知ってる?こんな噂があるんだけど……。妖怪・都市伝説・呪術などオカルト系おすすめマンガ

なんでも妖怪のせいにしてしまう我々が(略)


とりあえずひとまとめのオカルト廻りカテゴリです。都市伝説の話するとなんとなくお正月にふさわしい感じがするのは、日本の懐かしのテレビ文化を象徴してますね。
都市伝説は裸足のポールとかトトロが死後の世界とかの考察も含み、あと人間が犯人のこともあるので、様子見てカテゴリ分けたほうが良さそうであれば分けます。
幽霊は別カテゴリで扱いますが、霊能者が主人公はこっち。オカルトは特に国籍問わず、ただクトゥルフ神話とかは明らかにここではないわけで、そのへんは管理人の勘とニュアンスで処理されます。
作品数多ければヴァンパイアやゾンビみたいに単体で独立しますが、その可能性を感じるほどピンで人気ある妖怪はほとんどいないですね……河童か天狗ぐらい?

【オススメ】うしおととら(藤田和日郎)

あるきっかけから「獣の槍」を手にした蒼月潮(うしお)と、槍に封印されていた雷獣とらが、様々な妖怪と戦う冒険ホラーアクション。道具や能力の力を借りる時に身体的に変化する描写はマンガに多くありますが、獣化すると髪の毛が伸びるというビジュアルは非常に鮮烈で、人から一歩はみ出したうしおの状態を一発で読者に印象づける力があります。人の魂を削る獣の槍は、やがて彼の人間性を侵食していくことに……。

獣の槍の攻撃に特化した流線型と熱血漢なうしおの少年性、ギラギラしたキャラクターの目とかさかさした質感を持つ妖怪、さりげないデザインセンスの高さ。テンションの高い内容と残酷描写、映画的な文法を駆使したシチュエーションと陰のある表紙の目もくらむほどのコントラスト。ある意味ベタなマンガですが、それを推進するパワーとセンスが普通じゃない。

藤田先生だとやはりこれを推さないと始まらない超有名作。台詞廻しやギャグはこの頃から相当独特で、巻末のよくわからんクイズも無駄にサービス精神豊富で楽しませていただきました。

試し読み 小学館eコミックストア

呪術廻戦(芥見下々)

異常な身体能力を持つが諸事情によりオカルト研に所属する虎杖悠仁は、ある日学校で小さな箱に入った「呪物」を持ち帰る。その残穢に引き寄せられた「東京都立呪術高等専門学校」の伏黒恵とともに、虎杖は学校に集まる呪いに対処する必要を迫られるが、呪いには呪いでしか対抗できないという制約により身体能力だけでは太刀打ちができない。そこでとったある行動により、虎杖は人間と「呪い」の間の争いにおけるキーパーソンになるのだが――邪道感あふれるホラーアクション。

冨樫義博先生の演出の影響が強く見られます。主人公より悪役のほうが魅力的という性質も引き継がれてるような気も。
どっちかというと地味めな絵ですがそれを補うように設定や展開が奇抜。

呪術廻戦

第1話”両面宿儺”(1巻収録)より


1~2巻程度でジャンプの中でも上位の人気を獲得したようで、話運びの盛り上げかた、刺激性は見るべきものがあります。毎回見せ場が何かあって、たまにOB気味な飛躍をしつつも、それによって得られる飛距離で読者を魅了する。
この作品の前に「東京都立呪術高等専門学校」というプロトタイプが連載され、単行本としては呪術廻戦の0巻として発売されました。主人公は本編にも登場する乙骨憂太。

試し読み S-MANGA

虚構推理(原作:城平京 漫画:片瀬茶柴)

片目と片足を魑魅魍魎に捧げ、彼らの「知恵の神」となった少女、岩永琴子。そんな彼女の恋人(?)桜川九郎もまた、ある理由により怪異に恐れられる存在だった。
新たに生まれた都市伝説「鋼人七瀬」を解決することになったふたりだったが、ただ力押しで倒せる相手ではなく、その発生にも謎が多い。噂話から生まれた怪異を消し去るには、その噂を嘘で上書きすればいいのでは? ――伝奇妖怪ものの設定に多重解決でっち上げミステリを組み合わせた、第12回本格ミステリ大賞受賞作のコミカライズ。

虚構推理

第10話”七瀬かりん物語”(5巻収録)より

城平先生はいろんな漫画の原作やってますが、とりわけ「スパイラル 〜推理の絆〜」で有名な方です。
漫画版の連載は2015年~で掲載紙は「少年マガジンR」。原作未読。まともなミステリではないですが推理展開は変態的で非常に好み、4巻までと前振りが長いですが、5巻から俄然面白くなって6巻で原作小説分が完結します。なので読むときはそこまでまとめて読むことを勧めます。


強く感じる欠点は九郎くんのキャラとしてのつまらなさと話の無駄に未確定な雰囲気。主人公ふたりがほんとに付き合ってんのかもよくわからないし、なんで付き合ってるのかもよくわからないまま話が進むので、なんかトリックがあるのかずっと疑いながら読んでました。九郎くんが戦う理由も腑に落ちないです。
「少年マガジンR」で2015年~連載。7巻以降は続編のコミカライズで、短編~長編がいろいろ読めます。

類似作 毒入りチョコレート事件(小説、アントニー・バークリー)

試し読み Renta!

真夜中のオカルト公務員(たもつ葉子)

夜間地域交流課に配属になった新宿区役所職員の宮古新は、自分が「アナザー」と呼ばれるオカルト的な存在を視る才能を持つことを知らされる。さらにアナザーの声を聞くことができる、それ自体が都市伝説のような「砂の耳」の持ち主でもあることが明らかになると、彼は次第に人とアナザーの間の重要な橋渡しとして機能し始めることになる。

じわじわ面白くなり、5巻ぐらいまでいくとバッと華開く感じがしました。人とは全くちがう価値観を持つアナザーの描写は「臭く」なく、新や他の職員も変に気取ってなくて、読者の身近な価値観の中で話が進むので非現実的な現象や思想に触れた時にキャラクターと同じ違和感や恐怖を感じることができます。

真夜中のオカルト公務員

第15話”砂の耳と新人の根性②”(4巻収録)より


当たり前のことのようですが、オカルト系はこのへんのバランスが難しいのか「ズレ」を感じることがままあります。それがこの作品はあまりない。
登場するアナザーは和洋折衷、都市伝説やなかなかシブい趣味の神様も登場します。
発生する事件に比して感情表現は抑えめで、無闇に読者を感動させようとしない姿勢は上品と言えば上品。表紙の落ち着いた色使いといい、全体的に低体温な作風です。

試し読み コミックNewtype

ダンダダン(龍幸伸)

UFOを信じない女はUFOスポットへ、幽霊を信じない男は怪奇スポットへ――そして男は妖怪に取り憑かれ、女は異星人に誘拐される。悲劇的な結末は避けようもない状況だが、しかし男が怪奇の力を伴って異星人に襲いかかるなら、物語はどこへ転がり込むのか? スラップスティックオカルト闇鍋変身ラブコメ。

ダンダダン

第2話”それって宇宙人じゃね”(1巻収録)より

引き算を知らない設定は奇抜ですがネジの外れた感じはなく、呪術やチェンソーマン的なものを期待して読むと肩透かしかも(逆に言うと少年誌らしい作風)。丁寧な作画で描かれるゴリゴリのアクションは魅力的ですが、まだ発展途上な印象で評価しづらい。


ジャンプ⁺で2021年連載開始。龍先生はキャラクターが走る絵を描くのが好きっぽく、「速さ」の表現の多彩さにアニメーター的な気質を感じさせます。

類似作 スプリガン(原作:たかしげ宙 漫画:皆川亮二)

試し読み 少年ジャンプ⁺

強制除霊師・斎(監修:斎 漫画:小林薫)

自称まっとうな仕事について堅実に生きる小市民、斎。しかし彼女には他の人にはない、霊を視て天界へ誘い、場合によっては強制的に祓う霊能力が備わっていた。その凄腕を噂される彼女はマンガのネタにされ、読者を中心に幅広く霊能相談が舞い込むことに――「あなたが体験した怖い話」に好評連載された「実録」霊能師マンガ。

作中で口癖のように言われる通り「別に信じなくてもいいけどね」という感じで、本書の内容を真に受けるかどうかは読者しだい。とはいえ小林先生の手腕もあった上で、そんなこともあるのかも、というリアリティがあるのは確か。強制的に霊を連行(本当に両腕抱えて連行したりする)するような力技だけでなく、相談者自身の持つ性格や生活習慣を変えることでトラブルを解決することも結構あって、割とそういう話が面白かった印象です。

オカルト漫画としてはあまり怖くなく、意外にコメディテイストが強かったです。
斎先生は2018年10月7日に逝去され、その顛末はスピンオフ「霊能者ですがガンになりました」にまとめられています。話のストックがあるようでその後も連載は継続。各話完結型で話のつながりも弱く、質も安定しててどこから読んでも問題ないです。僕は最初の「怨念旅館」と話のバリエーションが豊富な「自殺女房」が好き。

試し読み ぶんか社公式サイト

【オススメ】怪物事変(藍本松)

泥田坊と呼ばれ虐げられる少年・夏羽はある日、村を訪ねてきた探偵・隠神に屍鬼という「怪物(けもの)」としての己の正体を告げられる。自らのうちに潜む乾きの正体を知った彼は、隠神に自分の両親の捜索を依頼するも、流れで怪物専門の探偵稼業を手伝うことに――ジャンプSQで好評連載の東京妖怪アクション。

怪物事変

2.”蟲”(1巻収録)より

主人公とヒロイン? の変なかけあい、仲間の少年たちの成長といった少年マンガっぽさとエグさ、キワドさがいいバランスで両立しています。ポップな絵柄と明るさの陰で、種馬やカニバリズムがダイレクトに登場してんですよね……。


他作品のオマージュが多いのも特徴で、晶と結はまんま瞬と一輝。工場編好きなんですが、あれは鬼滅とネバランへのアンチテーゼのような気がします。冷静に巌のポジション見ると「お前が言うか」ってなりません?
「ジャンプスクエア」で2017年~連載、2021年アニメ化。

試し読み ジャンプSQ公式サイト

妖怪の飼育員さん(藤栄道彦)

大きな街なら必ずひとつはあるような、ありふれていて親しみのある定番スポット、妖怪園。新人飼育員としてそこに勤めることになった鳥月日和とその上司・同僚、さらにだんだん妖怪たちもレギュラー化し、笑いあり皮肉ありのにぎやかな妖怪園の一日が今日も幕を開ける。

藤栄先生お得意の連作短編スタイルで、すねこすりや鎌鼬といったかわいいところから、つるべ落としや蟹坊主のおどろおどろしいところまで色んな妖怪の生態がわかりやすく語られます。個人的には猫又の話(2巻)が好き。

妖怪の飼育員さん

#32″鎌鼬”(3巻収録)より


「さとり」では主要キャラの暗部をさらけ出していて軽く痺れました。明るく処理されてますがこういうことをサラッと出来る皮肉な作風がイイですね。古臭さを象徴するような妖怪と対比するようにして現代の問題を描く社会批判、時事ネタ、パロディなんかも多いです。

試し読み くらげバンチ

【オススメ】のんのんばあとオレ(水木しげる)

昭和六年、喧嘩と夢想に明け暮れた黄金の時代。そこにはまだ妖怪が身近に存在する日本の姿があった。水木しげるの少年時代をベースに、「のんのんばあ」や他の少年たち、幼い恋の思い出を綴る自伝的エッセイコミック。

のんのんばあとオレ

“のんのんばあ夫妻”(1巻収録)より

「漫画におけるカンヌ」と呼ばれるアングレーム国際マンガフェスティバルで最優秀作品賞を受賞したマンガです。別に権威主義に走ろうというのでもないし、相当偏った賞だとも思うんですが、これに関しては納得できるレベルです。水木しげるの中でも最上級に面白い作品ではないかと。

絵のすばらしさは言うに及ばず、徐々にレギュラーキャラと化す小豆はかりなんかが実にいいキャラです。出てくる人全員味があって、読んでると浸み出すような楽しみがある作品でした。

試し読み 講談社コミックプラス

平太郎に怖いものはない(スケラッコ)

稲生平太郎、16歳、お好み焼き屋。彼のもとにはなぜか毎日、妖怪たちが手を変え品を変え現れてはちょっかいをかけていく。しかし平太郎に怖いものはない――本当に?

トーチのweb連載では各回手描きアニメが埋め込まれています。kindleとかでは動かせないものを連載で公開してるわけであまり見ないサービス。一話だけとかなら時々見ますが、毎話動くマンガを読んだのははじめてです。

電子書籍と聞いて最初にイメージしたものを差し出されたようで、読んでて嬉しくなりました。7/3の動きが好き。
ストーリーは広島の妖怪譚「三次実録物語」をベースにしているそうです。上下巻で完結。

試し読み トーチweb