世の中は凄まじいスピードで流れています。あまりにも膨大な情報たち、飛び交うニュース、入れ替わる情勢、学ぶべきことはあまりにも多く、やるべきこともあまりにも多い。あなたはエンターテイメントに費やす時間をほとんど確保できず、そういう人はそもそもこのページを見ていないでしょう。
しかしそんな多忙な時間の日々でもふとした瞬間、ちょっと通勤中とか、トイレの中とか、寝る前にふと一冊の漫画本を読んで心癒されることができるなら……。そうした思いからセレクトされた珠玉の一巻完結名作集です。嘘です。単に「これ短くて面白いからどう?」という内容です。
基本的な基準としては「一冊で終わるのがちょうどいい長さの話」という感じになります。あまりに長いのは省きますが、初出で2巻、文庫版で1巻になったとかもとりあえずOK。最初1冊完結で出て、その後続編が発表されるのも(これも程度にもよりますが)OK。要は「1巻だけで独立した作品として完結」してれば良しとする、ってな感じです。
高層マンションの屋上に立って世界の行く末について悩む日課を持つ少年・童は、突然後ろから衝撃を受けて落下する。25階分の高さを墜落しながら彼が目撃するのは、親友の意外な行動や、学校のマドンナの不気味な部屋……各部屋の情報を繋げ合わせることで判明する真相とは、そして彼は生還できるのか?
第3瞬”親友よ! 俺はどうすればいい?”より
試し読み Cakes
1933年、ソビエト連邦カレリア自治共和国。共産党が管理する湖畔の別荘に現れた、見るからにわけありな車椅子の少女と従者。「子犬(シシェノーク)」「リス(ビエールカ)」と名乗るふたりに不審を抱く管理人だったが、その目的とは?
第2話”栗鼠と子犬の生活”より
帝政ロシア末期とか、ラスプーチンが暗躍してた時代に知識があるならその限りではありません。ただし、最後の付録・あとがきを先に読まないこと。
「マンガ・エロティクスF」で2013~2014年連載。
試し読み BookLive
ライフスタイル誌「マレ」に移動になった編集者・コーロキは、異次元のオシャレにどぎまぎしつつもひとりの女性と出会い一目で恋に落ちる。彼はまだ、その出会いが地獄の始まりだとは知らずにいた。
第4話より
再読して思ったんですが、これは一種の破滅譚ですね。読み終えると奥田民生が聞きたくなります。
いわゆる「黒手塚」の一作です。初出は2巻、文庫で1巻。
とある女性が芥川賞を受賞するところから物語は始まります。芋虫が羽化するようにキャリアを発展させてきた彼女。しかしそのニュースに触れる「知人」たちは、落ちぶれたドヤ街の男、首を吊る女性……。
空中に浮かびあがる「あなたの人生は失敗しました。」の文字。それを見た阿佐見川団地の住人たちは次々に死を選ぶ。その裏には団地内で流行する仮想空間ゲーム「ディストピア」があることを知った主婦・篠原仁美は、謎の男・喜多嶋俊介に誘われるようにして連続する死の真相へ迫ることになる。
第1話”ANOTHER WORLD”より
WEB作家出身の筒井先生メジャー誌長編デビュー作で、後年他作品とともにフランス語訳され、好評だったのかwikipediaに日本語ページはないけどフランス語ページがある珍しい作品です(2018/9月現在)。喜多嶋は同時期に連載された「マンホール」にも登場。
試し読み S-MANGA
死を覚悟した遭難から一転、すんでのところで山小屋に逃げ込んだ登山者の浅井と石倉。石倉は足を負傷しており、自力での下山は無理だが、二日後の朝には救助が来る。
安堵の息を漏らす浅井だったが、石倉の目を見て、ふと気付く。彼は既に聞いてしまっていた。死を目前に懺悔した、石倉の過去の殺人の告白を――
「告白~コンフェッション~」より
「ヤングマガジンアッパーズ」で1998年連載。このタッグは他にも「生存~ライフ~」という作品も作っててそっちも面白いので、お気に召したらぜひどうぞ。
試し読み コミックシーモア
「普通」の少年深町は、卒業式の日勇気を出して山田さんに告白する。彼女は付き合ってもいいと答えるが、それにはひとつの条件があった。山田さんに連れていかれたゲームセンターで深町を待っていたのは、レトロなピンボールの筐体。条件とは、そのトップスコアを更新することだった――
絵の雰囲気もアナクロかつ「ビックリマン」的なポップさがあり、作品世界とマッチしています。ヒロインもバーバママみたいな顔してるんですがなんかかわいい。アフタヌーン系のこのごちゃごちゃした感じは結構好きです。
悪魔ノーネムを呼び出すことに成功した13歳の少女・黒野書子。世界を滅茶苦茶にする力を望む彼女だったが、「お前友達いないだけだろ」と無常なツッコミを受けてしまう。「卒業までに友達ができて、それでも望むなら力を与える」という妙な契約の元に、学校で孤独な奮闘を始めることになった黒野の成長(?)を描く、一冊完結ディスコミュニケーション・コメディ。
しかし結構ためになることを言っていて、若いうちにこれ読むとひとつふたつ残るものがありそうな気がします。
試し読み championタップ!公式サイト
退職金を全て引き下ろし、家族は家からいなくなっていた。三十八年間働いて、手元に残ったのは時代遅れの経理の知識と、一万六千円の現金だけ。
絶望のうちに男は郷里へ向かい、山の中で首を吊ることに決める。しかし枝が折れて一命をとりとめ、谷底でひとり物思いにふけった彼は、夜明けとともにこう呟く。「まだ……生きてる……」
気まぐれに生き続けることを決めた男の、山中サバイバル生活を描く異色作。
1巻より
ちなみに好評だったのか、2巻もあります(話としてはそれぞれ独立)。主人公は1巻に登場したある人物。
舞台は大学の女子寮。バンドマンの先輩・鯨井ルカとその後輩入巣柚実は、飯を食べたり海に行ったりしながら、恋愛だの夢だのについてああだこうだと語り合う。石黒先生の初期青春マンガ。
第2話”バカショージキ”より
「響子と父さん」に先輩の家族が登場。「月刊COMICリュウ」で2006~2008年不定期連載。
類似作 それでも町は廻っている、響子と父さん(石黒正数)
試し読み ebookjapan
「一冊完結」というとよく名前があがるマンガ(ただし、番外編として各キャラを掘り下げた「GENTE〜リストランテの人々〜」という作品が別にあります)。赤毛のニコレッタは、かつて自分を見捨てた母のいるイタリアへ赴き、彼女の経営するレストランでカメリエーレ長を務める初老の紳士クラウディオと出会い、突然の恋に落ちる。
渋い色気を放つ紳士たちに萌えるもよし、ニコレッタと母親の確執と共通点に着目するもよし。隙あらばコマの端っこでつまみ食いしてるジジを監視するのもよろしいかと。
試し読み BookLive
絡み酒の社長と嫌な酒から逃げるように歩道橋を進むOLのカナエ。そんな彼女を呼び止めたのは見覚えがあるようなないような工場勤務の幼馴染・中平かずきだった。彼が工場の中で彼女に見せた、とんでもないでかさのドアノブのような物体と、さらにとんでもない燃焼実験――なんのために? 宇宙へ飛ばすために。だからそれはなんのために……? あまりにも馬鹿々々しい動機と子供じみた情熱で突き進む、テロ系青春物語。
第1話”仕事やめられるかも”の巻より
試し読み モアイ
暗い部屋で打った釘は、運の悪い一匹のトカゲを柱に縫いとめた。身動きのとれないそのトカゲは、亡父の借金にあえぎ人生を崩壊させつつある大学生・井領哲之に奇妙なシンパシーを感じさせた。同僚の磯貝もまた、トカゲを見て何かを思う――一冊にして骨太な青春ドラマ。
原作は未読。宮本先生の小説はあまり読んだことないですが、「錦繍」とか好きでした。この人の書くヒロインは魅力的だと思います。
人気音楽グループ「花と頬」のメンバーを父に持つ鳥井頬子。偶然同じ図書医院になった八尋豊は、熱心な音楽ファンで、それをきっかけに彼女に興味を抱く。好きな音楽や小説の情報を交換し合い、言葉の端に感情があふれ、疑いが首をもたげる。恋の始まりを描くボーイ・ミーツ・ガール。
第3話より
試し読み コミックシーモア
長年いがみ合ってきた二つの国は、神託によりそれぞれ「国で最も美しい娘」を嫁に、「国で最も賢い若者」を婿に送り合うことになる。しかしどちらの国も、まともに約束を守る気はまるでなく……。
ちなみに2018年もこの人が1位取ってました。正直「そこまでか?」と思うんですが、女性にしかわからない良さがあんのかもしれないです。
仕事はできるし、顔もいい。引く手あまたのモテ男・上條だったが、「30億分の1」の恋に憧れる彼は、遊びの恋をすることができない。連日のように通い詰め、彼女のために通訳器も買い、苦手な喧嘩だってしてみせる。
彼の狙う女性はただひとり、中華料理店の娘・香蘭ただひとり!
第2話より
香蘭は中国娘らしく(?)なかなかに勝気。前半の攻撃性があるからこそ、徐々に心を許す後半のかわいさが引き立ちます。青山先生の絵でどストレートな恋愛ものという、シンプルなキャッチーさにグッとくるならおすすめ。
渡瀬橋渡(わたらせばしわたる)、31歳、童貞。そんな彼にも人生の転機が訪れていた――29歳の森高里子と3度目のデートまでこぎつけているのだ。経験不足で時々気弱になる彼だったが、彼にしか見えない「恋愛の神様」のアドバイスを参考に、恋の渡良瀬橋を渡り切ることができる――のか? コメディタッチで不器用な恋愛を描く、1冊完結アラサーラブストーリー。
普通に買いましたがマンガ図書館Zで公開されてました。そこまでのパンチ力はないのでオススメマーク付けてないですけど、リアル知人にも貸したりお勧めしたりしやすい、いい意味の手頃さがあるマンガです。
男性経験のない犬飼美有は、SMの女王様をしている姉・真麻から「奴隷」として諸戸怜司を譲られ、未経験から女王様として修業を始めることになる。奴隷である諸戸にダメ出しされながらも、段々と才能を開花させていく美有だったが、しだいに諸戸のことを男性として好きになり始め……。
PLAY.02より
「主任がゆく!スペシャル」で2019~2020年連載、全1巻で完結。
類似作 蛇沢課長のM嬢(犬上すくね)
試し読み コミックシーモア
一言で言えば自警団を作る話。道端に座り込んで奇声をあげる若者や、ふんぞり返って歩きながら唾を吐く老人に対する妄想を具現化したような作品、と言ってもいいです。
第3話”若者殴り魔を追え”より
試し読み コミックシーモア
一言で言えばポストアポカリプスプロレス漫画、もうちょっとつけたせば巨人SFファンタジー系プロレス漫画クールなロリッ娘付き物件です。三浦先生がベルセルクをほっぽってなんか巨人の出るマンガを描いたらしい、ということで、出て早々に買った記憶があります。
巨人が出てない場面のほうが面白かった気もしますが、「たしかにこれはベルセルクでは言えないな」というメッセージの込められた作品です。ベルセルクもそうですがヤングアニマルのPVは妙にいいですね。
あらゆる生物を見るだけで殺す邪眼を持つ一羽のフクロウ「ミネルヴァ」。一度は捕らえられたそれは運輸中に脱走し、東京の空を舞って数百万の人間を屠る。「殺気」を察知することで近代兵器も熟練の軍人も討ち漏らす怪物に対し、唯一ミネルヴァを射ち落とすことに成功し、あと一歩のところまで追い詰めた過去を持つ仮面の狩人・鵜平は再び銃を持つ――人の姿が消えた東京のビル街で繰り広げられる、一冊完結のカタストロフ・ハンティング。
第5回”疾き車は街を駆ける”より
久しぶりにこの人のマンガ読みましたが、やっぱり凄くクセの強い作家だなと思います。そして「楽しんで描いてる」感がすごい。描きたいものを描いてるなー、と感じます。
試し読み 小学館公式サイト
夜、隣の部屋を誰かが訪ねてくる。激しいノックの音が聞こえるが、ドアを開けて確認してはいけない。もし開けてしまうと……。
第1話”玄関”より
事故死、自殺、変死……25人の人間が相次いで亡くなった巨大団地で、捜査本部は完全に行き詰っていた。動機はない、ノイローゼもない、遺書もなければ手がかりもない。それでも地道な捜査を続ける中でわかってきたのは、住民の中に変なのがいること、そしてあるはずのものが時折消えていることだった。
「童夢」より
1980年発表のこのマンガがおそろしく新しいとされたのは「前提」「記号」を排し、ゼロからマンガ表現を組み立て直したところにあると言われます。中盤のアクション描写もすごいですが、個人的にはクライマックスが最高。結果を描くことで原因を描く描写のひとつの到達点です。
森の中で暮らすホブゴブリンの少女と、なんでも食べてしまう魔女。日々食べ物(丸太とかでもOK)を魔女に献上する少女だったが、実は彼女と魔女には王国の王女にまつわる、あるとんでもない秘密があった――
4年越しの連載で少しずつ描かれた、ほのぼの不思議系ファンタジー。
ちょっとダークな部分がありますが、表面上は一応かわいいので、お子様が読んでも安心の仕上がり。