目を背けてもそこにあるリアル。障害者がメインキャラを務める、ハンディキャップドおすすめマンガ

逆に「健常」とは何か?

なんらかの身体障害(ハンディキャップ)を持つ人物が主人公やキーパーソンを務めるマンガのセレクションとなります。色々難しいところを孕むジャンルですがそこは本題ではないので、当サイトに差別的意図はない、とだけ書いておきます。タイトルからして別に障害者でも障がい者でも障碍者でもいいんですが、このへんの呼称からして統一されていないので時世を見て修正します。不快に思われるようならご容赦ご指摘願えれば幸いです。
現状では障害の種類はあまり限定してないですが、そのへんも様子見て考えます。

【オススメ】リアル(井上雄彦)

何をやってもうまくいかなくなっちまったのは、いつからだろう。バスケも高校もドロップアウトした野宮朋美は、偶然出会った車イスバスケの男、戸川清春と成り行きでバスケ勝負をすることになる。そこで見たのはひ弱な「障害者」のイメージを覆すスピーディなプレイ――バスケ漫画の大御所が斬新な切り口で挑む、パラリンピック系スポーツ漫画の最高峰。

リアル

1st.(1巻収録)より

「スラムダンク」では練習シーンや試合展開が記憶に残っていますが、こちらはリハビリやスタミナ治療、各人の事情といった「挫折」が強く印象に残っています。特に3~5巻あたりはかなり刺さりましたね……。


試合や剣劇シーンの華やかさ、圧倒的な画力に隠れて見過ごされがちな井上先生の人間ドラマを描く能力の高さを存分に味わえる作品です。例によって途中から刊行ペースが落ちて連載中断、完結したらまた読み返そうかな~と思ってますがするかな? という感じ。まあしないとしても読むに値する作品なので、機会があればぜひご一読を。

【オススメ】聲の形(大今良時)

クラスに、耳の聞こえない女の子がやってきた。明るくクラスの中心的存在だった石田将也は、彼女――西宮硝子にちょっかいをかけるが、それは聴覚障害者へのいじめへと変貌していくことになる。複雑な感情を抱えるふたりが再開することで生まれるドラマを描く、変形ボーイ・ミーツ・ガール。

聲の形

第7話”諦めたけど”(2巻収録)より


高い評価を受けつつもあまりにも危険な内容に講談社が警戒し、二度に渡る読み切り掲載を経てようやく週刊少年マガジンで連載され、多くの話題を呼んだ大ヒット作。この読み切り版はtwitterとかでもやたら話題になり、記憶にある人も多いと思います。

将也くんは僕の中で笑顔でいると嫌な予感がする主人公ナンバーワンで、基本彼がボコボコにされてあれこれ悩む話なんですが、単なるいい奴ではなくどうしようもない部分もあるのがいいですね。毒はありつつ基本的な話のノリは明るく、硝子もかわいくてリーダビリティは素晴らしく高いです。登場人物もエキセントリックな人が多く良くも悪くもしっかりとマンガ。


全7巻で完結。ちょいちょい実験的なことをしているのもポイントです。

【オススメ】淋しいのはアンタだけじゃない(吉本浩二)

あるイベントに参加したことをきっかけに、軽い気持ちで「聴覚障害」についてのドキュメンタリーを描くことになった吉本先生は、小学館コミック局のさくらい氏とともに多くの聴覚障害者のインタビューを開始する。時は2016年、2014年の佐村河内守氏によるゴーストライター事件の余韻冷めやらぬ時期であり、彼らは伝手をたどって佐村河内氏にインタビューを申し込むことになるが……彼は本当に「聞こえ」ているのか? 数値と本人の証言の乖離は何を意味する? 一般に知られざる「難聴」「耳鳴り」の実態をマンガというメディアの特性を生かして再現し、多くの反響を呼んだドキュメンタリー、全3巻。

割と健常者の耳がいきなり聞こえなくなることはよくあるようで、どっちかというと聴覚障害にご縁がない方こそ存在を覚えて帰って欲しい一冊。レビュアーはやはり障害をお持ちの方が多いですが、概ね高評価。

同時並行で映像作家の森達也氏もドキュメンタリー(「FAKE」)を作っており、マンガ内にもちょっと登場。自分が撮影される側に回る恐怖、あるいは真相を追い、それをマンガとしてアウトプットすることへの葛藤なども盛り込まれ、ただのお勉強マンガではない迫るような面白さがあります。オススメ。

試し読み ビッグコミックBROS

ヤンキー君と白杖ガール(うおやま)

目の下についた傷と喧嘩っぱやさから、周囲に恐れられる「黒ヒョウのモリ」こと黒川森生。そんな彼が突然恋に落ちたのは、盲学校に通う「弱視」の女子高生赤座ユキコだった。普通のデートもできない相手を本気で好きになるわけがないと、はなからやさぐれムードのユキコだったが――各種webコミック媒体で好評を博した、社会的マイノリティをテーマに据えたラブコメ。

ヤンキー君と白杖ガール

第18話”私を見て①”(1巻収録)より

しょっぱなから白杖を相手の尻に突き刺してて座頭一かと思いましたが、色がハッキリ違うと見えやすかったりするようです。
抱えているテーマはガチで、何か啓蒙したいことがあったらとりあえず面白いラブコメにしてしまい、広く人口に膾炙するというのはひとつの最適解なのかもしれないです。プレゼントの話の一連の流れとかすごく好き。


弱視の方でも楽しめるように、音声ガイド付きのボイスコミックも用意されてます。何かしながら聞くのにもべんり。

試し読み マンガハック

ナオゴーストレート(山本康人)

他人の感情に敏感過ぎて仕事でも恋でもダメを喰らい、ほとほと自分に嫌気がさしてしまったOL・紺野ナオ。そんな彼女は盲目の風変わりな男・山崎のどこまで本気かわからない言葉に乗っかり、盲導犬歩行指導員の募集に応募する。しかし彼女の前に現れるのは、人といい犬といいクセモノばかり。生存率25%といわれる過酷な職場を耐え抜いて、彼女は一人前の指導員になれるのか?

ナオゴーストレート

Step8″アンフィット”(2巻収録)より

ナオ自身が屈折した人生を歩んできているので、問題を抱えた他者に共感し、ものすごいおせっかいぶりでその心を揺さぶり倒すという構造が基本。絶妙に厄介なキャラが多いので問題へのシンパシーが高く、終わり際にはカタルシスがあります。

ただちょっと場当たり的な印象もあります。展開のためにキャラの性格ねじまげられることがあるというか……。
あと、犬の絵はめっちゃ上手いです。盲導犬訓練に興味はなくても、犬好きなら一読の価値はあるかも。全4巻で完結、Kindle Unlimited対象作品。

試し読み コミックシーモア

彼女の腕は掴めない(理央)

生まれつき両腕が欠損した女子高生・柚木崎遼は、ある日道端で謎の男・白鷺飛鳥と出会う。自分に対して好奇心も同情も示さない彼に温和な口調で誘拐(家出)をそそのかされた彼女は、男の住むマンションで軟禁という名の同棲生活を送ることになるが、白鷺が彼女を連れ去った理由が明らかになるとともに、陰惨な彼の過去も次第に物語の中核へと滑り込んでくることになる――

彼女の腕は掴めない

Eposode.01:Another(1巻収録)より

たぶん作者が普段思っていて言う機会のなかったことを作中で開陳していて、これに変な説得力とシンプルな訴求力があります。展開は結構場当たり的ですが、何考えてんだかよくわからない白鷺と遼がコメディタッチで繰り広げる日常描写はピリッとした味わいがあって、ついつい先に進まされるちょっとしたスリルがあります。


とりあえず設定でグッと攻めるタイプですね。サスペンスの盛り上げはなんかあんまり盛り上がってないので、普通に不気味な日常系だけで良かったんじゃないかという気はしますが、色々と目のつけどころがユニークな作品であることは確かです。

試し読み pixivコミック

志乃ちゃんは自分の名前が言えない(押見修造)

この春高校生になった大島志野にとって、自己紹介は恐怖でしかない。緊張すると言葉はつまり、どういうわけか母音はうまく発音できず、壊れた機械のように「お」だけが繰り返し口を出る――吃音症を題材にした一巻完結の青春マンガ。

志乃ちゃんは自分の名前が言えない

第2話”がんばる…がんばって…がんばろう”より

「当たり前のことができず、周囲に笑われる」という大ナタで読者の心をバッサリ刈り取る本作ですが、押見先生自身吃音をお持ちだったようで症状はリアルというか、たぶんかなり実体験。読み終えてから気付いたんですけど、志乃ちゃんと押見先生はイニシャルが同じです。

連載時期は「惡の華」と同じくらい。読者の心をざわめかせる心理描写は既に確立されていて一気に読まされます。上手いんですがただもうこれは話としてどうこうというより一種の膿出し、ルポ漫画に近いという感想で、何はともあれ生々しい。


これ書くために調べて知ったんですけど、吃音は国によっては障害認定されてるんですね。このカテゴリの他の作品に比べると障害としては「軽い」のかもしれませんがそれだけに難しい。彼女の周囲の人たちが悪い人たちではないというのが、この話のある意味最も救いがないところです。

試し読み Ohta Web Comic

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