時間停止にタイムトラベル。時間(時空もの)SF・ファンタジーマンガの頭こんがらがる世界

あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!


ざっくり時間系SFのまとめです。これまた結構歴史の長いジャンルで、小説にせよ映画にせよ「名作」とされる作品が(多くはないですが)ひとつふたつはどなたも思い当たるところがあるかと思います。マンガでいうとドラえもんとかになるんでしょうか。
色々アクロバティックなことをしやすいのか、現代でも割と頻繁に新作が発表される割と人気の高いジャンルです。やや突出してる感のあるループものは別カテゴリとしています。

【オススメ】刻刻(堀尾省太)

主人公たちがある理由で踏み込むことになる物語の舞台は、時の止まった世界、「止界」。そこではすくった水は空中で静止し、傾いた人間は傾いたまま停止します。このあたりの描写がリアルで説得力があり、その中で唯一動き回れる人間たちと比較して、「止まっている」ことがよくわかります。
ある意味で非常に安全なはずの止界では、しかし予想外の事態が待ち受けていて……。

刻刻

第四刻(1巻収録)より

面白いSFが読みたいならこれは読むべきです。1~2巻読んで大体設定がわかると急激に面白くなってきます。


全8巻で完結、無料の番外編もあり(『刻刻』番外編―300日後― )。本編読んでからのほうがいいかもです。

時の添乗員(岡崎二郎)

駅地下のとある旅行代理店では、一度だけ過去の「ある時点」を訪れることができるツアーが用意されている。
過去に囚われた人々はふと足を止め、人生を左右した瞬間へ向けて、隠された真実を知る旅に出ることになる――

SF短編の名手として知られる岡崎先生ですが、こちらでは時間もの縛りでストーリーを展開しています。
わりとハートフルな話が多く、全話完成度の高い構成をされたプロフェッショナルな仕事を楽しむことができます。

反面やはり使い古されたテーマのためか、危なげない仕上がりの代償としてさほどの新味はないという印象も受けます。ナンバリングされてますが1巻のみで完結、続巻はなし。
自分ならどこへ戻るだろうかとか考えると、なかなか妄想がはかどったりもする一冊です。

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フラグタイム(さと)

どーゆーわけか一日に3分間だけ時間を止めることができる少女・森谷美鈴。カップルの密会現場を発見したり、ひとの携帯を覗き込んだりと出歯亀ライフを楽しんでいた彼女だったが、まさか他にも止まった時間の中で動ける少女がいるとは知らずにいた――彼女のスカートの中を覗き込むまでは。
独占された時間の中でふたりの少女が小さな罪を積み重ねる、恋の始まりの物語。

フラグタイム

#2″私のこと好きなんだよ”(1巻収録)より


全2巻で完結。一応百合なんですが、いわゆる「百合」を期待して読むとがっかりするみたいです(レビュー調べ)。ぶっとんだギャグセンスとかわいい絵柄で徐々に知名度を増しているさと先生ですが、この作品ではギャグは少なめ。

小動物系少女の森谷は他人との関係を避けるために能力を使うクセがあり、たぶん読む人の多くは彼女の能力を何かに例えて読むと思います。この着眼点は僕は結構好きです(その解釈が正解かは知らない)。

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時間の歩き方(榎本ナリコ)

扉を開くとタイムスリップしてしまう特殊体質の女子校生・杉田果子。彼女の元に突然現れた未来から来たという男は「時間の歩き方」なるガイド本を忘れていくのだが、その小さなミスが過去と未来と凍った時間の中を旅する、果子の果てしない冒険のきっかけとなっていく――
かわいい絵柄でガチガチのタイムトラベルを味わえる、硬質な本格SFジュヴナイルです。ちょっと難解。

時間の歩き方

DOOR-Ⅰ(1巻収録)より

序盤のループ展開でまず「うおっ……」となりました。ヒネった作品が多い中今時ここまで正統派のタイムスリップものは貴重です。

かなり完成度の高い作品で伏線もしっかり回収され、二度読むとまた違った発見がある時間SFの隠れた名作です。「ネムキ」で2007~2013年連載、全4巻で完結

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オリンピア・キュクロス(ヤマザキマリ)

紀元前およそ400年、ギリシア――常人離れした身体能力を持ちながらも壺絵を志す青年・デメトリオスは、何かというと巨大な壺にひきこもっては落雷の直撃を受け、昭和中期~現代の日本へとタイムスリップしてしまう。そこで見るさまざまな趣向を凝らした運動や、経済の影響を強く受けるオリンピックは、時に古代ギリシアでデメトリオスの抱える難題を解決し、時に彼を深い悩みへと突き落とす。運動版テルマエ・ロマエ的タイムスリップ・コメディ。

オリンピア・キュクロス

第1話”運動会”(1巻収録)より

基本テルマエと似たような感じで、異世界転生ものに通じる文化輸入の化学反応を描く作りです。ただこっちのほうが話題の幅が広く、日本・ギリシアともに実在の有名人物も多数登場。デメトリオスは現代日本の人間に感化を受け、本来古代ギリシア人には持ちえない社会風刺性を背負っていくことになります。主人公がアスリートであると同時に絵描きでもあり、どちらも並行して追求するというのも珍しい設定。


タイムスリップした先の周囲の反応とか、持って帰ったアイデアの反応とか見ると結構ご都合な感じもするんですが、逆にそこでリアリズムにこだわらない昔話的鷹揚さがあるとも言えます。手塚治虫先生とかも出てくるんですが、なかなかの不審者ムーブをしててちょっと笑った。
「グランドジャンプ」で2018年~連載。

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五佰年BOX(宮尾行巳)

偶然その「箱」を手に入れた遠野叶多は特に深い考えもなく、箱庭のような世界に干渉してしまう。彼がいる時代の歴史にもまた改変が起き、身近な人間は消え、次第に残っていた記憶すら上書きされていくことを知った叶多は、元の世界を取り戻すために箱の秘密を探ることになるが――変形「時間接続」SF、全4.5巻で完結

五佰年BOX

第一話”叶多と真奈”(1巻収録)より

4.5というのは4巻で慌しく話を終えた後、描かれなかったエピソード(20ページぐらい)が電子書籍で別に発売されたためです。動画見るとどうも紙は追加されたようですが、版によっては全巻読んでも収録されてないエピソードがあるというのは留意点。「刻刻」のは番外編ですが、こっちはほぼほぼ本編です。


みなさんレビューでおっしゃるのと同様、僕も「勿体ない作品」という感想。しかしみんなして勿体ないと考えるということは、それ以外は面白いということです。めまぐるしく回転する展開は読まされますし、局所的に接続した過去の時代に神として実力行使できるという設定はかなりユニーク。読んで損する作品ではなかったです。
ちなみにタイトルよく間違えられてますが、伍百年ではなく、五佰年。

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時間停止勇者(光永康則)

世界から逃げ出したいと願った瞬間、葛野セカイは異世界にいた。彼に与えられたのは、時間を止め、自分ひとりだけが自由に動き回れる能力――そして、視界の隅に映る謎のカウントダウン。もしこれが制限時間だとしたら、彼に残された「動いている」時間はあと二日弱。それ以外の時間は全て停止しないといけない制約の中で、彼は(周囲から見て)一瞬の間に、訓練をし、姫君のスカートをめくり、道具を製作し、看板娘のパンツを脱がし、魔物を倒し、女騎士の甲冑を脱がして丁寧に組み立てる無敵の冒険者となる――

時間停止勇者

第1話”転移停止”(1巻収録)より

光永先生はややホラー寄りのファンタジーというイメージですが、本作はほぼなろう系のノリ。チート能力を使ってちょいちょいエロとギャグを挟みつつ、さりげなく戦略要素があったり話の展開がきびきびしてたり、ベテランの味が光ります。時間系能力×バトルという意味で、「サイケまたしても」の序盤が好きな人はかなり好きそう。


能力が能力なのでめちゃくちゃ読んでて安心感があり、どれだけアカン状況になってもどうにかなるだろうし、むしろどうやって抜け出すのか見てみたくなる作品です。「怪物王女」でループとかパラレルワールドとか色々やってましたが時間停止はなかった(たぶん温存した)ので、先生的には念願叶った作品なのかもしれません。

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