有名店でも場末の食堂でも、味は食べてみないとわからない。レストラン・料亭等飲食店おすすめマンガ

やってるやってる


グルメ漫画と仕事マンガのハイブリッド、飲食店マンガのコーナーです。ご存知の通り激務と人手不足と過当競争が慢性化した業界で、上下関係の厳しいイタリアンやフレンチの舞台裏を覗くことができたり、ペルソナ被った従業員のバックヤードの会話を盗聴できたりで意外にシビアな内容になることが多い印象です。
軽くやる分には比較的取材が楽で話を作りやすいというグルメ漫画の特徴は引き継ぎつつ、まだマンガとして未開拓の業種もたくさんありますので、今後もバリエーション豊かに発展していくことかと思います。まあ牛丼屋やケバブ屋のマンガをどの程度マンガとして成立させられるかというのは、割と手腕が問われるところではありますが……。

【オススメ】バンビ~ノ!(せきやてつじ)

福岡出身の伴省吾は、本格的にイタリア料理の修行をするために様々なものを振り捨て、六本木の名門トラットリア「バッカナーレ」で働き始める。それなりの経験を持っていると自負していた彼だったが、彼の前には数多くの試練が待ち受けていた――読むと腹が減り胃が痛くなる腹痛系サスペンスド・レストラン・ストーリー。

「人」「仕事」を通じて大きく成長していくひとりの料理人を描き、レストランを舞台にスリリングなストーリーを展開する実力は本物。成長したい人、新社会人にもおすすめの作品です。

無印で全15巻、続編のセコンドが全13巻。ストーリー展開が強引なのと、後半(無印の11巻ぐらいから)段々別のマンガになるのがよく指摘される欠点です。セコンド最終巻ではマジでいきなり別ジャンルになってビックリしました。個人的にはセコンドもサスペンスとしてかなりハラハラさせられましたが、伴のひたむきな成長を描く前半のほうが面白いとは思います。

【オススメ】最後のレストラン(藤栄道彦)

腕は確かだがネガティブ思考のシェフ・園場凌(そのばしのぐ)が経営するレストラン「ヘブンズドア」。そこには時折、非業の死を遂げる寸前の歴史上の偉人たちがなんの脈絡もなく訪れる。ガンジーやアナスタシア、坂本龍馬などの無茶な注文に対し、園場は彼らを満足させるだけの料理を出すことができるのか――グルメ×歴史に歴史コメディで味付けした、新機軸の名作。

最後のレストラン

GUEST.2″マリー・アントワネット様”(1巻収録)より



「月刊コミックバンチ」で2011年~連載。基本偉人登場→無茶振り→料理という構成は一貫していますが、店の外で戦艦大和がまるまる登場したりとか、殺人の容疑者が複数登場するミステリー仕立てになったりとか、マンネリにならないように様々な工夫がこらされています。

歴史をちゃんと踏まえた上での、偉人たちをパロディネタにして扱ったりする若干ハラハラするユーモアも見どころ。連作短編集としても水準の高いおすすめの一皿です。

試し読み コミックバンチweb

WORKING!!(高津カリノ)

北海道某所のファミレス「ワグナリア」。道端でやたら小さい女の子にスカウトされてバイトとして勤めることになった小鳥遊宗太がそこで出会うのは、店の備品を食い尽くす店長、男と見ると殴りかかる女、なぜか帯刀して接客する女、従業員の個人情報を蒐集しそれとなく脅迫する男、ちっちゃくて可愛いセンパイと隙あらばその髪型を改造する男、まだまだ現れる変人たち、というか小鳥遊自身もなかなかの……。約10年に渡り連載され数度のアニメ化も果たした、ファミレス4コマの人気作。

人間関係ぐちゃぐちゃコメディで、ラブコメ要素もあり。キャラそれぞれに好きな人、苦手な人とかあり、そのへんの相関関係はハッキリしているので読んでるうちに前提が積みあがってだんだん面白くなってきますが、逆に言うと途中から読むとよくわかんないかも。

ややこしいんですがこの作品には連載の元となったウェブ版(通称猫組)とヤングガンガン連載版(通称犬組)があり、このふたつは登場人物が全く異なる別のマンガです。犬組が全13巻で上のあらすじはこっちのことですが、猫組(全6巻)も人気があり、そっちはそっちでアニメ化されてたりします。
話の本筋には絡まないものの全キャラクターと仲が良く、常に画面の端っこで存在感を主張し続ける種島ぽぷらは話のワキを固めるいいヒロインで、恋愛マンガとしてはさておき4コマとしての魅力はこの子の存在がいかに大きかったかがWEB版(ぽぷらがいない)を読むとよくわかります。そっちはそっちで面白いんですけど、妙な寂しさがある。

ばりごく麺(能條純一)

サラリーマンの潮崎朗馬が適当に入ったラーメン屋で遭遇した、「まずい。最後までまずいのが痛快」と傲岸不遜な感想を店主に告げる謎の男――榊原麺太。ラーメン職人としては伝説的な腕を持つ麺太に感化され、朗馬は会社を辞めて一足飛びにラーメン道へ足を踏み入れる。能條純一が仕掛けるラーメンバカマンガ。

ばりごく麺

第1話”ラーメン屋で出会った男”’(1巻収録)より

「バカ」はラーメンとマンガ両方にかかる感じで、麺に異変を感じるや虫眼鏡を取り出して一本一本調べるマニア、湯切りすると切ったお湯が客に襲い掛かるなど、ネタ漫画としてもなかなかの充実ぶり。「月下の棋士」読んで笑える人は向いてます。
話的には割とスタンダードな料理ものですが、上のコマが語るように解説は抑え目。それよりもまず絵で見せようとする姿勢があり、うまいラーメン喰った人が「うまい!」と内心思い、無表情で前のめりに食べ始める姿はリアル。

それを支える絵もうまく、ラーメンは非常に美味しそうに描かれます。あとなんてことのないコマでちょっと崩して書かれた顔が妙に魅力的だったりします。ボール投げるシーンの麺太の顔とか好き。
「ビジネスジャンプ」で2008~2009年連載、全4巻で完結

試し読み LINEマンガ

ラーメン屋のヨメ(神奈川のりこ)

脱サラしてラーメン屋「一代」を立ち上げた一代大介とその妻の洋子を主人公に、常連客との交流を描いたり、新作ラーメンの構想を練ったりする飲食店系4コマ漫画。びっくりするぐらい「表紙見た感じこういうマンガかな」と予想した通りの内容で、こういうのが今欲しい! と思ったところにやたら的確に入ってくる、作中の言葉を借りれば「理想的な普通」の作品でした。

それこそラーメン屋のマンガコーナーに置くといい仕事をしそうです。一冊完結で小難しくなくどこからでも読み始められて常に読み止めやすい。そしてなにげに面白くタメになる。他のラーメン屋の紹介も載ってたりはしますけど。

ちなみに作中のチャーシューレシピがamazonレビューでやたら好評。神奈川先生の旦那さんは実際にラーメン屋店員なんだそうです(巻末にそのへんの話もあり)。

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