な、なんだってー!
個人的にたいそうショックを受けた漫画の中でも、「面白い」ものだけをチョイスしました。あえて内容をバラけさせてあります。ああいう意味の衝撃もあるし、そういう意味の衝撃もあるでしょう。随時追加予定です。
・ド根性ガエルの娘(大月悠祐子)
・舞姫 テレプシコーラ(山岸涼子)
・うそつきパラドクス(きづきあきら+サトウナンキ)
・GIANT KILLING(原作/原案・取材協力:綱本将也 漫画:ツジトモ)
・火の鳥(手塚治虫)
・人間仮免中(卯月妙子)
・マーズ(横山光輝)
・ラッキー嬢ちゃんのあたらしい仕事(高野文子)
・わたしは真吾(楳図かずお)
・終極エンゲージ(原作:江藤俊司 漫画:三輪ヨシユキ)
・ドレッドノット(緋鍵龍彦)
・妄想テレパシー(NOBEL)
以下若干ネタ枠
・それがし乞食にあらず(平田弘史)
・当方桃太郎、全パート募集(三上骨丸)
・ゼクレアトル(原作:戸塚たくす 漫画:阿久井真)
天 天和通りの快男児(福本伸行)
雀荘荒らしの少年・ひろゆきが豪放な打ち手・天と出会い、代打ちへと進んでいく顛末を描く麻雀マンガの快作。
それまで人情もので売っていた福本先生がギャンブル路線へと舵を切るきっかけとなった、「カイジ」でおなじみ福本先生の出世作です。伝説の打ち手・赤木の初登場作でもあります(つまり、アカギはこの作品のスピンオフです)。
そこに至るまでも面白いんですけどね。麻雀マンガなので、少し知ってるといいかもしれません。
ド根性ガエルの娘(大月悠祐子)
かつて少年ジャンプで「ど根性ガエル」を連載していた人気作家・吉沢やすみ。しかしスランプに陥り追い詰められていった吉沢先生は原稿を投げ出して失踪。一度はどん底へと堕ち、そして再生した家族の姿を娘である大月先生が描く――
マンガを読んで戦慄を覚えたのは久々です。今現在の家族の状態も描かれ、連載に合わせてそちらも変化していくのがライブ感あっていいですね。いや、これは凄かった……。
田中圭一先生の「田中圭一のペンと箸」で、息子の吉澤康宏さんから見た吉沢やすみ先生が語られたりもします。2015年なんで、これの連載のちょっと前ですね。吉沢先生ご自身のエッセイ(「パパとゆっちゃん」)もあり、合わせて読むとまた立体的な楽しみ方ができるかもですね。
舞姫 テレプシコーラ(山岸涼子)
バレエの世界を舞台にしたマンガで、ちょっと絵に癖があります。勘のいい読者は、読んでいるうちにある予感を憶えるでしょう。本作の終了後の展開を描いた続編もあり、そっちも楽しいですが、まさに衝撃の展開を味わえるのはこの第一作。
僕はある程度読んでいるので幸い致命傷で済みましたが、御年をめされてもその切れ味が鈍っていないことがよくわかります。
うそつきパラドクス(きづきあきら+サトウナンキ)
残業中に色々怪しげな会話を交わし、遠距離恋愛中の彼氏持ち・栖佑日菜子と不思議な浮気関係になった八日堂俊介。恋人ごっこはするけど、一線は越えない。「代理品」という都合のいい嘘でくるんだ関係は、だんだん爛れて元の形に留めておけなくなっていく。
一方栖佑の恋人(通称名古屋)のほうでも、ちがう女の影が――「横恋慕する側」「浮気する側」「浮気された側」それぞれの心理と事情を描くハートブレイク・ラブストーリー。

“時間外手当①”(1巻収録)より
なぜか読んでて「逃げるは恥だが役に立つ」を連想したんですが、数巻単位で話の面白さの種類が切り替わっていく感じが似てるのかな。
第1話にあたる「時間外手当」はもともと短編で2008年「ヤングアニマルあいらんど」掲載。これの続きという形で「ヤングアニマル」で2009~2012年連載、全9巻+番外編1巻で完結。続編としては最後に出てきた後輩が主人公(本作のキャラも登場)の「バター猫のパラドクス」が2012~2014年(全4巻)、「うそつきパラドクス -社内風紀のみだしかた-」が「ハレム」で2018年~連載。
あと本編と関係ないけど、表紙裏の担当さんのスポーツウーマンどうたら宣言は最高だなと思いましたね。声に出して使っていきたい日本語です。電子で収録されてるかは未確認。
まあほぼエロマンガですが、気になる方はどうぞ。内容的にはふたりがひたすら場所を問わずにイチャコラする話です。ただ3巻ぐらい読むとまた少し不穏な感じに……。
試し読み コミックシーモア
GIANT KILLING(原作/原案・取材協力:綱本将也 漫画:ツジトモ)
元スター選手・達海猛が、2部転落の危機が漂う弱小サッカーチーム・ETUの監督として辣腕をふるう話です。

#82(9巻収録)より
戦略的な試合の組み立てによる頭脳戦もあり、急激に成長する若手の前に立ちふさがる天才など胸熱要素もあり。個人的に衝撃的だったのは、物語中盤のある練習試合。
火の鳥(手塚治虫)
手塚作品である意味最も衝撃を受けたのは「こじき姫ルンぺネラ」なんですが、ここは素直にこれを推しておきます。
たしか初読は小学生で、図書室にあった気がします。何周読んだのか不明。この作品についてまともに書くとキリがない。
手塚治虫「火の鳥・ヤマト編」より。 pic.twitter.com/9FUswQNk5c
— 叛逆bot (@bougibot) 2019年6月24日
何気に「どの順番で読んでもいい」「版元によって刊行順が違う」という、とてもユニークな性格を持つ作品でもあります。
人間仮免中(卯月妙子)
還暦を過ぎた「ボビー」と同棲する統合失調症の卯月(本人)は元ハード系AV女優。背中には戒名入りの入れ墨。彼女は車の行きかう道路へ向かって歩道橋から飛び下りるらしい。
実録エッセイというかなんというか。強烈な負のエネルギーとぶっ飛んだ行動、事故による荒れた線とどこまで現実なのかわからない描写で読者をなぎ倒しにかかるマンガです。喰わず嫌いはもったいないですが、少し心に余裕がある時に読んだほうがいいのかも。
マーズ(横山光輝)
新聞記者の岩倉が、海底火山の噴火により作られた島を取材中、全裸の少年を発見するところから物語はスタートします。身元不明で言葉を解さないこの少年がマーズなわけですが、彼にはある重大な秘密が隠されていて、やがて世界の存亡をかけた争いに巻き込まれていく……というような筋。
wikipediaでラストがネタバレしてるので、読む人は見ないほうが良いかと。
ラッキー嬢ちゃんのあたらしい仕事(高野文子)
なんか結構何に衝撃を受けたのか書いちゃってますね僕は。ストーリーはヒッチコック風味で、わりとかわいらしいです。
この人は本当に凄いので、僕が正直に書いていけば、いずれほぼ全作品紹介することになると思われます。
わたしは真吾(楳図かずお)
生涯のベストマンガにあげる人が多い、梅津先生の代表作のひとつです。
UMEZZ WORLD STORE 🇫🇷
いよいよ、本日最終日です!
楳図作品を知らない人も
ポスターの絵に惹かれて、足を止めてくれます🙌
1番人気は、わたしは真悟のこの扉絵
☀️#japanexpo #kazuoumezu pic.twitter.com/zw8QvnNhvw— 公式|UMEZZ WORLD STORE (@UmezzWorldStore) 2018年7月8日
どうもジャンル分けの難しい作品で、ホラーといえばホラーだし、ラブストーリーといえばラブストーリーです。「333」絡みの話は色々凄すぎて、マンガ読んでて眩暈がするという初めての経験をしました。
終極エンゲージ(原作:江藤俊司 漫画:三輪ヨシユキ)
「宇宙の卵」の絶対的加護により、あらゆる敵対攻撃のダメージを無効化し、全宇宙を統べる地球王家。その王妃を決める「地球女王決定戦」で妃に求められるのはただ強さのみ――女ばかりの異種間トーナメントバトル、開幕! と、思いきや……?

第14話”カルキVSディスタ①”(2巻収録)より
というかこのレベルの作品がそれほど話題になってないというのが既に衝撃ですよ。最近のマンガのアベレージはほんと高いですね。10年早くこれやってたら結構な話題作になってると思います。
まあちょっとツイストきかせ過ぎて話がブレてる気はしますが、非常にチャレンジングな作品で、僕の評価はかなり高いです。
試し読み 少年ジャンプ+
ドレッドノット(緋鍵龍彦)
なかなか内定が決まらない、就職活動中の女子大生・伊坂詩織。彼女は道端で知り合った若い男・二瓶氷吾に「珍しいバイト」に誘われ、車で移動中に急な眠気に襲われて意識を失ってしまう。次に目を覚ました時、彼女を取り囲んでいるのは見知らぬ部屋、大量の絵画――「モニタリング」と刻まれた腕輪を嵌められた彼女は、無事に部屋から生還できるのか。そしてその奥にある氷吾の「意図」とは――?
全2巻、短いながらもアイデアがあり、読み応えのある作品です。
どーでもいいけど読み返すとタクシーの中のシーン……通報されなくて良かったね。
試し読み モアイ
妄想テレパシー(NOBEL)
中野彩子は人の心の声が聞こえることから、対人関係を恐れるようになりすっかり地味系ぼっち眼鏡女子と化していた。同じクラスになった人気者・戸田隼人はそんな彩子のことが大好きで、クールな表情の下で毎日エロ妄想を繰り広げ彼女を苦しめる。赤裸々な心の声とは裏腹に特に会話のないふたりだったが――高校最後の1年をめぐるテレパスラブコメ。
「妄想テレパシー」明日15:00からツイ4(@twi_yon )で連載開始です!
よろしくお願いします^^ pic.twitter.com/IxlHr4OULS— NOBEL (@NOBEL827) 2016年2月8日
色の使い分けで現実/妄想を分けるというアイデアも秀逸で、いちいち説明する必要がないのでテンポは実に軽快。このジャンルでできる特権的なワザをいくつも実装するアイデアの豊かさは強力な武器で、そのうちひとつに一発喰らったのでネタバレ感想で負け惜しみを書きました(読む前に見ないでね)。
試し読み ツイ4
以下若干ネタ枠
それがし乞食にあらず(平田弘史)
下級武士の緒方半兵衛は妻を病で亡くし、六人の子供を一人で養うことになる。しかし内職は金にならず、野草や野良犬しか食べるものはない。見かねた近所の人がおにぎりを差し入れしてくれると、緒方はそれを庭に捨て、「緒方家は乞食ではないのだ」と怒り狂い、食物をくれた人にもそうしたことはしてくれるなときつく言い渡す。そうこうするうちに子供は餓死し、あるいは病に倒れていく――(”それがし乞食にあらず”)

“それがし乞食にあらず”より
他「我れ枯るるとも」「秘砲抱え大筒」「不承知槍」「誰も戦い望まぬけれど」を収録。
当方桃太郎、全パート募集(三上骨丸)
序盤は犬・猿・雉を募集する桃太郎のところに、いずれもアクの強い連中、他のおとぎ話の主人公などがやってくるライトなコメディ。しかし後半は様子がおかしくなってきて……。
読むものに多大なインパクトを残し、ある意味次へ繋ぐ上では結構有効打なのかもしれません。個人的にはこういうの結構好きです(「サルまん」とかも好きですし)。
ゼクレアトル(原作:戸塚たくす 漫画:阿久井真)
主人公が「マンガの主人公」であることを告げられ、自分の行動が漫画として掲載される「週刊仙人サンデー」で人気を得ないと打ち切り(=消滅)となる……というメタ漫画です。ちょっと他に見たことがない設定の新奇さと展開は見ごたえありますが、真の衝撃は途中で作画が降板し、原作者が絵を描き始めるという前代未聞の展開(web掲載時)です。これも一応作中にメタ構造として捕らえられますが、まあ色々あったらしいです。

第1話(1巻収録)より
原作者はweb漫画「オーシャンまなぶ」で有名な方です。上の事態の後阿久井先生が描きなおすこともなく、そのまま出すでもなく、結局完結部分(5巻相当)は発行されていないため、書籍としては完結していません(僕はマンガワンで読みました)。
試し読み 裏サンデー
他にもこんなマンガが衝撃という快楽を提供しています
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