嫌われがちだが頼れる人たち。警察マンガに見る警察官の生活と実態、実録ものから捜査アクションまで色々

前の車止まってくださーい


なんかとっても久しぶりのカテゴリ追加となりますが、最近カテゴリ増やし過ぎて作品数が少ないカテゴリが多くなり、追加するための作品を探す時間も取れずにいて「こういうことしたかったわけじゃないんだよな……」という違和感があったため、こんな感じでたま~に追加する形を取ることになりました。そもそもカテゴリに追加するためにマンガ探すというのも本末転倒なんですが。
てなわけで前置き長くなりましたが、法治社会の前提を成立させる警察官を取り扱ったマンガのカテゴリとなります。自衛隊や宇宙飛行士ほど極限状況が想定されるわけではないですが、場合によっては自他の死に直結する状況に身を置かざるを得ない絶妙な按配の仕事ものとなります。何しろ人口も多いので、警察出身の方がマンガ描くようなのも増えてきました。全く現場に出ない内勤ものとかも出てくる用語がバイオレンスで、ちょっと特殊な面白さがあります。
とりあえず刑事もの(鑑識や科捜研を含む)もここに入れますがそのうち分離する予定で、もうちょっと一般的な制服警察官、あるいは内部の人たちの話をメインにする予定。フィクション・ノンフィクションは問いませんが、完全ノンフィクションを謳う作品はなかなか出しづらそうなジャンルです。

ハコヅメ ~交番女子の逆襲~(泰三子)

某県警に実際に所属した、元交番女子漫画家が描く警察官の赤裸々な素顔! 的なやつです。短編の好評を受けて安定した職を辞しての連載化ということのようで、話題の作品になって本当に良かったですね……。
「逆襲」とかいうのでどんだけ暴露するのかと思いきや登場人物は割とまっとうで面白い人々、どこか抜けた刑事たちもやるべきことはやってて、かえって警察官の好感度が上がる結果となりました。

ハコヅメ ~交番女子の逆襲~

その1″アンボックス”(1巻収録)より

「あれは警察官から見るとそういう感じなのか」という自然な驚きとリアリティがあります。そうした実体験の裏打ちもありつつ、単純に日常コメディ(たまにシリアス)として実に面白いです。ただの「ルポ」ではない。


というわけで、笑える仕事ものお探しであれば割とめっけものかと思います。やっぱり激務なわけで仕事への愚痴も多く描かれ、そのへんは一応逆襲してるので、警察官志望の方も参考になるかと。

試し読み モアイ

ちさと巡査、現場へ急行せよ!!(橘芽生子)

なんとなくたまに見る、男社会で大変らしい、しかしそこから先がよくわからない女性警察官の生活の実態。そのへんのことを新人警官岩崎ちさとの目を通じ、実際の生活を暴露するかなりノンフィクションっぽいエピソードが散見される警察コミック。

ちさと巡査、現場へ急行せよ!!

第4話より

コメディっぽいエピソードからドキッとするような話まで、硬軟取り混ざる警察官の日々を描く意味で日常系の範疇に入る作品です。基本的に男女を完全に同じ扱いをする警察の中で、それでもどうしても守られてしまったり、あるいは女性にしかできない仕事があったりのささやかな描写がリアル。交番勤務の実態を知る上で、「ハコヅメ」と併せておすすめ。


不評極まるネズミ捕りでの住民とのやり取りなど、警察の客商売的な部分を描いた話も多い印象。強制力があるところはサービス業とはちょっと違いますが……。
ちなみに女性警察官はめちゃくちゃモテるそうで一応? 恋愛要素もあり。

試し読み リイドカフェ

死体コトはこんなことではなかった ~新米女警は見た!~(原作:ざかマチちさと 漫画:ゴトー)

さしたる覚悟もなく警察官となり、交番に配属された新人巡査・山岡愛生22歳。しかしその日、彼女が訪れた現場は窓に蠅がたかり、異臭の立ち込めるアパートの一室。中には一瞬にして辞職の決意を固めさせるほどの凄惨な状況が待ち受けている。部屋に入るなり嗚咽し、何もできず固まる山岡だったが……。

死体コトはこんなことではなかった ~新米女警は見た!~

episode5(1巻収録)より

かわいい丸っこい絵で多少緩和されているとはいえ、最初のエピソードが強烈過ぎて夢に出ました。その後のepisode4もスリリングな話ではありましたが、ギャップで癒しがすごかったです。
刺激性の強さは保証できますし、交番で暇そうにしてる警官もこうした仕事をされていると思うと素直に頭が下がります。人身事故の際の警察の動きなどあまり語られることのない話もあり、ミステリ勢としても興味深く読みました。

媒体がメジャーならもっと話題になっていい作品だと思いますが、こんなん雑誌に載ってたら確実に苦情が殺到するので、知る人ぞ知る作品でいざるを得ないのがややもどかしい。虫・グロ注意。
2021年にmangaDOCKレーベルで各種電子書籍媒体で販売(描き下ろし)。合冊版として全2巻で完結。Amazonの2巻が表紙・試し読みとも別の作品になってる(2022時点)のは早めに直して欲しいところです。

試し読み コミックシーモア

野宮警部補は許さない(宵田佳)

前部署での実績が認められ、晴れて憧れの本部(警視庁)勤務となった女性職員の橋本檸美。配属部署は警務部特別対応室――そこで彼女が遭遇するのは思ったよりもこじんまりとした部屋、妙に和気あいあいとしたエリート感皆無の職員たち、そして彼女に対して「警察官にも本部の仕事にも夢を見ないほうがいい」と言い放つ、教育係の野宮警部補。人間的には面倒きわまる彼だったが、いざ仕事となるとタチの悪い警察官をとことん追い詰める仕事の鬼と化す――? 警察内部調査をライトに描く、ちょっと変わった「捜査」マンガ。

野宮警部補は許さない

file2″不受理の被害届”(1巻収録)より

特別対応室の仕事は作中の説明を借りれば「監察のサポート役」。秩序の番人警察官といえども所詮人間、パワハラ上司や調子に乗った若いのもいるわけで、そうした問題行動を犯罪になる前段階で処理するという見るからにストレスフルな仕事です。とはいえそこは警察、調査もプロなわけでしっかり下ごしらえをし、野宮警部補がいかに相手をコテンパンにするかを楽しむようなマンガです。


そういう意味である種復讐ものに近いカタルシスがあります。殺人や強盗を扱うこともある他の警察ものに比べると題材的にそこまで重くない分出てくる案件は身近で、「うちの会社にもこういう機関欲しい」と感じる人も多そうですね(野宮警部補ほどの「逸材」はそうそう配属されないでしょうが)。

試し読み コミックぜにょん

【オススメ】デカガール(原作:長崎尚志 漫画:芳崎せいむ)

強い嗅覚と非凡な発想を持つが、諸事情により刑事への道を諦めかけていた日野まる香は、やはり諸事情により静岡県警本部捜査一課強行班三係に配属されることとなる。事件だけでなく「刑事」という職についた人々をも描くヒューマン系刑事ドラマ。

絵は柔らかめですが殺人課の話です。主人公の素朴で芯のあるキャラクターは非常に魅力的。凄惨な事件も過度に刺激的に描かれず、ちょっとしたロマンスもあって男女問わずおすすめ。

ストーリーもかなり骨太で、最終的に物語はひとつの大きな事件へと収斂していきます。熱い展開もあって読めば読むほど面白くなり、終わり方は「いい加減」でスパッと切り上げます。全6巻で完結。

試し読み 講談社コミックプラス

COPPERS(オノ・ナツメ)

NYPD51分署に、「着任初日と最終日に何か事件が起きる」というジンクスを持つ副署長・カッツェルが署長代理としてやってきた。日本人のジャーナリスト、毎日のようにやってきて「署を取り壊せ」と主張する老人、近所のデリの従業員、そして刑事や警官たち……ニューヨーク市警を舞台とした群像劇。

COPPERS

CASE1″署長不在初日”(1巻収録)より

各人のエピソードを消化しつつ、提示したいくつかの含みを消化して終わるまとまりの良さ、シビアながらもどことなくのどかな雰囲気が魅力です(割と治安が良い)。オノ先生の作品らしく食事シーンも多め。日常系に近いですが、たまにシビアな一面を覗かせます。
作画はイラストテイストで好み分かれるかも。


「モーニング・ツー」で2008~2009年連載、全2巻で完結

類似作 Danza、ACCA13区監察課

試し読み 講談社コミックプラス

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