遠からんものは音に聞け、ついでにハガキも出してみよ。オールドメディアの魅力を今に伝えるラジオ系おすすめマンガ

電波……届いた?

バグルスの「ラジオ・スターの悲劇」が1979年、クイーンの「RADIO GA GA」が1984年。この時代に既に「古臭い消えゆくメディア」と見做されつつあったラジオですがどっこいしぶとく、21世紀でも現役で受験生、ドライバー、漫画家などの孤独な夜をにぎやかす健在ぶりを示しています。案外インターネットとの親和性が高く、ポッドキャストやオーディオブックなどを経由して再評価されてる向きすらある。
てなわけでラジオ系おすすめマンガです。音が主流のメディアということでマンガにするのが難しい題材ですが、なんとかのコーナーとかリスナーからのはがきとかネタ候補自体は豊富で、会話を描くのが得意な漫画家であればかえってやりやすかったりするのかもしれません。その他、声優ものでもちょいちょいラジオが出てきます。

波よ聞いてくれ(沙村広明)

人生崖っぷちのカレー屋カリスマ店員(自称)・鼓田ミナレは、飲みの席で初対面に絡み倒したところからその切れ味鋭い愚痴を公共電波で北海道全土に公開放送され、ラジオ局「MRS」に突撃したことを機に深夜放送「波よ聞いてくれ」のパーソナリティとしてデビューすることになる。運がいいのか悪いのか、次々とバイオレンス味あふれる事件に巻き込まれる(あるいは自分から頭を突っ込む)ミナレの生きざまを描くラジオライフ・アクションコメディ。

波よ聞いてくれ

第3話″奴らが憎い”(1巻収録)より

沙村先生特有の癖のある言いまわしと変なボケが続出する会話劇に目を奪われますが、起こる出来事も面白くなにげにホラー味あったりします。沙村先生的には新機軸の企画だそうですが、ラジオ漫画にしては人がヘッドシザーズ・ホイップかけられたり警察に連行されたりする場面がやたら多い。


とはいえ「人が死なない」ことがコンセプトのひとつに掲げられており、「無限の住人」に比べるとだいぶ万人向け。「このマンガがすごい!」2016年オトコ編6位。J-waveでラジオドラマ化され、その後2020年にアニメ化

試し読み アフタヌーン公式サイト

Radio Lady(監修・協力:ちゃんこ 作者:茶麻)

就活を目前に控え、ぜんぜん危機感の漂わない大学生・伊野環は、偶然聞いたラジオが面白かったのでラジオ作家を唐突に志し、局の前で弟子入りできる作家を求めて声をかけられる。しかしこの行動で判明した「変な声」と「謎の話術」が買われ、彼女はぶっつけ本番パーソナリティでデビューすることに?

Radio Lady

#2″デビュー”(1巻収録)より

ラジオものとしてとてもスタンダードな作り。誰に対しても平等にちょっと失礼な環のおしゃべりが普通に面白いし、彼女とタッグを組まされる新人声優、構成作家、ディレクターなど各キャラも程よく立っていて読みやすい。一応結果を求められる場面もあるんですがお仕事ものらしさはあまりなく、ゆるく楽しい日常系的なノリで読めます。

幕間程度ですが、実際に読者からの質問を受け付けて作中に取り込んでいたのがちょっと新鮮。
監修・協力のちゃんこ氏は現役の構成作家で、作中にも氏をモデルにしたっぽいキャラが登場。web漫画サイト「ぽにマガ」で2015~2019年連載、全3間で完結

類似作 波よ聞いてくれ(沙村広明)

試し読み ニコニコ静画

テキサスレディオギャング(榎屋克優)

見て見ぬふりをしていたいじめのために、大切な友人を失うことになったハーフの少年・山本ピーター。残された自主制作のラジオドラマを聞いた彼は、その「続き」を作り始める――鎮魂と復讐のために!

最後に公開されるラジオドラマはカタストロフィにあふれ、結末へ向けて物語は一直線に壊れていきます。名作ラジオドラマが少し紹介されたりもしますので、興味のある方はそちらに進むきっかけにもなる作品です。

結構胸糞ないじめ部分が多く、苦手な人は苦手かもしれません。「ミラクルジャンプ」で2014~2015年連載、全1巻で完結。一冊完結ならではのダイナミズムがある作品です。

試し読み S-MANGA.NET

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