人工知能は夢を見るのか。アンドロイド・ヒューマノイド等、自律型ロボットマンガ選

アシモフ的ロボットの定義


本来のSF的に言えば、「ロボット」は自律思考を持つことが定義です。なんですけど某スーパーロボット大戦とかもありますので、最近は人間が乗り込むような機械もロボットと呼ぶのが一般的です(大抵モビルスーツとかレイバーとか、「ロボット」以外の呼称が付けられてますが)。
ここで紹介するのはそういう自律思考型のロボットを扱ったマンガで、レプリカント・ホムンクルス等のいわゆる人造人間・改造人間は含まず、機械式のみなさんが登場する作品を扱っています。境目が微妙なのはその時その時考えます。

アトム ザ・ビギニング(原案:手塚治虫 コンセプトワークス:ゆうきまさみ 漫画:カサハラテツロー)

練馬大学で人工知能の開発に勤しむ天馬午太郎とお茶の水博志は、「心」を持つ新システム「ベヴストザイン」搭載機、A106(通称シックス)の開発に成功する。「感情」を持ち、優れた性能を示すシックスだったが、時として開発者の予想もつかない行動を見せることがあった――

「鉄腕アトム」ではライバルとなるふたりの若き日々を描く、ロボットアクションメインのスピンオフ。

めちゃめちゃ高い運動性能を誇りブーストで空を飛ぶSF的ロボットと、「ディープラーニング」や「哲学的ゾンビ」などの現代的な人工知能論が同時に存在するよくわからん科学水準の世界が舞台。
ロボットのデザインはスタイリッシュでかっこいいですが、スタイリッシュさの欠片もないあの黒パンはいつ出てくるのかなーとワクワクしながら読んでいる自分がいたりもします。

試し読み 月刊ヒーローズ公式サイト

ORIGIN(Boichi)

極度にロボット工学が発展した世界――その進化は、市井の人間の想像を超えていた。自らを創造した父の言葉に応えるため、人の中に潜む人ならざるものと争い合うことになった孤独なロボット・オリジン。経済的苦労に面しつつ自らをアップデートしていきたい彼は、超一流研究所にサラリーマンとして勤めることを決めるのだが……。

個人的にはDr.STONEのほうが好きですがコレもなかなか。Boichi先生本来の画風で絵に「描くことの喜び」があり、まずその力強い画力に圧倒されます。決めゴマを多用した画面はかっこよく、女の子はかわいく、ロボットの描写はクリーピー。

「困った」と呟きつつ瞬間瞬間悔いのないように生きようとするオリジンの姿は本人の予想を超えて自律的・人間的で、献身的な犬を見るようないじましさがあり見ていて少しツライです。

試し読み WEBヤンマガ

【オススメ】預言者ピッピ(地下沢中也)

ピッピは超高度なデータ解析を行う地震予知ロボット。発生する3カ月前から大規模地震を「預言」することで数多くの人命を救うことに成功してきた。
ところがある出来事を境として、ピッピはその「もう一歩先」へと足を踏み入れてしまう。彼の進化は人類にとって福音なのか、あるいは――

ややマイナーですが、続刊がうまいこと続けば漫画史に残る名作になるだろうと評価されていた作品です。

ただ残念ながら未完の傑作となりそうな雰囲気ですね。第1巻が出たのが2007年で、2巻が2011年、既刊はこれだけです(3巻出たら更新します)。

【オススメ】AIの遺伝子(山田胡瓜)

これも味わい深いいいマンガです。最初「A・Iが止まらない!」のリメイクかなんかだと勘違いしてました。

一言で言うと「ヒューマノイド版ブラックジャック」ですが、ホラーやサスペンス要素はほとんどなく、概ねヒューマンな感じです。

舞台は未来世界、主人公は電子系の医者。冒頭で脳から直接ネットに接続する「インプラント」と呼ばれる技術の手術を受け終えた少年は、早速接続し、こう叫びます。「今日開通した! 俺もチャット入れて!」
この描写は、「なぜ人はインプラントを受けるのか」を見事に説明しています。

というように、全体的に手つきはなめらか。続刊も面白いんですが僕は1巻が好きで、最初読んだ時はゾクゾクしました。全8巻で完結後、内戦国家を舞台とした続編「Red Queen」でかなりハードな世界観へとシフトします。

イヴの時間(原作:吉浦康裕 漫画:太田優姫)

アンドロイドが家電として普及し、過度にアンドロイドに感情移入する人は「ドリ系」と呼ばれ、ちょっとイタい人として扱われる世界。かつてピアニストを目指した少年向坂リクオは、アンドロイド「サミィ」のアクセスログを調べたことから、アンドロイドと人間を区別しない喫茶店「イヴの時間」へと足を踏み入れることになる。
そこで目にしたのは、普通の人間同様に感情を見せ、恋人と語り合い、時には愚痴をこぼすアンドロイドの姿だった――

架空のマイノリティを扱った作品ということで、「なぜドリ系では駄目なのか」がよくわからないんですが、外側から見ると社会の空気というのはそんなものなのかもしれないですね。

元はアニメ作品で、これはコミカライズみたいです。アニメのほうは見てませんがどうもかなり高い評価を受けているようなので、そっちから入るほうがいいのかもしれません。

王子くん(田村由美)

品行方正、成績優秀、だが何かがおかしい転校生の王子くん。時々謎の煙を吐き出す彼の存在も気になるところだが、学校内では別の問題も勃発していた。高圧的な教師が、生徒に暴行を加えているというのだ――(”王子くん”)
表題作の他、天気記号を小道具に使った「晴れ、ときどき闇。」、ある屋敷の暗部を描く「霧の家」、大富豪コメディ「不幸作家と呼ばれたい」を収録。

ミステリー仕立ての「霧の家」が僕は割と好きですが、不幸作家も田村先生の作品観が垣間見えて興味深いです。
バラエティに富んでいますが、田村先生の作品集としてはかなり明るい部類の短編集。

ヨコハマ買い出し紀行(芦奈野ひとし)

「西の岬」で背の高いすすきの原を抜けると、嘘のように突然現れる喫茶店「カフェ・アルファ」。そこの女店主である初瀬野アルファは時々やってくるお客さんとお喋りを楽しみ、豆が切れるとスクーターに乗ってヨコハマまで買い出しに出かける日々を送っている。穏やかで斜陽的で、てろてろとした毎日は溶けるように少しずつ形を変えていく――


作中で明言される情報は少ないですが、実はこの世界は終末期にあり人類は滅亡へ向かっていること、アルファはロボットであり年をとらないことなどが少しずつ明かされていきます。……これがストーリーの根幹にかかわる部分なら伏せたまま紹介するんですが、知っていても読む上でなんの支障もないです。新日常系というのともまた違う、穏やかな諦観に満ちた幸福な余生とでもいうのか。

アルファと普通の人間では「同じ時間」を生きていけるわけもなく、途中から一種の寂しさのようなものが物語に陰を差し挟み始めます。

基本的に日常系以外の何物でもなく、アフタヌーンらしいゆるさがあります。刺激は少ない話なのでちょっと読んで積読でしたが、弱った時にふと読み直したら一発でハマりました。全14巻、新装版で全10巻。

機械仕掛けの愛(業田良家)

街のあらゆるところにロボットがあふれる未来。彼らは仕事人として、恋人として、あるいはペットとして人の生活に寄り添い続ける。ロボットと心中しようとする男、自分と娘の記憶を託した主婦、用済みになれば捨てようとする経営者……機械の「愛」を通して人を描くSFオムニバス。

タイトルから察せられる通りヒューマン系メインですが、毒のある話や戦争の話も多いです。
クラシック映画のような妙な品があり、とりあえず1~2巻は強くおすすめ。4巻以降はだんだんB級感出てくるかも。


「未来計算機」とか好きですけど、世界感がこの話のせいでだいぶ変わった感はあります。オチが上手いと思ったのは1巻の「グレイト・シード」。

試し読み ビッグコミックBros

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