中編も混じってます。そこ分ける必要は別にないかなーと思うんでそうしてるんですが、「おれは30P以上の話なんて読みたくないのだ」という人もいるかもしれないので、おおまかに収録作を併記しています。例えば2作品しか収録されてない本であれば、大体お察しいただけるかと思います。
短編集である以上収録ジャンルはバラバラなことも多いですが、数も多いので、「~寄り」ぐらいのニュアンスで一応ジャンル分けしています。
表題作「イグアナの娘」は家族の物語。一種の虐待による醜形恐怖をイグアナに例えた作品で、今見るとちょっと大島弓子チック。ドラマ化されたのでそちらをご覧になった方も多いと思います。
異論はあるかと思いますが、絵に関してもこの時期が一番いい気がします。
収録作は「イグアナの娘」「カタルシス」「午後の日差し」「学校へ行くクスリ」「友人K」、小学館文庫版ではこれに「帰ってくる子」が付きます。お気に入りはやはり家族の確執を描いた「カタルシス」。作者自身の体験を反映しているそうです。
夢の中に現れた宇宙人の宇さんは、目を醒ましても枕元に座っていた。あらゆる物体に化け、奇妙な超能力を操る宇さんのおかげで何不自由のない暮らしを手に入れた主人公だったが、周囲から見ればそれは狂気への傾倒でしかなかった……。(”ロングロングケーキ”)
大島先生の中では少し難解なほうですが、僕は非常に好きな短編集です。
収録作は「いちょうの実」「ジギタリス」「秋日子かく語りき」「ロングロングケーキ(終わらないケーキ)」他3編とあとがき。
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厳格で口うるさい父の教育方針のもと、失敗を過度に恐れ、外の世界でうまくやれなくなっていく岡村響子。やり直せるチャンスはあった、しかしそうはできなかった彼女がついに「壊れる」きっかけとなったのは――(”天人唐草”)
表題作は自薦作品集やスペシャルセレクション、文庫全集でも書籍タイトルとして使われる山岸先生の代表作のひとつです。単行本初出は下記リンクサンコミックス版で、他に「キルケー」「夏の寓話」「悪夢」を収録。
が、僕がたまたまこの話を他人事として読める身の上だからそう感じるだけで、読者によってはかなりダメージを受ける可能性があります。30年前の作品ですが、今読んでも古びてないのはそのあたりの普遍性でしょうか。個人的には「キルケー」も結構好き。
いつも他の人の分の仕事まで押しつけられ、数少ない残った男子はやる気がない。見回りにきた先生も気付いているだろうに何も言わない、褒めてもくれない、叱りもしない……みんな「根はいい子」だし、「それぞれ事情がある」から、仕方ない。でも、事情ってなに? なんで私だけが真面目に掃除当番をやっているんだろう……?(”掃除当番”)
真面目ゆえに追い詰められてしまう少女の悩みを描く表題作他、若者の心理を描く8編を収録した武富健治初期短編集。
投稿作品や自費出版作が多く、初出は「ビッグコミックオリジナル」増刊他いろいろ。シリアスな作品が多いですが、その中で思いがけないブラックユーモアが飛び出てくる「まんぼう」も割と好き。他「ポケットにナイフ」「シャイ子と本の虫」「勇」「康子」「8月31日」「カフェで」を収録。
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大友先生の比較的初期作品。ニューヨークで空手道場を始めた薄汚いおっさんの、それなりに騒がしくたまにバイオレンスなビンボー暮らしを描いた作品で、順序が逆なんですが吉田秋生先生とか好きだとグッとくると思います。あと昭和のタカりまくりタコ部屋貧乏学生ものが好きな人もおすすめ。表題作、「East of The Sun, West of The Moon」「聖者が街にやってくる」「A荘殺人事件」を収録。
往年のジャズマンの訪日を描いた「聖者が街にやってくる」が、渇いた哀愁があって僕は好きです。
かつてプロ野球を目指した山賊・島田と、そのライバルだった警察官・亀井。ふたりは再び山中であいまみえ、お互いになぜプロを諦めたのかとなじり合う。(”若い山賊”)
4コマ作家のイメージが強い吉田先生ですがストーリーものも描いていて、こちらの短編集では夢や戦いに青春を捧げたりするちょっと(大分)変な話が色々と読めます。
「若い山賊」「息子の石」「すこやか赤子バトル」「ビバ! とかげ相撲」「めかけ」他4コマ「はちみつ」と徳育話材百選を収録。徳育話材は昔の童話? のコミカライズらしいんですけど、ギャグのようなナンセンスのような、不思議な世界観があって面白いです。
中編「象の怒り」と2冊ワンセットの文庫版もあって、電子書籍化もされてるのでそっち貼っときます。
自信満々で毒舌家の茜は、次第にクラス内で孤立していく。表面上彼女と仲良しのマナも、彼女が悪口を言われているのを聞いて秘かな喜びを感じ、また陰で茜に悪口を言われていることを薄々察知している……。(”私の嫌いなおともだち)
↑だけはちょっと毛色が違いますが、ややライトめの百合系短編集です。「私の~」2作他、「Little by Little」「誘われ温泉」他4作を収録。
なぜか読んでて「やおい」の語源を思い出しました。「山なし・オチなし・意味なし」でやおいなんですが、ある種それに近いものを感じます。
作中で「人指し指より薬指が長い人は同性愛的傾向がある」みたいな雑学が紹介されてますが、理系だとか、リスクをとりたがるタイプだとかも聞いたことがあります。実際どうなんでしょうね?
身寄りのない素直な点子と恋に落ち、晴れて結婚生活をスタートすることになったもの書きの八朔。ふたりの幸福なアパート暮らしは、しかしあまりに常識知らずの彼女に辟易したことから次第に距離が開き始める。帰らない夫の好きな薔薇を買いにいった点子は、それが一輪400円もすることを、すぐに枯れてしまうことを知る――(”薔薇だって書けるよ”)
表題作、「オリジン・オブ・マイ・ラブ」シリーズ3作、「日曜日に自殺」「遠い日のBOY」「晴田の犯行」を収録。処女作品集ということになります。「楽園」掲載分および同人発表作、描き下ろしを収録。「晴田の犯行」は「コミティア」で読書会投票1位を獲得。
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「イントロダクション」「ゆみのたましい」「夫のイヤホン」「青間飛行」収録(いずれも2016年「Feel Young」掲載)。表紙はなんとなーく80年代ですが、中身はそうでもないです。
個人的には天才シンガーへのインタビューを引き継ぐことになった若手音楽ライターを描いた「青間飛行」が最も好きです。
恋愛と青春の闇を描くスタイルですがタッチは軽め。一枚のアルバムのような構成を感じますが最後のページは開放感があり、収録順序的にもこれがベストのような気がします。
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仕立屋の丁稚ジムが迷い込んだのは、天井からメイドと執事が突然降ってくる豪華な館。深刻な旦那様不足のお屋敷のために、彼らはジムに旦那様となってもらうよう打診するが……。(”お屋敷へようこそ旦那様!”)
メイドさんとバニーさんをメインに、森先生の性癖が全編にわたって横溢する短編寄せ集め。
収録は「フェローズと私(「Fellows!」2011年発表)「すみれの花」(「月刊コミックビーム」2004年発表)などの他、他サイン会ペーパー、未発表カットなどいろいろ。全1巻で完結(短編集)。外務省に掲載されてるマンガも面白かったのでついでに紹介しときます。
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酔った同僚を連れた妙な男が道をやってくる。仕方ないので部屋にあげることになったが、ふと妙な男が「水道が出しっ放し」だと呟くのを聞いた。部屋の中を見てもいないのに――(”夜とコンクリート”)
表題作、「夏休みの町」「青いサイダー」「発泡酒」を収録。
個人的には「青いサイダー」が好きで、絵的にもこれだけちょっと異質です。幼い「僕」の前に現れた友人「シマさん」は、少し様子がおかしくなっていた――というような話で、ちなみにこのシマさんはビジュアル的には無人島です。これがなんなのかはちゃんと説明されるんですが、狭い無人島(シマさん)の上で子供がくつろぐビジュアルに既に価値があるなーと思う次第です。
試し読み 詳伝社特設サイト
母がフリマで買ってきた、かわいいけど着るとちくちくする300円のセーター。虫食い穴ができたことをいいきっかけに着なくなったそのセーターは、祖母が穴を上手に繕ってくれたことで捨てられない宝物に変わった――(”みづくろい”)
どきっとする言葉遊びで読者を驚かせる表題作、ハートフルな「みづくろい」の他、こたつやクリスマスツリーの擬人化(「おこったちゃん」「みんなの、大きなかわいい子」)、ちょっと切ない幽霊譚? の「同居もん」に「空に落ちる」、「よいお菓子わるいお菓子」を収録。
個人的に一番好きなのは最後の「よいお菓子わるいお菓子」。中核部分がすっぽり抜けたパズルみたいな話で、ヒロインの周囲にあるいくつかの問題がそれぞれに別方向を向いてるふしぎな構成。しかしだからこそ、「片付けなくてはいけない膝の上のお菓子」が暗示する説明できないヒロインの感情がリアルに胸に迫るという変な魅力のある短編です。ちなみに谷先生のデビュー作でもあります。
収録作は「月刊flowers」および「凛花」、その後身である「増刊flowers」が初出。
試し読み 小学館公式サイト
霊が出るといういわくつきのビルを買い取った堅物社長アーノルド・マクファーソン(アーニー)。不動産屋を帰し、ひとり佇む彼の前に現れたのは、若かりし頃の姿をとった祖父グレアムだった。他人には見えない祖父だったが、アーニーのことを密かに慕う秘書・ミルドレッドだけは例外で――? 欧米を舞台に紡がれる、ハイセンスでどこかユーモラスな5つの物語。
収録作品は表題作、「予期せぬ出来事」「南の果てのロマンス」「夢の庭の未亡人」「イントロダクション」、文庫版だともう何作か付くようです。1985~1988年「プチフラワー」初出。基本的にはどれも洒落た風情のロマンスですが、大富豪の第二の青春を描いた「イントロダクション」も哀愁漂う佳品。
試し読み コミックシーモア
新しく引っ越した新居で、彼女が指差した空間。誰もいないそこには、僕には見えない誰かがいるという。しかしあんまり気にしないで始まった「ふたり」暮らし。意思疎通手段は、風もないのに揺れるカーテンだけ――(”ボクん家の幽霊”)
flowers期待の新鋭が綴る、心の隙間を撫でるような短編集。
少しだけトリッキーなこともしてますが、シンプルにいい話が多いです。前に何か別の作品にも書いたかもしれませんが、ヒューマン上手いのは作家の特質として「選ばれてる」な、と感じます。僕にはこういう話は上手く語れない。
題材も幅広く、色んなものを描けそうな作家だと感じます。
試し読み 小学館公式ページ
なにかを好きになることは、バカにされ、笑われるほど悪いことなのか? ――周囲の言葉に傷つきながらも夢を追いかけるバレリーナ、憧れの探偵を目指す少年のジュブナイル、押井守作品のキャラクター評……「ハチミツとクローバー」連載開始前後、2000~2004年の出版社を越えた作品を収めた、心温まる短編集。
あえて難点を言えば、100ページぐらいしかないです。スペシャル描き下ろしとかそういうのはなく、ちょっとボリューム不足に感じるかもしれません。
でもそこで足しちゃうと「初期」作品集じゃなくなっちゃうのでどうもね……。デビュー当初でこのクオリティということで、やっぱり才能ある人なんだなー、と思います。
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魔法少女はトイレで着替えなんかしないし、ステッキを手作りもしない。コスプレなんて言葉で片付けて欲しくはない、それは彼女のかなわない夢だった。(”このかけがえのない地獄”)
oimo先生が名義変更して送る短編集。表題作の他、「死んでいる君」「4番目のヒロイン」「黙れニート」「僕は彼女の彼女」を収録。
試し読み コミックシーモア
真っ青な海と砂色の海岸の間に延びる、黄色い境界線。それはどこかの島に打ち上げられた、養鶏業者の捨てたヒヨコたち。病弱な友人・曽根はその残酷な背景を知りつつも、鮮やかな色彩に目を奪われ、こんな場所に行ってみたいと呟く――(”黄色い海岸”)
「花の男」「禁色」「鳥のはばたき」「黒い羊」「ストレート」「ブンタ」など収録。BL風味のコメディからホラーまで、特有のセンスで彩られた12篇の短編+4コマ・エッセイ。
初出は「眠れぬ夜の奇妙な話」「ネムキ」「ジェネラス」などで93~95年発表の作品が中心。なんとなく新井素子とか連想しながら読みました。
なお、本作の収録作は「ナバナバパラダイス 犬童医院繁盛記」1~3巻にもほぼ全て収録されています。「プリティ★ピンチ」と「コチコチのかわいこちゃん」はここでしか読めないようなので、買う価値ないとも言えないですが。
試し読み コミックシーモア
卒業しても4人で集まろう――そう約束したのに、彼女は交通事故で死んでしまった。残された蓮見他二名は約束の場所へ出向き、彼女のことを振り返る。ところがその場にはなんと彼女も参加していた。ただし、幽霊として、蓮見にしか見えない形で――(”ミッドナイトブルー”)
収録作は「箱の中の思い出」「夢にも見たい」「今夜会う人」「ミッドナイトブルー」他3篇。
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院生あがりで娘みたいな年頃の女子に突然告白されて、戸惑いを隠せない助教授の小此木(四十路)。積極的な彼女の態度に徐々に心を許していくが、ふと我に返った彼は20歳近い年齢差に躊躇してしまい――(”きっとすべてがうまくいく”)
蠱惑的な女性描写と豊富なアイデアで勝負する、甘詰留太詰め合わせ短編集。
甘詰先生の作品だと僕はこれ書いてる時点で「ナナとカオル」だけ読んだことがあって、あれに一番近いのは「ぼくの○○ペット」だと思います。「ふたりでもひとりエッチ」は馬鹿馬鹿しくて割と好き。他「星の王女さま」と後書き、別冊の後日談を収録。
試し読み コミックシーモア
自分の心を占める「何故」を究明することで、あらゆる意味でパフォーマンスを上げてきた「天才」を自負する樹木キリンジ(15)。そんな彼の心を今占める「何故」はすなわち、不愛想な同級生・凛堂紅姫が何故自分を崇拝しないのか。彼女のことが心を離れないキリンジに、幼馴染のさくらは「それは恋だよ」とアドバイスしてくるが……(”禁断ワンダーラバー”)
3作共通して主人公が問題発言をするシーンがあり、このへんが中山先生の味であり欠点でもあるなー、と思う次第です。とりあえず主人公が応援したくならない。
初出はワンダーラバーが週刊ヤングジャンプ増刊・ミラクルジャンプ(2011年)、他は週刊少年サンデー及び増刊(2008~10年)。
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OL、店員、大学生――都会の街を歩く大人の女たちの様々な恋の形は、美しいけれど時にまるく、時にいびつ。「ルーレット」「mio post」「マネキン」「baby you」他、17粒の宝石のようなガールズ・ラブコレクション。
最期の「the OL cafe」は会社風の企画ものカフェを描いた妄想作品で、無駄によく考えられていて楽しい作品です。オシャレな世界観もいいですが、後最後にこういうしょうもない感じのやつが来るとなんとなく嬉しい。
試し読み ebookjapan
いつも突っ張っている女子高生、はるこ。不敵な男子稲荷。彼らは他の生徒とはやや考え方が違い、そのために少し疎まれている。
そんなある日、ふたりを含む数人の高校生と教師が、テロリストによって教室に監禁されてしまう。彼らは監禁状態からの脱出を目指そうとするが、次第に生徒対テロリストという構造は、違う対立構造へとズレこんでいく――(”踊る教室”)
田村節全開の表題作の他、「ぼくらの村には湖があった」を収録。もともと好きな人はもちろん、「7Seeds」が長すぎてちょっと手が出しづらいという方にもおすすめ。
兄貴分が任されていた多国籍アパートの立ち退きを命じられたヤクザ者、一太。あらゆる手を使って住人たちを追い出そうとするが、敵もさるものそう簡単には従わない。
さらにアパートに幽霊が出るという話が出てくると、次々に妙な現象が起こり始め、次第に状況はスラップスティックに、画面は今敏のアニメっぽくなっていく。(“ワールドアパートメントホラー”)
話そのものが面白いかというと正直微妙ですが、昭和の気風とカオスを感じさせる凄い作品です。「週刊ヤングマガジン」に1987年~1991年掲載した作品を収録(表題作、「お客様」「わいら」「JOYFUL BELL」)。
夜の闇に潜み、人の血を啜る殺戮者――どこか余所から現れた侵入者を察知した「鬼」たちは、協力してその排除にあたる。だがその動きはどこか不自然で、何かを気にしているように見える。彼らよりも恐ろしい何かを――(”過狩り狩り”)
「鬼滅の刃」プロトタイプにあたる「過狩り狩り」の他、「文殊史郎兄弟」「肋骨さん」「蠅庭のジグザグ」を収録した初期短編集。
個人的に好きなのは「文殊史郎兄弟」。「蠅庭のジグザグ」は主人公も敵も小物なのが凄くいい。オチが全体的に少年マンガっぽくないです。
JUMPトレジャー新人漫画賞佳作作品および「少年ジャンプNext!」「週刊少年ジャンプ」2014~2015年発表作品を収録。
試し読み S-MANGA
高額の報酬につられて引き受けた家庭教師の仕事。しかしそこで待ち受けていたのは、人を人とも思わない恐るべき双子だった――表題作「フロイトシュテインの双子」3作及び後日談、「森の中の家」「とむらいバレンタイン」「星空パルス」「恋の神様」を収録。
最後の一コマでいきなり別ジャンルになって終わる星空パルスが割と好きだったりします。
試し読み 集英社マンガネット
いがみ合う山国と海国。しかしその国境に一匹の竜が巣を作った。近づくと喰われるその道を、なぜかひとりの商人が越境してやってくる。敵国の人間どうしにも関わらずそこに交流が生まれるが、しだいに竜の巣立ちの時は近づき……。(”竜の小塔”)
新解釈ファンタジーの名手・九井諒子がその名声を決定づけた、瑞々しい発想に満ちた短編集。
一作一作の構成が上手く、いずれも良質な後味を残します(「子がかわいいと竜は鳴く」は若干納得いかないラストですが)。他、「人魚禁漁区」「わたしのかみさま」「金なし白祿」を収録。
試し読み KADOKAWA公式ページ
異端の漫画家どろり先生の初短編集です。webメディア「オモコロ」内で発表済の短編13篇他、描き下ろし「女性博士と夏休み」「低級文化禁止区域」を収録。
収録作の中だと「子供に見せたくないユーザーレビュー」が一番好きで、マジで名作です。毒もハンパないですが。
今後も単行本に入らなそうなところをチョイスすると、残像くんとか名犬ラッキーとか文雄くんは広告じゃないとかも結構好きです。
砂漠化した世界で身動きのとれないロボットと少女の出会いを描く表題作の他、「ススメサイキック少年団」「なげなわマン」「カウントダウン」他3篇収録。初期作品集ですが既にある程度完成されています。SF作品が多く、ミステリー要素はほとんどありません。
ゲーム会社主任にしてマニアの尾崎が家に持ち帰ったディスクにまぎれこんでいた「説得ゲーム」……起動すると拡張現実によって描写されたのは、ビルの屋上から今まさに飛び降りようとするひとりのOL。説得に失敗すれば彼女は落ち、ゲームオーバー。尾崎はゲームの製作者をスカウトするために、細い糸をたぐるように調査をすることになるが――(”説得ゲーム”)
表題作は「ビッグコミックオリジナル新人コミック大賞増刊号」(2000年)、「キオリ」「NOBODY」は「Hiミステリー」2004~2005年掲載。他二作描き下ろし。
試し読み コミックシーモア
人には、あるは蛙には、世界はどんなふうに見えているのか――? ウムヴェルト=「環世界」をテーマとして「ディザインズ」の原型となった表題作の他、「ガルーダ」「鰐」「魚」「ツチノコ」他5編を収録した奇妙で豊かな未確認生物系短編集。
試し読み 講談社コミックプラス
てなわけでおすすめ短編集でした。短編が面白い作家は長編も面白い……ことが多いので、気に入った作家を見付けたら他の作品もぜひどうぞ。
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