強さとはなんだろう。痛くても前に出る、おすすめ格闘技マンガ

強すぎても駄目

バトルとスポーツの中間みたいなカテゴリで、読んで面白かった格闘技ものをチョイスしています。基本一種目ですが、異種格闘技戦はメイン競技がハッキリしていればOK。架空の格闘技は原則として駄目、人外系、「死合いでござる」とか言い出す作品とかは基本バトルのほうで取り扱います。
ボクシングは独立しました。

【オススメ】帯をギュッとね!(河合克敏)

中学の昇段試験で出会ったライバルたちと同じ高校に進学した粉川巧。彼らとあれやこれやで柔道部を創部し、切磋琢磨しながら日々柔道に血道をあげていくことになる――のですが、上級生がいないために上下関係がない、コメディ路線が強くかなり笑えるといった特徴を持ち、従来の柔道ものから大きく距離をとった作品です。めちゃめちゃ好きな作品で、何回読み返したかよくわかりません。全30巻。

超おすすめです。スポーツもので主人公たちが最初から経験者、主人公に最初から彼女がいるといった設定は今見ても珍しく、キャラクター、ストーリー、ギャグ全てが高水準。なぜ映像化されなかったのか不思議なほどハイレベルな作品です。

スポ根なんですが根性・精神論を否定するようなところがあって、比較的よく題材にされる「楽しさ」と「強くなる」ことに対して真正面から取り組んだりもします。このへんの話から僕は結構影響を受けてる気がします。

JJM 女子柔道部物語(原作:恵本裕子 漫画:小林まこと)

1980年代末、北海道旭川市――明朗快活で負けず嫌いだが短気が損気の女子高生がひとり、同級生の勧誘により軽い気持ちで柔道部の畳を踏んだ。数合わせに呼ばれた彼女が、まさか後に日本人初の女子柔道オリンピック金メダル受賞者となろうとは、誰ひとり想像するだにない――恵本先生の実体験を小林先生が脚色・漫画化した、実話ベースのもうひとつの「柔道部物語」。

たまたま小林先生と恵本先生のご自宅が近所で親交があり、結果生まれた作品なのだそうです。知人をモデルにしてこんなに顔芸させて大丈夫なんでしょうか……。ちょっとうじうじした男性キャラに比べて、女性陣がみんなサッパリした、かつ強さに貪欲な性格に描かれています。柔道描写なんかは手慣れたもので全体的に迷いがないです。

画面の密度は充実、細かいギャグも面白く、非常に安定して面白いマンガです。wikipediaで恵本先生のページ見ると先の展開わかっちゃうので注意。

試し読み モアイ

あさひなぐ(こざき亜衣)

ザ・王道。高校から何か運動部でもしようかと考えていた元美術部・東島旭が、恐喝ぎみに薙刀部へと誘致され、エグい仕打ちを受けながらも薙刀にハマっていく過程を描く作品です。初期は露出狂に硬直していた彼女も後半では教師に蹴りを入れるほどの成長を見せ、作品自体のトーンもオーソドックスかつガチャガチャした前半から次第に静かになっていきます。

7~8巻ぐらいから急激に面白くなった印象があります。基本的に出てくる女性が粗暴。疲れると旭の目がイッちゃうのがキュートです。

色気皆無で小動物な主人公もいいんですが、僕は腹黒ノッポ女子の紺野さくらがお気に入りです。実力的にはそこまでではないものの、常時おしとやかな口調で暴言を吐き、努力する才能に満ち溢れた旭の対極をなす「弱さ」でストーリーの幅を広げてくれてます。

コミックスだとちょっと余白におまけがあったりして、好きな食べ物とか自分を一言で表すと~みたいなのを主要キャラに答えてもらってるページみたいなのがどっかにありましたが、これが凄く納得の出来栄えで各キャラが地に足がついていることがよくわかります。

試し読み スピリッツ公式サイト

【オススメ】EVIL HEART(武富智)

家庭内暴力をふるう父は出て行き、母はやはり暴力をふるう兄を刺して収監中。複雑な家庭事情により姉とふたり暮らしの男子中学生・正木梅夫。キレやすく父や兄と同じような未来を予感させる彼だったが、合気道を修めるカナダ人教師のダニエルと出会ったことから人生を大きく変えていく――全6巻(3巻で終了後、「氣編」「完結編」描き下ろしで続3巻)。

EVIL HEART

第3話”梅の求める道”(1巻収録)より

格闘技ものですがこのマンガで重視されるのは梅の内面の成長と家族の修復であり、合気道が全てを解決してくれるわけではないところに妙味があります。

梅の「目的」と合気道の「理念」は時として矛盾するわけですが、それでいて一度否定されたテーマをうまく絡めてくる伏線の上手さ、あるいはうまく体を捌いて一度問題をかわしてみせる見せ方など処理が非常に上手い。色々読んでてきつい作品ですが、名作だと思います。


番外編的ですが4巻の「氣編」が僕は好きで、ダニエル先生の意外な一面を見ると同時に、「触らないで相手を投げる」ワザの謎解き的な面白さもあります。終わり方も秀逸でした。

ロックアップ(猿渡哲也)

インディープロレス団体「あかつきプロレス」の社長にしてメインレスラー・サムソン高木。経営は火の車、身体はあちこちボロボロで、前立腺には癌がある。それでも彼は今日もこう言う。「大丈夫だ、心配するな」

色々と崖っぷちな人が、リング上で最大限見栄を張って観客を沸かせる様は、見ていて一種の爽快感があります。

ロックアップ=「がっぷりよっつ」、リング上で組み合うこと。全4巻で完結。
ミッキー・ローク主演の「レスラー」とか好きなので、最初から割と好感度が高い状態で読み始めました。概ね期待は裏切られなかった形です。人生プロレス状態の諸兄に、さりげなくおすすめしたい一冊です。

炎のうさぎ戦士(山口貴由)

私立純真高校プロレス部所属、1年5組天野うさぎ。セーラー戦士みたいな名前しているがこの男、軽口十段の軽薄者、小柄な身体に爆発力を秘めた実力者、そして「主人公」を自認する超自信家である。そんな彼のひそかな趣味は、憧れの葉隠先輩の似顔絵を描くこと。さかしらな管理教育にドロップキックをかます山口貴由初期作品。

炎のうさぎ戦士

Round2″どこの誰でも憧れるみんなのみんなの葉隠センパイ!”より

ざっくり言えば異種格闘もの。「覚悟のススメ」に登場するキャラの原型が多数登場して繰り広げる、初期特有のアッパーなノリがまず見どころ。かつ山口先生のキャラメイクの上手さが際立つ作品で、うさぎ、葉隠、そして教師の銭形、いずれもそうそう見れない独特の性格を持っています。特に銭形(↑)は暴言と箴言を使いわけるなかなかの名キャラクター。しかし彼に背を向ける主人公たちに、当時の山口先生の心境を見る思いです。

「ジャックポット」連載、全1巻で完結。主人公の風貌や環境も大きく変化し、うさぎは様々なものを失うとともに、やがて自分の戦うべき相手を見出していきます。1993年の単行本刊行後長らく入手困難でしたが、2013年に「悪鬼御用ガラン」とセットになった愛蔵版が発売されました。

ハナカク(松井勝法)

チビで弱虫の女の子が格闘技マニアの子に勧誘されて女子総合格闘技の門を叩くという、非常にスタンダードな構成の格闘技マンガです。ただし、強くなりたい理由はちょっとヒネってあります。

ハナカク

2rin”発光”(1巻収録)より

主人公が体格に恵まれない分、回避に優れているという設定がちょっと珍しい。煽りスキルの高い敵役がいい味を出していて、「負けられない戦い」みたいなのをしっかり演出してメインバトルに突入します。

女子格闘技が好きな方には普通におすすめ、興味がある女の子とかも参考になるかもしれません。4巻で突如終了、その後作者自身により著作権フリー可宣言(商用可)Kindle版の無料化がされました。

手のひらの熱を(北野詠一)

「姿勢がいい」ことが取り柄の平凡な少年・木野下慎也は、将来を嘱望される天才空手少年の柳屋匠とちょっとしたきっかけで知り合い、なりゆきで空手のレクチャーを受けることになる。一気に空手にハマっていく慎也はしかり、そのあまりにも突出した強さから孤高の存在と化していた匠もまた、物怖じしない慎也との約束をきっかけに未来を大きく変えようとしていた――


全3巻と短め(というか打ち切り)ですが、一歩間違えばかなりの人気作となっていたであろう作品です。テンポ良くキャラも良く、才能のある主人公が努力を怠らない読んでて燃えるスポ根マンガなんですが、途中から慎也との師弟関係が希薄になるのは否めない。あとちょっと表紙が地味過ぎるような気も……。

とはいえ逆に言えば、短さの割には満足度が高く、もっと読みたいと思わされます。

試し読み マガメガ

バトゥーキ(迫稔雄)

スケボーが上手でものを食べる時絶妙な顔つきになる、ごく普通の女子中学生・三條一里。何かを始めたい彼女は、怪しい風体のホームレスの流麗な体術に目を奪われてしまう。「バトゥーキ」と呼ばれるソレを学ぶことを決めた彼女は色々と不可解なレッスンを受けることになるが、それは彼女が本当の自分を見付け出す長い旅の第一歩に過ぎない――迫稔雄が挑む本格カポエイラ・コミック。

「嘘喰い」のゆらゆら動く格闘をメインに据えたような作品。「これを描きたい!」というのがバシッと出ていて、かつ前作より画面はぐっと見やすく整理されていて読んでてストレスを感じません。……一応序盤やたら頭がデカいのは気になりましたが、すぐ落ち着いてきます。変なギャグや戦略的思考も健在。

1~2巻同時発売でそこまでがプロローグ、3巻から本格的に一里の戦いがスタートします。思想やスタンスを含めたバトゥーキの学習フェイズにも力が入ってます。
ヤンジャン公式でカポエイラ動画(迫先生も参加)とか作ってますので、興味のある方はそちらもどうぞ。

試し読み 週刊ヤングジャンプ公式サイト

大江山流護身術道場(KAKERU)

「襲われ体質」で毎日のように痴漢に遭い、気付かぬところでストーカーにもロックオンされている女子校生の中村睦月。今日も当然のようにチンピラに路地裏に連れ込まれた彼女を助けてくれたのは、小柄な中学生の大江山夏だった。「試合をしたら負ける」「でも殺し合いなら大抵のやつには勝てる」と豪語する彼女に大江山流護身術道場を紹介された睦月は、そもそも護身術を「使う必要がない」ことを主眼、目潰しと金的を基礎とする超実用的護身術を学ぶことになる――

KAKERU先生は頭いいんだか悪いんだか、まじめなんだか不真面目なんだかよくわからない作家ですが、少なくとも作品の量産能力と主張を説得力ある形で提示する技術は高く、この作品で提示される護身術は実用的かつ納得のいくものです。しかしそれを読むべきと想定される女の子に対してぜんぜんおすすめできないのが、大量にある性犯罪じみた読者サービスシーン。これさえなければ護身術に興味のある女子にたいへんおすすめなんですが……。

ちなみに術自体もかなり過激な内容で、この作品の護身術をまともにやると人を殺す危険があるので、結局危ないところに近づかないのが最上。あとはピンチの時は「助けて」ではなく「火事だ」と叫ぶとか、いかに他の人間を引き込むかといった視点が当然のように存在するのも「護身」の本質をついています。
武術をやっても気迫で呑まれれば素人に負ける、達人も銃で撃たれれば死ぬ。そのあたりからの「強さ」に関する問いの提示もあり、武術をやってる人が読んでも面白い本かと思います。全2巻で完結。

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