるし色んな意味でゆるいんですが、妙に話の展開はロジカルで笑えます。

まあロジカルなら正しい結論が出るとは限らないというか……。一応ヴァルキリー系ですが作風がブランドイメージとかけ離れているためか、新レーベル「ブリーゼコミックス」の第一作として刊行されました。

試し読み コミックヴァルキリー

部長が堕ちるマンガ(中村朝)

新超社社内でも一目置かれる堅物部長・小山田誠一郎(57)。彼のかたくなな態度に、部下は部長×電柱のBL本を書くと脅しをかける。その言葉から色々あってあやまちを悟った彼は、自らの非を認めやがて楽しきオタク沼へ沈没してゆく。

一番近いものを感じるのは、深夜にやってる3分ぐらいのハイテンポなギャグアニメ。あの勢いをそのままマンガに移植したような作品です。集中線がとにかく多い。

ある意味これほどスピード感のあるマンガはあんまなく、言語センスもかなりパーリー。笑いをとるには物量で押し流すタイプと奇襲するタイプがあると思うんですが、このマンガはたぶん前者で、勢いで読者を押し流しそのままオーバーキルしにかかるスタイルです。

試し読み pixivコミック

少女聖典 ベスケ・デス・ケベス(ルノアール兄弟)

あらゆる願いをかなえてくれるが、ドスケベ女子の前にしか現れないとされる悪魔(自称妖精)ケベス。うちにケダモノを飼う真面目少女・円城寺ゆいかは、彼のサービスによる数々の男裸祭りを乗り越え、やがて日本の命運を賭けたケベス同士の争いに巻き込まれていくことになる。下ネタしか言わないスタンド系ギャグ。

第1話”ベスケ・デス・ケベスと申します”(1巻収録)より

やってることは死ぬほど下品なんですが、どこか高貴なフレグランスが漂います。ボケ、ツッコミどちらも秀逸。チャンピオン系だからか、どことなくがきデカっぽさがあります。
マンガ偏差値自体は高く、何言ってんだかよくわかんない展開もスラスラ読ませます。

これ書いてて思いましたが「紳士的な変態」枠のマンガですね。あんま人前で読まないことを薦めます。「別冊少年チャンピオン」で2014年~連載。

試し読み コミックシーモア

このヒーラー、めんどくさい(丹念に発酵)

ほぼフルアーマーながらも絶妙に初心者な冒険者・アルヴィンがエンカウントしたのは、人を見ると襲い掛かるが意外と話のわかる魔獣たちと、クソ面倒な性格のヒーラー・カーラ。無自覚に人を煽り倒し、回復魔法(当たると高ダメージ)を飛ばしてくるカーラと半強制的にパーティーを組まされることになったアルヴィンの受難を描くファンタジー系ギャグ漫画。

第7話”回復魔法”(1巻収録)より

カーラの煽り芸とアルヴィンのツッコミの応酬を楽しめるかどうかでほぼ評価が決まります。要は漫才みたいなマンガで、畳みかけるテンポの良さとナンセンスな話運び、たまにあるさりげないデレが刺されば読み続ける以外の選択肢はなくなります。カーラにばかり目が行きますがアルヴィンもなかなかのお荷物。


2019年~「ニコニコ静画」で連載、他「ComicWalker」、「月刊コミックフラッパー」に移籍連載。2022年アニメ化。

類似作 うちの奴隷が明るすぎる(ぶしやま)

試し読み ニコニコ静画

ゆこさえ戦えば(福井セイ)

悪魔凱戦(ディアブレイル)――それは名誉を求める悪魔と力を与えられし人間がタッグを組み、他の能力者たちと争い合う血の祭典。悪魔ギギラ・キングレイによって力を与えられた新王寺ゆこは、歴代類を見ないほどの才能を見せ、ひとたび力をふるえば並みいる猛者を子供扱いしてみせる。ただし悪魔凱戦に対するやる気はかけらもない……!

第2話”天才”(1巻収録)より

一応能力ものバトルなんですが、バトルが始まらないバトル漫画とも呼ばれます。ハードコア? な世界観を強制的にゆるくするゆこのマイペースぶりと、それに翻弄される強面悪魔(および他の能力者たち)による正統派振り回されコメディです。

ゆこ以外の能力者がいかにもサンデー系の能力者っぽいのがじわじわきます。同じサンデー系だと「魔王城でおやすみ」がやや近いですが、ツッコミはこの作品のほうがキレ味鋭い印象。軽~くラブコメ要素もあり。

試し読み ニコニコ漫画

ちくちくウニウニ(吉田戦車)

二足歩行で言語を解するウニを主人公に、道行く人にワカメを押し売りする貝柱さん、カニの医者やエビの看護婦、なんとも形容しがたい天女などがシュールな日常を過ごす海産物ギャグ漫画。

“私だけが幸せになれ”より

「伝染るんです。」とほぼ同時期の作品で、不条理ギャグのパイオニアの一番いい時期の仕事を存分に楽しめますし、同様に色々とおかしいです。
ちくちくウニウニといえば先生というぐらい先生のアクが強い。

「週刊少年サンデー」で1990~1992年連載、「週刊少年サンデー増刊号」1993~1994年連載。無印および「超ちくちくウニウニ」刊行、このふたつを再編してまとめた「ちくちくウニウニ 全」が2003年刊行。それぞれ全1巻で完結

試し読み 小学館eコミックストア

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rokuro

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