動物はもちろんあんなものまで……。擬人化系マンガおすすめセレクション

すごーい!


古代宗教や迷信などの歴史は古く、何かを何かに見立てることは人類が知恵の実を口にした瞬間から与えられた能力のように思われます。神や悪魔も多くが擬人化の産物と見ることができます。文章方面で古代から見られる他、ご存知鳥獣戯画を始め絵画方面でもさまざまなものを「人」に見立てた作品が創作されました。いわんやその間にあるマンガでは言わずもがなです。
あとまあ最近では戦艦だの日本刀だのの擬人化がヒットしたりで、作品数もさりげなく増えてるような気がしたのでカテゴリ作ってみました。たーのしー!

【オススメ】綿の国星(大島弓子)

雨の日に須和野時夫に拾われたチビ猫は、自分のことを人間だと思っている(なので、人間として描かれる)。他の猫もついでに人型で描かれる――
猫耳の元祖と言われる作品で、そのキュートさでチビはたいへんとっても人気があったらしいです(そのせいで成長できなかった、と解説に書いてあったような)。
長編が少ないこともあり、大島先生の代表作のひとつとされています。

「吾輩は猫である」を少女漫画にしたような話で、ただ可愛いだけではなく観察と毒に裏打ちされた面白さがあります。

この作品の擬人化はあくまで読者向けで、人間にはチビは猫に見えています(読者と登場人物で見えている世界が違う)。この手法は他の作品でもよく使われているので、興味があれば他の大島作品も覗いてみて欲しいです。

【オススメ】はたらく細胞(清水茜)

細胞目線でとてつもなく巨大な工場として描かれた「体」の中を、方向音痴の赤血球や、殺戮に飢えた白血球、なぜか幼女の血小板が駆け回る。これは本当「その手があったか」と思いました。


ここしばらくの擬人化マンガでは最大の収穫だと思います。風邪やすり傷、花粉症を災害として描く発想もさることながら、労働感溢れるビジュアルも魅力。

細胞を労働者に設定し、カートで酸素運搬したり自販機置いてくつろがせたりするというこの設定を考え付いた時には、清水先生もガッツポーズだったんじゃないかと思います。

ヤスミーン(畑優以)

二足歩行するライオンが支配する王国。トムソンガゼルの青年ブエナはシマウマの子供を救うため、王国へ反旗を翻すことになる――バイオレンス・アニマルアクションの名作。

ヤスミーン

第11話”白い宝石”(2巻収録)より

「美食」を追求するために暴虐の限りを尽くすという王族の設定はシンプルに説得力があり、動物と食物連鎖の要素が入るだけで、この割と単純な話がこうも新鮮なものになるのかと驚きました。

全3巻。全国のケモナー必見の作品で、手塚先生も草葉の陰で喜んでおられるでしょう。動物たちの「くつろぎ方」や服装、表情とかも違和感がなく、デザインセンスの高い作品だと思います。

BEASTARS(板垣巴留)

肉食動物と草食動物が共存する社会。そこでは「当然のことながら」肉を食べる行為は違法とされ、肉食動物は本能を抑制し生きることを、草食動物は本能に負けた肉食動物に食殺される覚悟を常に強いられる。しかし心優しいハイイロオオカミのレゴシの通う寄宿制学校では、アルパカのテムが喰い殺される事件が起こり――
アッパークラスの動物たちのそれぞれの葛藤を描く、擬人化(擬動物化?)青春群像劇。

BEASTARS

第5話”ねぇ僕らだよ”(1巻収録)より

なかなか屈折した作品で、闇ディズ●ーとゆーか「あれの食事はどうなってんだ」というのを真面目にやってます。人間に置き換えるとかなり猟奇的な世界観ですが、清濁、あるいは大人と子供の狭間で揺れる悩みそのものは普遍的。性衝動などに適宜置き換えて読むと理解しやすいです。


ちょっと変わった青春群像ミステリ+バトルものとしてまず面白く、青春が作る瑕が心だけでなく身体もどんどん欠損させていく妙な「自己の肉体への無関心さ」があります。作者はバキの作者の娘さんなんですが変なところで作風が似ている。その上で「殺人(獣)」の必然性がある設定が効いてて、ビッチの兎とか直観的に脳髄にきます。ただ終盤はよくわからん。
前作にあたるオムニバス「ビーストコンプレックス」の好評を受け、「週刊少年チャンピオン」で2016年~2020連載、全22巻で完結

類似作 東京喰種(石田スイ)、ヤスミーン(畑優以)

試し読み 秋田書店公式サイト

ケモノキングダムZOO(もち)

上野動物園を擬国化したアッパーヤードでは、パンダ王の夭逝により東西分裂の内戦状態が勃発していた。しかしパンダ王には隠し子がいるという噂があり――一部擬人化された動物たちが入り乱れる、ハイテンションアニマルギャグ。

ケモノキングダムZOO

獣②”ウサギとヤマネ”(1巻収録)より

発想にいい感じの飛躍感があり、動物の習性を生かしたギャグはかなり笑えます。残念な美形キャラとドMが多く登場し、どっちかというと女性向け。


「月刊ARIA」で2010~2012年連載。余計なお世話ですが、表紙もっと賑やかにしたほうが内容伝わって良かったんじゃないかという気がします。全2巻で完結

試し読み 講談社コミックプラス

群れなせ!シートン学園(山下文吾)

あらゆるケダモノが入り乱れ、教師は恐竜の私立シートン学園――数少ない人間である間様人(人間♂)は、牝野瞳(人間♀)と仲良くなりたくて仕方がない。しかし成り行きで餌付けした(文字通り)狼少女の大狼ランカになつかれたことから、彼の日常は動物少女たちに侵食されていくことに――?

開始早々ラブコメ・コメディ・お色気・動物雑学とセールスポイントを次々打ち出し、「こういうマンガだ」ということをアピールしてくるお手並みはお見事。女の子もそれぞれ個性的でかわいく、ランカのちびっこさはもうなんかズルい。

雑学をオチにうまく持ってくる回が多いですが特にコアラ少女のインパクトは強烈で、正直笑いましたしタメになりました。ギャグに熱血、恋の三角関係と意外と幅広い展開でスルスル読ませますし意外と止まらなくなります。サイコミで無料で読めますので、気になったらどうぞ。

試し読み サイコミ

深海魚のアンコさん(犬犬)

人魚の受け入れが盛んなとある町。人魚好きが嵩じてほぼ常時セクハラ状態の女子高生・若狭乙見は、チョウチンアンコウの堤鮟子をはじめとするクラスメイトたちと楽しい日常を送っていた。ただ、人魚マニアの彼女としては、ぜひとも鮟子の真の姿――尾ビレも一度見てみたいところではある。

深海魚のアンコさん

第5話”孤毒の転校生”(1巻収録)より

魚類は深海魚に限らず色々、お魚豆知識も披露しつつ、羞恥系人魚日常コメディとしてまったりと進行。チルアウトな面白さですがキャラが立ってるし、こまかいギャグのセンスがいいです。彼氏ができてうな充しているうなぎ娘がお気に入り。
魚を擬人化した作品は結構多いんですが、「魚 擬人化 漫画」で検索すると本作が目立つ位置に来るあたり、結構人気ある模様(2021年時点)。


マンボウ最弱伝説は割とデマらしいですがそれはさておき、鮟子や満房さんなど尾びれが開いた時の姿が若干ホラーで、デザイン的にもちょっと刺さるものがありました。「COMIC メテオ」で2012~2015年連載、全4巻で完結

類似作 メダカくん、さよなら。(こうのとり昇)、モルトバール (マダカン)など

試し読み COMICメテオ

ブラウザ娘(原作:Merryweather 漫画:Princess Hinghoi)

Internet Explorerの朝は早い。windowsPCの新規ユーザーはまずは彼女を起動し、インターネットの輝かしい世界へ新たな一歩を歩み出す。そして彼女に最初の命令を与えるのだ、「Google Chromeをダウンロードしてください」、と――ネットユーザーの心に罪悪感を植えつける、不憫で可愛いブラウザ擬人化娘たちのショート・ショート。

やってくれるよ、という感じ。1話1話が非常に短く、単行本化が難しそうな作品ではありますがブラウザで読むべき作品のような気もしますし、そうなると大体の人がGoogle ChromeかFirefoxかSafariあたりで読むと思うので、禁断の果実をむさぼるような居心地の悪さを楽しむことができるマンガです。マンガハック、ニコニコ静画などで読めます(無料)。

作者はデンマーク人とのこと。北欧の方だとノキアちゃんとかブラックベリーちゃんとかのマンガ描いても楽しそうですね(あるかな)。
途中謎の胸熱展開がありおおっ! と思いましたが、IE系の根本的な問題はスピードよりも隙の多さと協調性のなさのような気も……。

試し読み マンガハック

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