鉛筆は自己表現の導火線。アート・美術・美大系マンガおすすめ選

見えないものを見ようとして


昔から美大・藝大出身の漫画家は多くいたものの、デッサン力や美大っぽさを前面に押し出す作家はあまり多くありませんでした。最近ではマンガが美術館で展示されたり買い上げになったりすることも増え、アートとマンガの敷居はだんだん低くなってる気がします。美大受験系のマンガも「これは題材になるんじゃないのか」と誰かが気付いたのか、急に増えたような印象があります。
こちらは絵・彫刻・現代美術などの美術系マンガ作品のまとめです。一般的に「アート」に含まれるであろう音楽や映画は別カテゴリ。デザイナーなんかも別ですが、美大に所属しているうちはここ。

ブルーピリオド(山口つばさ)

器用で賢い半面どこか偽りの自分を演じる高校二年生・矢口八虎。一枚の絵と出会い、一枚の絵を描いたことから、急に彼は絵の世界に目覚め、むき出しの青春に投げ出される。しかし学費は、予備校代は、そもそも藝大入れても絵で食えるのか? 懐疑と諦観から始まる美大受験ストーリー。

冒頭のモノローグに象徴されるように、絵に興味がない、描かない人の目線からスタートし、しだいに彼がハマっていく姿を描く作品。読むと絵を描きたくなることは保証します。

主人公が初心者スタートかつ天才ではないので、いきなりみんなが褒めてくれる痛快な展開とかはないです。ただし、誰も褒めてくれないのに毎日描けるところにはたどり着く。ここまでを自然に描けた時点で、もうこの作品は成功しているとも言えます。

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星明かりグラフィクス(山本和音)

潔癖症で他人と握手ができず、人の集まる場所が大キライ、しかしデザインセンスは群を抜く美大生・吉持星(デザイン学科ビジュアルデザイン専攻)と、人間関係に秀で、上昇志向の高い地味系パリピ園部明里(美術学科油絵専攻)。ふたりは埼玉芸術大学でコンビ「星明かり」を結成し、フライヤーやポップ、学祭の発表を通じてだんだんプロっぽくなっていく。デザイナーの卵×美大の青春グラフィティ。

吉持が比較的一般的な美大生のイメージに近い(人嫌いで天才肌、へんくつかつこだわり屋)存在で、物語の「陽」の部分を受け持つのが彼女としたら、「陰」の地固め、裏方、交渉、陰謀役である園部も同じぐらいの比率で活動が描かれるのがクレバーです。感情的にたくさんの作品を夢中で作りました! だけで処理しない。「コネを作って仕事を受ける方法」がちゃんと描かれています。

なんでそんなに俯瞰的な視点を持った子が美大の油絵に入っちゃったのか、とは思いますけど。1冊ぐらいはまとめて読まないと面白さがわかりにくい作品かもしれないです。全3巻で完結。

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【オススメ】かくかくしかじか(東村アキコ)

今や押しも押されぬ人気作家となった東村先生の美大受験、大学生活、漫画家デビューの遍歴を辿る自伝的マンガですが、同時に東村先生の「恩師」である日高健三氏(作中の仮名)との思い出を克明に記録した実録マンガでもあります。

ほぼ他に何もできず一気読みさせられました。過去の失敗や後悔が明け透けに語られつつ、終始明るいテンポを維持し続ける漫画家としての実力に圧倒されます。

絵画教室に入るなり容赦ない酷評、平然と竹刀を生徒に振り下ろすトンデモ教師にして絵画バカの日高先生ですが、実は本作で最も魅力的な人物でもあります。その理由は読めばわかる。全5巻で完結。

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