楽しい旅行だったはずなのに、あなたが乗った乗用車は、山道の途中で不運にも故障してしまった。最寄りの街まで歩いても二時間……しかも嵐が来そうな気配だった。携帯電話も圏外で通じない。恋人と不安げに周囲を見渡したあなたは、針金のように尖った木立の隙間に、古色蒼然とした洋館が佇んでいるのを見付ける。
ツタの絡まったレンガ造りの建物には、鉄格子の嵌った小さな窓がいくつも取り付けられている。窓の奥で誰かが息を殺してあなたたちを監視しているような気がしたが、目の錯覚かもしれない。恋人はしきりに不満と疲れを口にしている。あなたは意を決して、真鍮製のノッカーを扉に叩きつけた。
「そうですか、それは難儀なことです。レッカー車を呼びますから、こちらでくつろいでください」そう言って通された居間で、あなたは奇妙な人々を目にする。片腕のない気の弱そうな男、常に奇妙な笑顔を顔に貼り付けた医者、太った男と宝石を身にまとった女の、さげすみ合うようなやり取り……。紳士的な中年の男が秘蔵のワインの自慢を始めた時、部屋の黒電話が鳴る。それは街へと続く唯一の道が、落雷による倒木で通れなくなったという連絡だった。
延焼した電線が切断され館は停電、あなたたちは暖炉と蝋燭の明かりの中で夜を過ごさないといけない。外では激しい風が唸り声をあげ、バチバチと雨が窓に叩きつけられる音がしている。不穏な気配の立ち込める中、紳士的な男が運んできたもの……それは、大量のマンガ本だった。しかも全部ミステリである。
「これほど完璧にお膳立てされた状況なら、きっと感情移入して読めるはず」そう言って、彼らはむさぼるようにマンガを読み始めた。唖然とするあなたたちに医師が微笑みながら説明を始める。彼らは、社会人ミステリマンガ研究サークル「クローズド・サークル」ご一行だったのだ。この洋館も二泊三日のレンタル契約である。「あなたたちもどうですか」と言って差し出された一冊を、あなたは手に取り、次の瞬間それが致命的な失敗であることを慄然として悟る。見るからに彼らは読み終えたあなたの感想を聞きたがっていて、しかも議論をするにはめんどくさそうな連中ばかりなのだ。
恋人は「こんなところにいられるか! おれは部屋に帰らせてもらうぞ!」と叫び、早々に引き上げてしまった。しかしあなたは空気を読んで立ち上がることができない。
それがあの、あまりにも長い夜の始まりだったのだ……。
はい、すいませんでした。ここからマンガのご紹介に移ります。
「本格ミステリ」はトリック・謎解き・フェアプレイを主眼とするミステリの古典的分野で、一般的に「ミステリ」という場合これを指すことが多いです。始祖とされる「モルグ街の殺人」、アガサ・クリスティーやエラリー・クイーン、ディクスン・カーの諸作品がこれに当たり、とても高い人気を誇ります。日本では戦後と90年代にブームがありました。
つまり、このジャンルの作品はある程度読者が謎を推理し、真相を喝破できるように作られています。
トリックは過去の名作の引き写しも多く、名作紹介的な側面もありますが、何より「閉ざされた環境でひとりひとり殺されていく恐怖」「普通に会話しているメンバーの中に、ひとり殺人犯がいる」「何気ない描写に、重大なヒントが隠されている」といった本格ミステリの面白さを十分に意識し、マンガというメディアをフル活用して極上のエンターテイメントを作り上げているその手腕には賞賛を送らざるをえません。
試し読み eBookJapan
長期連載にもほどがある。最近のまでは追っていませんが作者はどういう頭の構造をしてるんでしょうか。
言うまでもないとは思うんですが一応説明すると、江戸川コナン君が行く先々で殺人事件に遭遇し、そのたびに諸事情から毛利のおっちゃんを昏倒させて犯人を指摘する話です。
試し読み WEBサンデー
上記二作に比べると比較的マイナーですが、この人も化け物です。
天才少年燈馬くんと活発な女子高生が次々に事件に巻き込まれるんですが、加藤先生は知識量が異常で、数学から物理学、経済、パズルに音楽と様々な題材を駆使し、非常にバラエティに富んだシチュエーションで事件を提供してくれます。ご本人が理系の大学を出ていらっしゃるとのこと。
試し読み 講談社コミックプラス
QEDの形式を踏襲し、コレも同時並行で連載が開始しました。続編ではなく独立しています。
天才少年森羅くんと活発な女子高生が次々に事件に巻き込まれるんですが、森羅くんは珍しい虫や化石に反応する考古学者なので、ストーリーは歴史ものや考古学、生物関連、美術、オカルト的なものが多くなっています。
個人的に好きなエピソードは「地球最後の夏休み」(10巻収録)など。この構成は凄い。
試し読み コミックシーモア
ちなみに加藤先生は小説も書かれてます。人間やめてる
「マガジン」で金田一、「サンデー」でコナンが絶大な人気を集め、ミステリブームに火がついた漫画業界で、集英社とて何もせずに座していたわけではありません。
明らかにこの二作に対抗する意味で連載がスタートしたのがこの作品で、腹話術師と人形が不可解な事件に挑むストレートな本格推理マンガとなっています。
誌上で犯人当てクイズを展開し、ストーリーやトリックも決して悪くないと思うんですが、「何か」が足りず4巻で完結。その後小説・アニメ化・ドラマCD化でエピソードが追加されています。なにげに「金田一やコナンよりこれが好き」という声もたまに聞きます。
本作終了約8年後、小畑先生作画の「DEATH NOTE」がスタートし、集英社はようやくミステリ系マンガでヒットを飛ばすことに成功するのですが、それはまた別の話。
試し読み 少年ジャンプ+
事件が起きた小学校に「弁護士」「検事」が送り込まれ、学級会で真相を突き止める、という設定の異色法廷ミステリ。
主人公の趣味は「論破」、学級法廷では「異議あり!」を連発し、解決篇の手前ではスポットライトを浴びながらヒントを出してくれるなど、やりたい放題ですが逆に言えばエンタメミステリのコードを使いこなしているともいえます。なお、犯人が豹変してちょっと爬虫類っぽくなったりもします。
小畑先生はミステリ系3作目となり、だいぶ絵柄も変わってきました。最近ロリッ子を描くことに完全に目覚めてしまった気配を感じます。
原作者の榎先生はおそらく新人の漫画家で、余白欄に乗ってるネームを見る限り絵もうまいです。大場つぐみ先生だという説もありますが、どうでしょうね。ちょっとノリが違うような気もしますが……。
1巻完結のちょっと変わった「安楽椅子」ミステリ。2巻もありますが、話はそれぞれ独立しています。
最初にコレ読んだ時はその意表をつく設定にびっくりしました。「掴み」ってこういうことかと思ったものですが、通して読むとかなりスタンダードな構造のミステリで、端正な印象すらあります。
我孫子先生はキャリアの長い推理小説作家ですが、漫画化やゲーム化ありきで多くの原作を引き受けている珍しい推理作家です。ご存知「かまいたちの夜」
ついでに宣伝しておくと、僕がミステリ小説を国内で10作選ぶ場合、我孫子先生の「探偵映画」
若手にして熟練の技を持つ腹話術師・朝永嘉夫。ただし彼の操る人形・鞠小路鞠夫は、彼自身にもコントロールできない別人格でもある。
幼稚園の保母さん妹尾睦月(通称おむつ)と嘉夫・鞠夫が難事件を次々と解決する、我孫子武丸初期連作短編集のコミカライズ。絵は割と少女マンガですが、ミステリのコミカライズとしてはかなり成功してる部類だと思います。
ちなみに「あやつり左近」よりだいぶ前の作品。あっちと違ってこちらは人形のほうが探偵役で、そのぶん普通の青年の中に異様なものが潜んでいるという不気味さも強調されています。
原作小説でマンガの後の話を読むことができますので、漫画化されてない事件(およびふたりの関係の進展)を見たい方はそちらもどうぞ。
孤島・角島――K**大学推理小説研究会の一行は、鬼才・中村青司が遺した建築、「十角館」を訪れる。ただの悪趣味な観光旅行に過ぎなかったそれは、メンバーの中で息を潜める殺人者によって、閉鎖空間の連続殺人事件へと塗りかえられていく。一方、本土でも過去の事件を洗う推理合戦が繰り広げられていくが、一見無関係なふたつの視点はやがてひとつの点へと収束していき――「新本格」の嚆矢を放った名作、30年越しのコミカライズ。
試し読み アフタヌーン公式サイト
舞台は鉄道マニアばかりが集う夜行列車〈幻夜〉――ユルい作風の佐々木先生と新本格の立役者綾辻先生のコラボですが、(予想に反して)骨太なミステリドラマとなっています。上下巻で完結。
佐々木先生らしいギャグテイストで話を進めつつ、のっけから「鉄道に乗ったことがない女子高生」とかいう無茶な設定をブッコんでくるあたりは実に綾辻先生。
かなり無茶してますがフェアといえばフェア。ぜひ注意深く観察し、真相解明に挑戦してみてほしいです。タイムリミットは上巻の終わりぐらいまで。
昭和22年、戦地での遺言に従い、復員兵の南雲佳哉は友人の遺児貴船ミツとともに南海の孤島石津島を目指すことになった。行きがかり上不遜な態度の役人・瀬里沢とともに辿り着いた島は、善良でのどかな人々が暮らす牧歌的な島に見えた。人懐こい彼らに教えられた家で、南雲とミツはあるものを目にし、一気に島の怪異へと引きずり込まれていくことになる――
タイトルからちょっとエッチなやつかな? とか思ったりしたんですが、いやそういう要素も少しあるんですがそこはメインではなく、素朴で因習深い閉鎖環境の孤島で巻き起こる殺人事件の謎を描く民俗ミステリです。
試し読み モアイ
駅前にある「くにや書房」の一人息子、国谷一力にはあるほろ苦い思い出があった。幼い頃に出会った、身体の弱いミステリ好きの女の子との友情(あるいはほのかな恋)と突然の別れ、そしてある約束――しかし彼女は帰ってきた。唐突に、パワーアップして、ふたりで見た夢を「食べ」ることで生き永らえながら。
試し読み 講談社コミックプラス
部分的に本格を含むこともありますが、「謎」を推進力にしつつもトリックなどは絡まないもの、「謎」そのものの解明を目的としないもの、手がかりから解答を読者が指摘することが不可能な(あるいは過度に専門的な知識を要求される)もの、超現実的な要素を含み解答が最初からわかっているもの、社会派要素を前面に押し出しミステリを舞台装置に使うもの、探偵役のキャラクター性を前面に押し出しアクションを多用するものなど、本格とはちがうアプローチを主眼とするミステリ作品も多くあります。
カレーの作成中に突然殺人容疑で任意出頭を求められた青年・久能整(ととのう)。知人に対する殺人容疑がかけられた彼は、その異様なまでの詭弁・能弁家ぶりで居並ぶ刑事たちの個人的問題に口を挟み、自分に降りかかった冤罪に対して一風変わった抵抗を始める。そして最後に彼が見出す事件の解決は、「ミステリ」というジャンルへの強烈なアンチテーゼそのものだった――天然パーマが密室で喋り倒す、田村由美が送る魅力たっぷりの哲学風ミステリ。
安全圏ならこうした持論をぶてる人はいますが、バスジャックとかされても言いたいことを言えるクソ度胸はさすが主人公。田村先生の監禁劇や閉鎖空間での議論を扱った作品は昔から面白かったんですが、こういう着眼点や論理処理の面白さは以前はそれほど前面に出ておらず、新たな武器で容赦なく襲い掛かってくるので旧来のファンにも新発見の作品です。
試し読み 月刊flowers公式サイト
彼女はなぜこれを遺したんだろう。誰からも好かれていたクラスメイトの死――そして葬儀を終え、少し落ち着きを取り戻したはずの教室には、彼女からクラス全員へ宛てた遺書が置かれていた。彼女が死を選んだ理由を知りたい生徒たちは、ひとりずつ彼女の遺書をクラス全員の前で「公開」することを決める。それは一見みんなへの感謝を綴ったように見える遺書だったが――謎が謎を呼ぶ「閉鎖空間」ミステリ。
試し読み ガンガンジョーカー公式サイト
記憶を失い、しかし超人的な頭脳を持つ謎の探偵・ゼノ。余人には解決不能の難事件を次々と解決へ導き、その名を轟かせる彼にとある有名建築家から突き付けられた挑戦状。完全犯罪のために作られた7つの建造物、そこで巻き起こる7つの密室殺人――否、殺人密室の謎を解き明かせというものだった。用意された完全犯罪とゼノや助手の過去、多くの謎が魅力の超本格密室ミステリ。
試し読み 小学館eコミックストア
チャンピオン系ではほとんどミステリは見ませんが、木々津先生はそういったテイストを持っていて、「名探偵マーニー」という日常の謎系の作品を連載した後、今度は殺人事件の出てくるこの作品を発表されました。
木々津先生はちょっと現実離れした設定のほうが筆が乗る傾向がある気がしますが、僕がマーニーよりこっちが好きなのは、全体を貫く明確な謎の有無(兄に何が起きたのか?)も大きいと思います。
試し読み 秋田書店公式サイト
俗称「きれいなカイジ」。仲間たちと義賊として活動する頭脳優秀な謎の少年「零」が、とあることから日本一の資産家在全無量に目をつけられ、命や大金を賭けた王への試験に参加していくことになるという流れです。
創作ゲームカテゴリに入れても良かったんですけど、あっちにはきれいじゃないほうのカイジもいるのであえてこっちに持ってきました。
ミステリ要素が高いのは「ギャン鬼編」5巻からの暗号解読。あんま褒めてる人見ませんが僕は結構好きです。無印も割と暗号解読、クイズが多い印象があります。
石黒先生の中でもかなりの異色作。ミステリ雑誌「メフィスト」に連載されていたということで、探偵脳全開でのっけから展開していきますが、ノリはいつも通り明るく、馬鹿馬鹿しい感じの連作短編。
……と思いきや、中盤から徐々に作風が歪になってくるのですが……。
物語は過去に起きたいくつかの自殺についてのモノローグから始まる。風の通り道となっている主人公の家には様々な物体、不可解なもの、不思議なものが多く飛来し、その日は日付が未来の新聞記事が届いていた。
なんの気なしに目を通したそれが、ある出来事をきっかけに重要な意味を持ち始め……。
試し読み 少年ジャンプ公式サイト
宇宙大学入学試験、最終試験は孤立した宇宙船の中で53日を過ごすこと。10人の受験者たちは宇宙空間を泳ぎ、目的地へと辿り着いた。いざ試験を始めようとした彼らはこれから一緒に過ごすライバルたちを見渡し、ある不可解な事実に気付く。
――ひとり多い。11人いる!
全1巻で完結。初期のみ続編は別冊でしたが、現在手に入る文庫版等では本編、続編、ギャグテイストのショートショート集が全て収録されています。
警察官の神保は、異常な嗅覚を持つかつてのクラスメイト・松下操と再会する。今はペット探偵を営む松下だが、神保の働きかけで事件に協力することになると、難事件を次々に解決へ導く恐るべき働きを見せることになる。
松下自身は嫌悪するその能力に対し、周囲の人間たちは好奇の目を向け、あるいは利用しようと近付いてくるのだが――
発生する事件にはヘビーなものが多く、精神的に打たれ弱い松下は、自分が解明した真相にうちのめされることも珍しくありません。しかしそれでいて湿っぽくも暗くもならないこの独特のバランス感覚が、那州先生の一番の魅力だと個人的に思います。
青樹十郎は血の臭いを嗅ぎつける。「死体発見機」と呼ばれる彼は、今日も謎多き友人・嘉村ヒサトに自分が見たものを伝える。夜の世界の住人であるヒサトが真相を暴き、犯人を闇から闇へと葬っているとも知らずに……吸血鬼が安楽椅子探偵を務める、光永康則流変則ホラー・ミステリ。
普通のミステリなら必要な「事件に介入する理由」「証拠固め」などをオカルトでさっと処理しているので、ある意味ミステリの謎解き部分だけ抽出したような軽快さがあります。2012年から不定期連載、2014年に2巻が発売され以後中断。
試し読み 少年画報社公式サイト
かつて家族を殺人事件により失った過去を持つ真野礼二と、新たに科捜研に勤めることになった沢口ノンナ。このふたりを主な主人公として物語は展開する。
現場や凶器を執拗に調査することで、ただ真相を炙り出そうとする真野。「誰の言葉も信用しない」「鑑定結果こそが真実だ」という彼には、過去の事件にまつわるある思惑があった。
試し読み マンガほっと
気弱な少年ススムと、幼馴染のさくら。そして鏡の中にだけ現れる、ススムの双子の少年・ツトム――暴力的な苛めの描写、何を考えているのかわからないさくらの言葉を通して、ススムとさくらが「壊れている」ことが、薄皮を剥ぐように明かされていく。
ツトムを含む三人に、かつて何が起きたのか? 物語を貫く謎はシンプルで、謎の解明とともに物語は終わります――いや、本当に終わったのか、そもそも始まっていたのか?
全2巻と短め。仮にもうちょっと尺があって肉付けをされていたとすれば、また大分違った印象になりそうな作品です。
試し読み 小学館eコミックストア
肝臓癌により余命半年を告げられ、自ら死を選ぼうとしている武田の元にかかってきた一本の電話。それは14年前に行方不明になった娘の遺体が発見されたという報せだった――
15年の時効(1999年当時)と自らの死期というふたつのタイムリミットに追われながら、彼は過去の事件の犯人を捜し始める。
ほとんど不可能事のような捜査をある程度リアリティを持って描く展開が見事です。死病に侵された男が最後の仕事に臨むというストーリーラインも黒澤明の「生きる」ライクでエモい。娘の行動が不自然なのが玉に瑕。
1999年~2000年「ヤングマガジンアッパーズ」で連載、アッパーズKC版で全3巻で完結。他に文庫版(全1巻)、新装版(全2巻)があります。
試し読み eBookJapan
なんも知らずに読みましたが面白くてびっくりしました。
他人の嘘を聞き分ける能力を持つ少女・浦部鹿乃子と、圧倒的な観察力と口車を持つ探偵・祝左右馬が出会い、様々な事件に巻き込まれていく超能力系変格ミステリです。
時代設定は昭和初年。大仰な事件もありますが、大したことの起こらないエピソードもしっかり構成されてて楽しいです。18話とか好きですね。
「なぜ調査をしないといけないのか」「なぜそんな行動をとったのか」といった動機面も違和感がなく、小説で発表されてもある程度の人気を獲得した作品だと思います。恋愛要素は控えめ。
試し読み 白泉社公式サイト
「事実を重視し、人の心を伸ばさない」として、理系科目と少年犯罪の増加が関連するとされる世界――
反旗を翻した数学テロ組織が用意する難問に立ち向かうことができるのは、秘かに敷衍された洗脳ソフトを見ておらず、数学に天才的な能力を発揮する中学2年生の浜村渚しかいない! という恐ろしく強引な設定でスタートする数学ライトミステリ。
渚ちゃんぬぼ~っとしてますが、読んでると段々かわいく見えてくるので不思議。
提示した問題が後のストーリーで生きてくる構成が上手く、解決方法も気の利いたものが多いです。全10巻、「続きは小説で」みたいな感じで完結。
誰もが景気の泡の中で狂っていた90年代初頭、キバヤシ先生が人類は滅亡するんだよ! とか叫んでた時代……。
課長時代の島耕作はある日バーで女と知り合い、一夜のアバンチュールを経て翌朝ベッドで目を覚まし――自分のネクタイで首を絞められた女の死体を発見する。
そういえば、昨夜女に首を絞めてくれと頼まれた気がする。いや、しかし、まさか……!?
というかこの世界観と殺人事件が微妙にミスマッチで、日常の中で突然死体が現れるショックみたいなのが逆にリアルに表現されています。一冊完結ですが「ちゃんとしたものを読んだ」感ありますので、島耕作ファンも失望はしないかと。
試し読み モアイ
国の極秘更正プロジェクトとして、殺人を含む11人の元凶悪犯を受け入れることになった魚深市。特殊な教育により「更生」した彼らはそれぞれ整形され名前を変え、地域社会へと溶け込んでいく――はずだった。
次第に連絡を取り合うようになる受刑者たち、その過去を嗅ぎ回る記者、顔を隠す奇祭の開催、かいま見える暴力性、さらにプロジェクト自体にも不審な点が? ――増殖する謎と常駐するサスペンスで読者を惹きつけ続ける閉鎖型サスペンスミステリの傑作。
試し読み 講談社コミックプラス
大量殺人犯の息子として、それでもまっとうに成長し、妻を得た田村心。彼は我が子の未来のために、負の連鎖を断ち切るべく事件の真相を探り始める。しかし現場の北海道・音臼村にたどり着くや否や、周囲は霧に囲まれ、彼は事件直前の1989年にタイムスリップしていた――
試し読み モアイ
女性教師への憧れを取り返しのつかないレベルでこじらせている大学1年生・片瀬大は、いきなり自分の家に張られた暗号文の謎を解くため、その道の専門家である准教授・安堂鍵乃子を紹介される。女っ気はまるでなく、論文に集中し力尽きて床で寝るが、暗号を前にすると誰よりも生き生きとする「暗号先生」に片瀬くんは段々と? 暗号専門ミステリ・ラブコメ。
謎解くたびに見開きでコスプレグラビアページが入るセンスはまあ……口挟む筋合いもないですが、いるのかこれ。「ヤングエース」で2020年~連載。
試し読み ニコニコ静画
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