怖い怖いも好きのうち。恐怖が快感に変わるおすすめホラーマンガ傑作選

おかしいな……こんな記事を書いた覚えはないんだが……

リアルに更新しなさ過ぎて↑みたいな状態になっていた、怖いの苦手な管理人チョイスのホラーマンガどもです。ちゃんと更新する気はあるんですけどね。怖いんだもん。

さて、ホラーは音があって動いてるほうが断然怖くしやすいと思うので、基本的には映画やゲームのほうが向いてるジャンルだと認識しています。
例えば「ジョーズ」のテーマを流しながら、ハァハァ息遣いの荒いうら若い女性がそろそろと忍び足でドアに近付き、ノブに手を伸ばしてゆっくりと捻る光景を後ろから舐めるようなカメラワークで撮るだけで映像なら怖くできるわけです(そこが自宅のバスルームであろうと)。


なんですが小説でいえば心理描写や文字による情報量、マンガではそれに加えて「絵であること」という武器があります。やりようによっては動画とはまた違う恐怖を演出することができるということを証明するマンガを集めたいな~と思う次第です。
「あんまり怖くないホラー」でも面白いものはあるので、怖いことは第一条件ではなかったりもしますが。

【オススメ】洗礼(楳図かずお)

かつてその美貌により映画界を席巻した大女優・若草いずみは、加齢によるしわやたるみ、浮き出る醜悪なしみのために「先生」に救いを求める。
そして下された結論とは、血を分けた娘を産み、彼女に「文字通り」己の夢を託すことだった……漫画史に残る戦慄のサイコホラー。

洗礼

文庫版2巻より

とりあえずホラーで何か一作ということであれば僕はコレです。
ビジュアル的な怖さで勝負していた楳図先生が、一転心理的な恐怖を仕掛けてきた意欲作。たしか「漂流教室」の後にこれを読んで、「こんな知的な作品も描くのか」と思った記憶があります。

描写のエグさ、繊細でおぞましい画面、衝撃的な結末で一読忘れられない作品となりました。おすすめです。
手に入りやすいのは文庫版ですが、解説が豪快にネタバレしてるので注意。

猫で語る怪異(TONO)

TONO先生自身、その知り合い、知り合いの知り合いとかから集まった実話怪談の寄せ集めということで、少しでも怖くなくなるようにと人間を猫に置き換えた擬獣化ホラーエッセイ。

まあアレですよね。薄まってない。普通に怖いです。
個人的には8話が好き……というかオチが面白く、怪談噺として誰かに話したくなりました。

TONO先生の見た奇妙な夢とその顛末を語る「日常怪談」も好きで、訳わかんない話なのになぜか腑に落ちるリアリティがあります。こういう連続する夢って時々聞くんですけど、僕は見たことないのでちょっとだけ羨ましいです。

【オススメ】死人の声をきくがよい(ひよどり祥子)

小柄で一見平凡な少年・岸田純と、彼に付き纏う黒髪ロングの無表情幽霊・早川涼子を中心に、次々と巻き起こる怪異を描くホラー連作短編集……というか、「ホラー漫画家が描く美少女とキャッキャウフフする何か」です。


会話ができないのでボディーランゲージで意思疎通を図る早川さんがやたらかわいいんですが、やはり個人的には部長が好きですね。腹黒くて。
良くも悪くもあまり怖くないんですが、ザックリした絵と湿度の高い内容、脱力させつつ不気味な後味を残すストーリーテリングに「和製ホラー漫画の正当後継者」という印象を受けます。

最終回はブッタ切った感じありますが、陰鬱にエンドクレジットが流れ始めそうで、このマンガらしい終わり方だと思います。全12巻で完結。

りんたとさじ(オガツカヅオ)

「サジ」とあだ名を付けられたことからなぜか一発で恋に落ち、恋人のリン太行くところに付いて回ることになった佐藤順子。しかし「見える」彼の周りには常に怪奇現象が列をなし、サジ自身もさまざまなあやかしのものと遭遇することになる。今わたしが見ているものは、聞いている話は、どこまでがほんとうなのか? ――トリッキーな手法で不思議な恐怖を描く人気作、全1巻。

りんたとさじ

“炬燵の人”より

キャラは明るく、関西弁の会話も相まって「入りやすい」雰囲気があります。なのにスルッとカーテンを開くと壊れているような、ちょっと叙述トリック的なテクニックの採用がホラー漫画としてユニーク。

よく紹介されるだけあって面白いです。個人的には「妖精の人」と「鳴く人」が好き。4話の「穴の人」もミステリアスでいいですが、ちょっと難解過ぎる。全1巻で完結、一部虫注意。

試し読み ソノラマplus

異常者の愛(千田大輔)

たったひとつの行動を間違えたために、三堂三姫の歪んだ愛を一身に浴びることになった一ノ瀬一弥。邪魔者を縛り付け、ナイフで刺し、動画で脅す三姫の「愛情」は時間とともに熟成され、より多く、より深く一ノ瀬を求める形へと成長してゆく。

異常者の愛

第1話”「異常者の愛」”(1巻収録)より

サイコホラーですが、三姫は部分的に一般人なのがいいですね。両親に対して普通の少女らしい愛情を持っていたり、自分の「はしたない」行動に赤面する天然っぽい部分があったりして、ギャグっぽい表情で描かれることも多いです。この線引きが曖昧な感じはなかなか怖い。


絵はレビューで好き放題言われてますけど、かわいい系の絵とこの内容に異化効果があって、個人的にはむしろアリだと思ってます。直接的な表現は控えめなものの、一度カットした拷問場面をわざわざ別エピソードとして描き下ろしたり若干ガチな感じが……。第1話のタイトルカットからして大概悪趣味で、見た時ギョッとしました。
残酷な描写を含むので万人向けではないのと、ヤンデレではなくサイコパスの話なので注意。

試し読み マンガボックス

LOOP THE LOOP 飽食の館(原作:Kate 漫画:カズミヤアキラ)

望んだものが全て手に入る、謎の空間「飽食の館」。閉ざされた館に集められた12人の男女は、微妙な均衡の上でかりそめの幸せな日々を送っていた。だが一度なにかに気付き、疑心暗鬼が深まれば、その先にあるのは破滅しかない――名作と謳われるスマホアプリのコミカライズ。

原作はサウンドノベルで選択肢がないタイプです(つまり絵のついた小説)。昔ちょっとだけやったことがあって、プロローグが長過ぎて挫折したんですが、このマンガ版では前半部分を大胆に縮尺して本筋に入っています。手っ取り早く面白いとこから見たい人向け。小説版もありますが未読。

絵も背景や小物がしっかりしていて、ディティールがゆるいと外れてしまうタガをしっかり締め上げていて、ゴシックな密室もののワクワクする雰囲気を支えています。たぶんつまらないことはなかろうと読みましたが、意外な収穫でした。

試し読み pixivコミック

魔犬 ラヴクラフト傑作集(原作:H.P.Lovecraft 漫画:田辺剛)

世間の凡庸に飽いたわたしとセント・ジョンは、探検と称して墓場荒らしに熱中し、盗掘品を自宅の博物館に飾ることを無上の喜びとしていた。しかしオランダからひすいの首飾りを持ち帰ってからは、不快な笑い声や遠吠えとともに魔犬がわたしたちを追ってくる――(”魔犬”より)

魔犬

“魔犬”より

クトゥルフ神話で知られるラヴクラフト作品の代表作のひとつ「魔犬」の他、「神殿」「名もなき都」を収録。まず緻密かつおどろおどろしい作画の美しさに目を奪われ、やがて物語の陰鬱な闇に心を惹かれます。

ラヴクラフトが万人向けと言い張る気はさすがにないですが、興味がある人、原作が好きな方であればおすすめ。この作品の後も「異世界の色彩」「闇に這う者」と、続々と田辺先生によりラヴクラフト作品が漫画化されています。

試し読み ComicWalker

人間失格(原作:太宰治 漫画:伊藤潤二)

生来の陰気を隠すため、道化としてふるまうことを選んだ大庭葉蔵。人気ものとして仮面の裏で怯えながら、やがて彼は血腥い幻影に取り憑かれていく……太宰治の名作を伊藤潤二がコミカライズ。

原作が原作なのでひたすら状況は悪くなるばかり、ひとりの青年の華々しい女性遍歴と着実な破滅が描き出されます。絵も相まって気鬱、寂寞とした読後感でした。
原作読んだのももう十年以上前なので、印象深いエピソード(コメトラとか)に出くわすと謎の懐かしさがあります。

ちゃんと比較したわけではないですが、原作よりかなりホラーテイストに脚色されているように思います。普通にエンタメとして面白かったです。

試し読み 小学館コミック

物怪ばなし(鯛夢)

顔の痣から、「アザ子」と呼ばれる少女・麻子は、忍術の研究に没頭する歴史教師・服部に突然隠れ身の術を伝授される。この術のためにはモチベーションが重要であり、そのためには麻子のコンプレックスがうってつけなのだ。理論上は完璧な術の結果は……。(”隠れ身”)

物怪ばなし

“隠れ身”より

正式名称は「鯛夢ホラーM短編集2 物怪ばなし」で、「もっけばなし」と読みます。Kindle Unlimitedでなんかいいのないかな~と漁ってて見付けたんですけど、比較的正統派な短編集1(魂消ばなし)に比べるとデジタルホラーやジュブナイルが多くて、ホラーなのに妙にワクワクしたりします。

後書きでは失敗したみたいなこと書かれてますが、パズル形式で予知夢を見る「パズル! モンタージュ」が個人的に一番好きだし、一番ゾッとしました。「迷路」「猫姫城へようこそ!」も変な勢いがあって好き。魂消ばなし収録の「霊視点」もちょっとミステリっぽい謎の回収があったり、このホラーらしからぬガジェットとアイデアの豊富さは鯛夢先生の強力な武器だと思います。
他「日本魂」「雪之歌」を収録。全1巻で完結(短編集)。

試し読み Renta!

怪物王女(光永康則)

王族の血を引く「姫」に血を与えられ、日数制限付きの不死者「血の戦士」となったごく普通の少年・日和見日郎。彼は世継ぎを決める王族同士の争い、不死の血を狙う使者、さらに「ふふん、これも王族伝統のフィールドワークだ」とか言いながら自分から面倒ごとに首を突っ込む姫のお守りと、ありとあらゆる怪奇トラブルに巻き込まれていくことになる。しかし彼自身に大きな不満はない。望みはただひとつ、姫の傍に寄り添い、彼女を守り抜くこと――

怪物王女

第47話”廃屋王女”(10巻収録)より

基本一話~数話完結の連作ホラー・アクション。「無人の街で掲示板の顔写真に×がついていく」とか「人が別人になっているが、誰も気付かない」とかのホラー/SF的演出で、読み始めると止まらないツカみの上手さが目を引きます。設定の元ネタは藤子不二雄Ⓐ先生の「怪物くん」ですが、ある意味ジョジョが結構近いかも。


怪物登場→バトル→後日談みたいなシンプルな話をどう味付けすれば面白くなるかという意味で、相当マンガが上手いです。主人公が薄味な分、サブキャラたちが非常に魅力的(特にフランドル)なのもポイント。
光永先生の代表作で、アニメ化されるなど世評も高い作品。全20巻で完結後、パラレルワールド(と思われる)設定の「怪物王女ナイトメア」が連載中。他にスピンオフ「南Q阿伝」(全6巻)があります。

試し読み BookLive

ヴァルダ-迷宮の貴婦人-(望月玲子)

切り立つ断崖にそびえ立つバルケンホーフ城に住まうハイト家の末裔は狂死し、あとには莫大な遺産が遺された。ハイト家の血を引く6人は、ひと冬をこの城で過ごせば、すべての遺産を相続する権利が平等に与えられる。やがて雪が降り始め、城は陸の孤島となる。城の中には手つかずの財宝と、謎めいた古風な美女の肖像画。やがて最初の犠牲者が出て、イヤリングがひとつ消える。消えたイヤリングは、絵の中の美女がつけている――

ヴァルダ-迷宮の貴婦人-

“ヴァルダ-迷宮の貴婦人-“より

今読むと陳腐な設定ですが、かなり面白かったです。内容は雪の洋館で巻き起こるゴシック&パニックホラー。ハイソな雰囲気の序盤から段々狂気を増していくストーリーはテンション高め、内装や服装の描写も丁寧で雰囲気あります。

読んでなぜか真っ先に連想したのは、アウターゾーンの飛行機の話。
表題作の他、タップダンスを題材にした「水たまりのアルテミス」、作者によるコラム「Backstage Talk」を収録。ちなみに望月先生の初コミックスで、雑誌掲載後好評を受けて一カ月ぐらいで単行本化したらしいです。全1巻で完結

類似作 かまいたちの夜(ゲーム/チュンソフト)、カーミラ(小説/レ・ファニュ)など

試し読み コミックシーモア

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