深夜に読むものではない。読むだけで腹が減る、グルメ・お料理マンガ選

料理は愛情とほんのちょっとのお金

最近随分作品数が増えてきたジャンルです。食事は三大欲求に数えられ、長距離旅行の目的になるほど強い訴求力を持つ最強の娯楽のひとつです。流行り廃りはあるにしても話が作りやすく、比較的簡単に読者の感情(あるいは胃袋)を揺らすことができるこのジャンルは今後も多くの作品を生み出していくことと思います。
個人的に料理は好きなので、参考になるものは実際に作ったりすることもあります。このカテゴリに関しては、そういう実利性みたいなのも加点要素になっています。

作る系

【オススメ】美味しんぼ(原作:雁屋哲 漫画:花咲アキラ)

東西新聞に勤める山岡士郎は、ぐうたらで態度が悪く社内の鼻つまみもの、しかし”食”に関しては圧倒的な知識を持っている。彼とヒロインの栗田ゆう子、そして食の権化海原雄山を中核に、多種多様な食についての物語が展開され、やがてストーリーは食の頂点を争う「究極のメニュー」「至高のメニュー」による料理バトルへと突入していきます。

グルメマンガとしてはおそらく最もメジャーな作品。山岡・海原の歯に衣着せぬ物言いや対立・恋愛要素で、エンターテイメントとしても骨格を持ち、なにげにあらゆる年代に人気のある作品です。

僕は40巻ぐらいまでしか読んでないので、最近の迷走しているという展開は知らないですが、とりあえずそのへんまでは好きです。原作者が「野望の王国」と同じ人。

【オススメ】侠飯(原作:福澤徹三 漫画:薩美佑)

「おとこめし」と読みます。これといった取り柄もなく家事もてんでダメの若水良太の家に、突如現れた救世主。部屋をあっという間にきれいにし、的確なアドバイスを彼に授け、しかも作る料理は絶品揃い。メイドさんかなんかだと「ああ、はい」となるこの設定を抗争中のヤクザとその弟分でゴリ押ししてくるやたら飯が上手そうなマンガです。原作小説~ドラマが両方ヒットしたので、元々知名度が高いですがこの漫画版も良い。

絵は相当上手く、良太くんの「うまーい!」の顔も相まって自分でも作りたくなるマンガ暫定ナンバーワン。

押しかけてくるヤクザを寡黙な柳刃サンだけではなく、割とよく喋る火野を潤滑油として配置してるあたりが上手く、柳刃は必要以上に「怖さ」を主張する必要がないため妙に浮世離れした頼りがいのある大人として描かれ、良太との距離感も適度に遠いです。
マンガでは原作小説1巻部分の設定を使用しているので、気に入った方は小説/ドラマ版でまだまだ柳刃の料理を楽しむことができます。

甘々と稲妻(雨隠ギド)

妻を亡くし、高校教師の犬塚公平は娘のつむぎをひとりで育てることになる。しかし彼は料理がからきし、仕事も忙しく、食事はありもののお弁当等……ある日危機感を覚えた彼が、ひょんなことから教え子の飯田小鳥と一緒に料理会を開催し、娘のために様々な料理をこしらえる姿を描く作品です。

育児系料理マンガということで、出てくる料理がハンバーグや唐揚げ、餃子やきんぴら等オーソドックス。かなり手間がかかるものも多いですが、なかなか手の出しにくいスタンダードに挑戦するきっかけになるという意味で実用的なマンガです。


男所帯の娘ということでたまに喧嘩してますが、割とつむぎは素直ないい子です。男くささみたいなのは皆無で、子育て+日常系+お料理で手堅く勝負してくる感じです。左記のワードにピンとくるようであれば、満足度の高い作品だと思います。

パパと親父のウチご飯(豊田悠)

もいっちょ育児系料理マンガ。こちらは家庭の事情で父親ふたりとそれぞれの子供がルームシェアし、四人で一緒にご飯を作ってムシャムシャ食うマンガです。父親A(晴海)は料理能力はメタメタの温和な編集者、父親B(千石)はヤンキー風の整体師。一応書いときますがゲイカップルではないです。

こちらも実用性が高くレシピは丁寧。簡単なもの(インスタントラーメンとかもある)から凝ったものまでバリエーションが豊富で、簡易ローストビーフとか絶対これ読まなきゃ作ろうと思わないものもあって勉強になります。

甘々よりは家庭事情が複雑で子育てものとしては僕はこっちのほうが好き。子供のかわいさだと甘々のが好きです。どっちも現実より大分手のかからない点では共通してますが、まあマンガなので……。

試し読み コミックバンチ

味噌汁でカンパイ!(笹乃さい)

父と二人暮らしの父子家庭も9年目。どうしても朝ごはんが適当になる中学生・善一郎を見かねた幼馴染の八重ちゃんは、彼の家に押しかけて毎朝朝食を作ってあげることを決める。

しかし所詮そこは中学生、色々料理の基本がわからない……という具合で、初歩から味噌汁メインに学習できるレシピ付きマンガです。

最近の小学館はゆるめの恋愛/日常系+実用書をひたすら連発していて、掃除漫画とか筋トレ漫画とか爬虫類の飼い方漫画とかありますがこれもかなり実用的な一冊。味噌汁作ったことない人でもちょっとやってみようかな、となると思います(試し読みでいくつかレシピ見れます)。絵もかわいくてなんかいいです。

試し読み ゲッサン

肉極道(原作:佐々木善章 漫画:森尾正博)

「マズい! 安定してマズい!」――祖父の急逝により孫娘・まなびが経営する肉料理専門食堂「あさくら」。素人料理で日々着実に客足を落とすこの店にある日ふらりと現れた極道風の男は、律儀に毎回完食してはボロクソ言いながら丁寧に肉料理のいろはをレクチャーして去っていく。果たしてまなびは肉料理のエキスパートとなれるのか? コメディ風の味付けで肉料理の基本を学べるヤクザ系料理もの。

肉極道

第6話(1巻収録)より

出てくる料理はハンバーグや唐揚げにトンカツなどまさに定番。ただ色々面白い情報があって参考になりました。読むと日々漫然と焼いていた肉に対する意識がちょっと変わるはずです。


肉極道の肉料理への愛情は鬱陶しくも暑苦しく、肉料理と人生論を組み合わせたよくわからんことを言いだすコラム的な楽しみもあり、笑わせてくれます。
「週刊漫画TIMES」で2017~2018年連載、全5巻で完結

試し読み コミックシーモア

ニートめし!(まめきちまめこ)

作者の方がもともと有名なニートで、twitter等で圧倒的な支持を得た後「まめきちまめこ ニートの日常」を上梓、満を持して「漫画アクション」にて連載開始したのがこちらの作品となります。
一応タイトルに偽りなく、毎回なんか食ってますがメインはニートの生態系です。

ニートめし!

第4話”野口さんの誘惑”(1巻収録)より

主人公はニートですが引きこもりではなく、外出も会話も普通にしますし、何気に料理スキルも高め。料理自体ではなく、「食のシチュエーションにこだわる」という実にニートらしい行動で話を作ったりするのがちょっと珍しいかなと思います。

あえて極寒の環境に身をさらしてからのカップ麺とかそういう感じで、妄想系グルメというか。なにげに色んなジャンルで応用できるテクニックな気がします。

試し読み ニコニコ静画

サチのお寺ごはん 原案協力:久住昌之 監修:青江覚峰 漫画:かねもりあやみ)

座右の銘は「人生 期待したら負け」――その名の通りなんとなーく幸薄き人生を送り、27歳にして濃厚に諦観をただよわせる独身OL・臼井幸。インスタントフードとお弁当で日々を送る臼井だったが、ある日ナンパ男に連行されたお寺でプロ級の精進料理をふるまう住職・源導と出会ったことから「食べる・作ることの楽しさ」を思い出していく。そんなほんの小さな喜びから、彼女の「幸せ探し」の日々が始まる――

豆乳鍋

第11話”自分をいたわる”(2巻収録)より

幸の業的なものはそうそう軽くなく、そう簡単に幸せになれない彼女がエサにつられてお寺に遊びにいき、なんとなく最近の悩みを話して源導さんのありがたいお言葉につながり、心身ともに癒される……という、グルメ×人生相談のこれまた変わった取り合わせ。

色々悩ましいOLさんとかがおそらくメイン読者層ですが、精進料理に興味がある人にもいい入口かと(おもむろに肉料理が出てきたりもしますが)。絵といい話といいどことなくぎこちないんですが、キャラクターは朴訥として味があるし料理はしっかりしてるし、合わせ技で欠点を「温かみ」とか「親しみやすさ」とかに変換してる感じがします。落ち着いてみるとなかなか居心地がいい。

サチのお寺ごはん

第10話”お肉ともどき”(2巻収録)より


このマンガが地味に珍しい点として、出された料理を幸が家でもう一度作ることが多いです(1話中に同じ料理が2回出てくる)。食べて話聞いただけでは終わらないのがこの作品のテーマをさりげなく示してるように思います。
料理本としての原作は青木先生(リアルに僧侶)の「お寺ごはん」。

舞妓さんちのまかないさん(小山愛子)

京都の花街、仕事を終えた舞妓さんたちが帰るのは、「屋形」と呼ばれる共同住宅。普通の女の子に戻った彼女たちのために料理の腕をふるうのは、なんと若干16歳のまかないさん。特別腕がいいわけではなく、京都の生まれでもない彼女がここにいるのには、ちょっとした理由があった――料理に絡めてまかない少女・キヨの日常を描く、スローライフ京都マンガ。

絵がきれいです。話は基本的にキヨちゃんがお買い物したり、お出かけしたりとザ・日常系という感じですが、それをぼんやり眺めているだけでなんとなく楽しいビジュアルの魅力があります。

……平たくいうと何も起こらないわけですが、途中から舞妓さんの話も絡んできてすこし動きが出てきたような。
いくつかの料理はレシピついてますが割とざっくりしていて、元々料理をする人でないと再現厳しそう。オーブン使った料理で「焼く」の一言で済まされてたりとか。ググればいい話なんですけど。

ごはんのおとも(たな)

路地つきあたりの小料理屋「ひとくちや」を中心に、そこに集まる様々な人たちのささやかな食事と生活を描くオムニバス作品です。出てくる料理はどれも簡単なものですが食欲をそそり、丁寧なレシピもついているのでマネしてみたくなる人も多いはず。マンガとしてはこれもほんと~に日常の一コマを切り取った感じで、たわいないですが読み終えると暖かいものを残します。

ごはんのおとも

一膳分のあまやかし”(1巻収録)より

一冊の「本」としての完成度がまず高い。「ちょっとマンガ読んで小皿のレパートリーを増やしたい」という方にもおすすめ。

画力ありきの話ですが、これ読んでフルカラーと料理マンガがいかに相性がいいかよくわかりました。

試し読み 実業之日本社公式サイト

戦争めし(魚乃目三太)

今や忘れられつつある70年前の戦争。延びる戦線、枯渇する食料、あるいは捕虜となり、あるいは潜水艦に潜む人々に、食べたいものを食べる自由はなかった。その中で奇跡のように材料が揃い、かつ丼やにぎり寿司、ぜんざいは究極の一品へ変貌する。そして最後の贅沢すら許されない人々も……。生きる上で欠かせない食事からリアルな戦争生活を描き、ありふれた食事をご馳走に変える「枯渇系」グルメマンガ。

戦争めし

其の参”出兵前夜の善哉”(2巻収録)より

↑些末な点ですがこの「分かった」とかいいですね。「まかせろ」でも「できたら」でもなく、こういう時本当に出る台詞だと思います。食い物と戦争記録だけのマンガではなく、人間描写も見どころ。

日本は豊かになったと言いますが、豊かでないというのがどういうことかというと結局こういうことなんだなと思います。今当然のように与えられる衣食住がない、嗜好品がない、娯楽もない、自由に喋れない、命は安い、どれかひとつでもきついのが複合的にやってくる。「死」とかはどうも遠いですが「毎日ろくなものが食えない」というのはとても身近で、戦争ものらしい悲惨さこそ薄いですが表紙から想像できるほど平和な作品ではありません。
3巻では満州を舞台に少年時代のちばてつや先生も登場(独自取材)。

試し読み 秋田書店公式サイト

【オススメ】沈夫人の料理人(深巳琳子)

明代中国、上流階級の沈氏に買われた料理人・李三は腕前は圧巻、しかしとにかく気が弱く騙されやすい。退屈しのぎに彼を弄ぶ沈夫人だったが、無理難題を出せば出すほど出てくるのは極上の珍味。理不尽な女主人に心酔した天才料理人が中華の贅を尽くす、トラブルシューティング・グルメ漫画。

谷崎潤一郎っぽいと思ったら後書きで言及されてました。あの手の主従的関係とか、デレないツンデレみたいなのがお好きな方は特におすすめ。基本的に李三が誰かにひどい目に遭わされる話が多いんですが、彼自身がその状況を曲解して納得し、さらに美味い料理にカタルシスを昇華させるので読んでて嫌な感じが残りません。

舞台は江南地方。海があるので、エビとか蟹とか出てきます(酔蟹という料理ははじめて見ましたけど、すごい作り方)。
全4巻で完結。時代設定を1920年代に変えた「沈夫人の料理」(全2巻)はキャラクターのみ共通で、話としてのつながりはありません。

試し読み 小学館eコミックストア

食べる系

孤独のグルメ(原作:久住昌之 漫画:谷口ジロー)

謎の男井之頭五郎がさまざまな料理店(大体そのへんの定食屋とか)にフラリと立ち寄り、無言で飯を食いながら色々と考える、というマンガ。

はっきり言って地味なんですが数々の迷言がネット上で話題を呼び、若干ネタ的な意味で幅広い人気を獲得したロングセラーです。その後もぼつぼつと新作が発表されているようです。
このカテゴリ常連の久住先生は元々泉晴紀先生と合作(泉昌之名義)で活動されていました。「かっこいいスキヤキ」とかの原作を書いてらした方です。その頃からこうしたテイストの漫画を大量に発表されていますが、その中でもこれはマイルドかつ大人びた雰囲気があり、読者をあまり選ばないと思います。単純に主人公が無表情なおかげなのかもしれませんが。

面白いのかというともはやよくわからないのですが、作中になかなか含蓄深い発言があり、印象に残る作品です。

鳥居准教授の空腹 ~世界のスラムにうまいものあり~(原作:丸山ゴンザレス 漫画:渡辺大樹)

私立南亜橋大学の考古学准教授・鳥居裕造は、学部長に次々と面倒な仕事をふられては世界各国を飛び回り、余禄として各地の料理を楽しむアクティブな日々を送っていた。そんな彼が心惹かれるのは、日本では見られないスラム街の風景と、そこに住む人々。「クレイジージャーニー」で知られる丸山ゴンザレスが原作を務める世界各国食レポ漫画。

鳥居准教授の空腹 ~世界のスラムにうまいものあり~

special episode”スラムが作る微笑みの味”(1巻収録)より

ちょっと聞いたことのない料理がちょいちょい出てくるし、各国の風景に旅欲をそそられます。
コロナ禍もあってそうそう旅のできない状況で読むと、謎の癒しがありました。とりあえず新大久保行きたくなります。

作り的には「孤独のグルメ」の海外版といった感じで、狙った食べ物がなかなか手に入らないとか、昔喰いたかったアレに再会したとかそんなようなエピソードが多いです。あっさりした読み味ですが出てくるものはコッテリ系多め。
「たそがれ食堂」で2017年~2018連載、全2巻で完結

試し読み Comicブースト

肉女のススメ(小鳩ねねこ)

「食べ方が汚い」と婚約破棄された狼谷さん。美人だが実はズボラでオタクの犬塚さん。まじめなキャリアウーマン熊代さん。この3人がそれぞれ仕事やプライベートで色々ありつつも肉を喰っては癒される、完全に深夜に読んではダメなやつです。

肉女のススメ

7皿目”狼犬熊で焼肉ヘヴン!”(1巻収録)より

出てくる肉料理が基本的に珍しくもなんともない、というのがグルメ漫画としてはちょっと珍しいです。なので料理のうんちくに逃げることができず、話としては3人+αの人間ドラマが一応主軸。あとはひたすら酒飲んで肉喰ってハフハフ言ってるだけのマンガです(恋愛要素も若干あり)。


でもなぜか結構面白い。お肉大好きな人か、社会人女子の日常系が好きならおすすめです。「ヤングコミック」で2015~2018年連載、やや消化不良ですが(肉だけに)一応決着つけて全4巻で完結

試し読み pixivコミック

1日外出録ハンチョウ(原作:萩原天晴 協力:福本伸行 漫画:上原求,新井和也)

「賭博破戒録カイジ」に登場する、帝愛地下労働施設の班長・大槻。原作ではカイジとチンチロリンで熾烈な争いを繰り広げた彼が、一日外出券で娑婆に出ている時何をしているのか――

1日外出録ハンチョウ

第11話”少年”(1巻収録)より

本作はそれを綿密につづったおっさんの休日ドラマであり、どうということもない一日を最高に楽しむためのヒントが詰まった、大人のための娯楽作です。
飯テロ漫画としてスタートしましたが食事関係ない話も多く、なんでもありの休日マンガとして一皮も二皮も剥けていきます。ぐだぐだ話してるだけの「会話」がやたら面白く、とてもコミュ力の高いマンガという印象。


ちなみにお気づきかもしれませんが、「中間管理録トネガワ」とは作画担当が違います。何人いるッ……! 福本タッチの影武者……!
講談社もヒットさせることを前提に、かなり計画的に人員を集めてこれらの作品を作ってることがわかりますね(たぶん)。トネガワとはちがった意味で、こちらも読んでて幸せになれる作品です。「ヤングマガジンサード」に2016年読み切り掲載、「週刊ヤングマガジン」で2017年~連載。

試し読み webヤンマガ

【オススメ】忘却のサチコ( 阿部潤)

常に姿勢を正し、作家と同僚から絶大な信頼を集める文芸誌敏腕編集者・佐々木幸子。順風満帆といえる人生を送ってきた彼女だったが、結婚式当日に婚約者に逃げられてしまう――「忘却の瞬間」を求め、数多ある美食を追い求めるバリカタOLを描いた名店来訪系グルメ漫画です。お仕事マンガとしてもしっかりしてます。

構成としては前半になんらかのトラブルを描き、後半にご褒美的に訪れたお店で絶品料理を味わう、というのが基本形。取材として日本全国を飛び回るために地方特有の料理も多く紹介され、どことなく十津川刑事を彷彿とさせます。

美形だが天然、クソ真面目なOLのサチコは決して完璧な人間ではなく、意外と泥臭い一面を持ってたりします。それぞれ個性の強いキャラクターも、このマンガの魅力のひとつです。

試し読み 小学館公式サイト

四季を食べる女(大井昌和)

編集者の無茶ぶりに答えるべく、ブツブツ言いながら愛車のカワサキで全国を走り回るフリーの女カメラマン・薫。旅先で出会う風景と食事にあれやこれや考える、旅行エッセイ風グルメマンガ。

四季を食べる女

“秋を食べる女”より

こういう生活したいバイカーは多いでしょうが話としては地味。ストーリーどうこうよりもガレージでバイクにオイルそそぎながらウィスキー飲むとか、よくわからん漁村でふと入った店でくじら肉食べてあれこれ考えるとか、そういう日常の一瞬のスナップが印象に残る作品でした。

言語化すると野暮になるような、少し苦めの幸せを描いた作品だと思います。

試し読み 竹書房公式サイト

町田ほろ酔いめし浪漫 人生の味(鈴木マサカズ)

ここは限りなく神奈川に近い東京の辺境・町田市――町田をこよなく愛する鴨葱安二郎(43)と鶴亀大作(43)のふたりは今日もそのへんのごく普通の店でよくある料理を肴に酒を飲み、食について、人生について、どうということもない話に華を咲かせる――

町田ほろ酔いめし浪漫 人生の味

第一夜”もつ煮込みの味”より

とりあえず――とか引いてあらすじっぽくしてみましたが、おっさんふたりが飲み会をするだけのマンガです。ドラマもへったくれもなく、変化といえばふたりが作中で1歳年をとって44歳になるぐらい。ただ鈴木先生の他の作品が割とハードなこともあり、企業戦士のリラックスタイムを見るような謎の癒しがあります。

うなぎの肝串

第九夜”うな重の味”より


おっさんふたりが割と物静かで、ごく普通の人なのがいいですね。各話合間に鈴木先生の食コラムが入りますが、これも別に蘊蓄もオチもなく、「普通」です。まじめなおじさんのちょっとくだけたところを見るような楽しみのあるマンガでした。全1巻。

他にもこんなマンガが読者に飯テロを仕掛けています

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