まえがき
ダーク・ファンタジーというジャンルに、明確な定義があるわけではありません。おおざっぱに毒が強い作品、残酷性やバッドエンド指向等が強いファンタジー作品、というようなニュアンスで選んだカテゴリとなります。
進撃の巨人(諫山創)
1~2巻ぐらいから割とプッシュされていましたが、いつの間にか日本で最も有名なマンガのひとつまで登り詰めてしまった国産ダークファンタジーのエース。「おっさんの形をした巨人たちが多幸感に満ちた表情で人を食べる」という強烈な絵面でまず読者をノックアウトしてきますが、サスペンス・ミステリー成分も高く、世界の全容が明かされていくストーリー、緻密に張られた伏線・布石と圧巻の構成も見どころ。
30記事以上書いてやっとこれを紹介できることに若干の感慨を感じないでもないです。
中盤からはまあまあ別のマンガ。そっちはそっちで面白いし最後まで読むべきですが、序盤がとにかく独創的で最高。
「別冊少年マガジン」で2009~2021年連載、全34巻で完結。一部の謎が放置されてますが、考察され倒した結果というか、ちょっと有名になり過ぎてしまった作品という印象もあります。
なんにせよ今後も長く読み継がれるであろう、2010年代を代表するマンガのひとつです。
試し読み マガポケ
ベルセルク(三浦建太郎)
隻眼・隻腕にして、大剣を操る「黒の剣士」ガッツ。狂おしい思いに突き動かされ、異形の怪物「使徒」を笑いながら殺戮する彼に、かつて何が起きたのか。物語は過去へ飛び、運命の因果が紐解かれていく。
三浦先生と元「少年ジャンプ」編集長の鳥嶋和彦さんの対談で、鳥嶋さんは「僕が編集者だったらああいう展開にはさせない」という旨の発言をされています。この発言はある程度的を得ていた感があり、あまりにも盛り上げてしまったために燃え尽きてしまったようなところがあります。
逆に言えば三浦先生の才能が、一度全てそこに凝縮したような爆発的なカタルシスがこの作品最大の売り。未読ならぜひ一度味わってみて欲しいです。
「月刊アニマルハウス」で1989~、後進の「ヤングアニマル」で1992年~連載。
2021年、三浦先生が急逝。世界中のファンに惜しまれつつも全40巻にて中断、未完。
類似作 進撃の巨人(諫山創)、かつて神だった獣たちへ(めいびい)
試し読み コミックシーモア
メイドインアビス(つくしあきひと)
正確な深さが不明な超巨大な縦穴、「アビス」。その中では特異な生態系と、超常的な力を持つ「遺物」たちが、探窟家たちを待ち受けている。ただし、潜れば潜るほど戻った時の上昇不可は強く、六層以下に進んだ者はほぼ確実に死に至る。
伝説の探窟家を母に持つ少女・リコ。彼女は謎の少年(遺物?)レグと共に、アビスの底へと母を探す旅に出る。
アビスは潜ること自体に負荷があり、滞在するだけでも嘔吐や頭痛をともないます。道中で遭遇する探窟家も協力的とは限りません。これらの障害を突破してアビスの底へと辿り着けたとしても、戻ることができないという初手から詰んだ設定。度し難い。
試し読み まんがライフWIN
シャドーハウス(ソウマトウ)
不思議な館で顔のない少女に仕える、生き人形の少女エミリコ。仕事は掃除、裁縫、そしていずれは主人の「顔」となること――
同時期では「約束のネバーランド」にやや近く、読んで連想したのはゲームの「ICO」。同じ作者の「黒」がお好きな方はマストバイの作品です。
試し読み コミックシーモア
ドロヘドロ(林田球)
とかげ男と拳法女が廃墟のような街で「魔法使い」と戦う、割と何がなんだかわからない状況からスタートするダーク・ファンタジーです。
読み進めるうちに段々と、実はかなり親切なマンガだということがわかってきます。とかげ男(カイマン)廻りだけごちゃごちゃしていますがそれ以外はそれほど難解なことはなく、ノリも明るく、女の子も何気にかわいいです(体格はごついですが)。
アヴァルト(光永康則)
謎の怪物「スパゲッティ」に侵略される人類。しかし彼らは抵抗の牙を持たない。持つ必要がない。なぜならばある程度人が殺されたところを見計らったかのように、神々「アヴァルト」が現れてお救いたまうからだ――「どこかで見たような設定」を複雑に組み合わせて「どこにもない物語」を組み立てる、ファンタジーとSFの間を予測不可能な形で移動するサバイバルダークファンタジー。
描写が淡泊で肌感覚としての絶望感は薄いので、進撃の巨人的なノリを期待するとちょっと肩透かしかもしれないです。グロ描写も(このカテゴリとしては)控えめ。
かつて神だった獣たちへ(めいびい)
戦乱を鎮め、平和を取り戻すために異形となった擬神兵たち。救国の英雄はしかしいずれも、やがて人格を失い獣へと成り果てていく宿命を背負っていた。自らも擬神兵として戦乱に立っていた男は、本当の意味で戦争を終わらせるために獣たちを狩り続ける。そんな彼の前にある日ひとりの少女が現れ、父の仇を晴らすべく銃口を向ける――
この設定が持つべき重厚さに欠けますが良く言えば軽快。6巻が割と好き。
試し読み 講談社コミックプラス
ブラス・ナックル(技来静也)
1885年、西部開拓時代のアメリカ。「血の雨」の異名を持つ元ヘビー級ボクサーの賞金首ヴィクター・フリーマンは、開幕早々助けを求める娘に散弾銃をぶちこみ、保安官にしょっぴかれることになる。ただの血に飢えた殺人鬼と見做されるが、彼はそれを気にしない。人の血をすする怪物の存在など、他人が信じるはずもないからだ。
ちなみに技来先生と三浦建太郎先生、森恒二先生は高校の同級生。
「ヤングアニマル」で1992~1995年連載、全3巻で完結。打ち切りになるようなクオリティの作品ではないので、ツッコミが多かったのか自ら幕を引いたのか。3巻の表紙がネタバレしてるのは衝撃的でした。
類似作 ベルセルク(三浦建太郎)
試し読み BookLive!コミック
サラリーマンの不死戯なダンジョン(原作:昼熊 構成:平石六 漫画:Tuesday)
サラリーマンの山岸網綱は、洞窟で再び目を覚ます。彼の前には獰猛な黒虎。死ねば開始位置に戻されるダンジョンで、網綱は幾度も同じステージをクリアしては、クリア報酬を獲得して強くなっていく。このゲームじみたダンジョンの奥には、一体何が待っているのか? 「死に戻り」系なろう人気作コミカライズ。
マンガとしては正直下手だと思います(まず主人公がリーマンに見えない)が、服の皺の描き方などにフジリュー的フェチズムがあり、発展すると面白くなりそうな絵です。
原作もちょっと読んだ感じ変な文章でなく、完結もしてるようなのでそっちで読むのもアリかと思います。「マンガUP!」で2021年~連載。
類似作 CUBE(映画)、煉獄デッドロール(原作:河本ほむら 漫画:吉村英明)
試し読み マンガUP!
DMD(ツナミノユウ)
「ごん、お前だったのか」――童話「ごんぎつね」の結末を迎え、絶望の淵に立った猟師・兵十は、ビルの立ち並ぶ現代的な世界で新たな生を受ける――怪物たちを倒して刑期を減らし、人々に蔑まれる「悪役(ヴィラン)」の一員として。アッパー系ギャグの名手が新境地を拓くハードボイルド・アクション。
土曜24:00または日曜0:00になりました「DMD(ダムド)」第26話公開!先読みは28話まで公開!告知絵。カティさんは本編に出ませんが描きたかったので………………のでです… https://t.co/zpImW2AiY4 #DMD_ダムド #ごんお前だったのか pic.twitter.com/iAQnZK0kB1
— ツナミノユウ (@tsunaminozazen) 2019年11月2日
終盤はツナミノ作品ファンにはちょっと嬉しい展開も。全2巻で完結、媒体は電子書籍のみ。
試し読み サイコミ
躯シャンデリア(厘のミキ)
死者は労働力として再利用され、死者に愛着を持つものは死体愛好者(ネクロフィリア)の大罪とされる世界――ネクロマンサー・ゼンの元で家事全般を請け負うグール・ヨマイは、ゼンの命令により他者と話すことを禁じられている。人を喰らう怪物でありながら人懐こい性格の少年と、それを使役する謎めいた男による新感覚主従スプラッタコメディ。
厘の先生の作品は「心変わり」を描く作品が多い印象で、それまで愛着を示していたものに急に興味を失ったり、諦めたりする描写も謎に魅力的。最終的にゼンとヨマイのなれそめが描かれ、少し消化不良ながらも全3巻で完結。「ARIA」で2010~2011年連載。
試し読み コミックシーモア
二度目の勇者は復讐の道を嗤い歩む(原作:木塚ネロ キャラクター原案:真空 漫画:四方屋やも)
なぜ一度目の俺は、こいつらの本性に気付かなかったのだろう? 仲間を信じ抜き、最後には裏切られた「元」勇者宇景海人。しかし彼の時間はこの世界に召喚された場面へと巻き戻された。裏切られた記憶が残った勇者は、復讐者として自分を裏切ったものたちを血祭りにあげることを誓う――
絵的には割ときれいめでとっつきやすく、暗黒面に落ちた主人公が協力者を増やし……みたいな展開もそこはかとなく中二心をそそります。あとバトロワとかの、ひとりひとりひどい目に遭うあの感じが好きな人なんかだと楽しめるかも。
試し読み コミックシーモア
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