私を見下ろしてる私は誰?時に哀しく時に恐ろしいおすすめ幽霊マンガ群

進め一億火の玉だ

ふわふわ浮いたり写真に写ったり枕元に立ったりする幽霊のみなさんをフィーチャーしたおすすめマンガのコーナーです。かなり人気のある題材でホラーはもちろんヒューマン、バトル、恋愛にコメディとあらゆるジャンルで存在感を放っていますが、大体の基準としては幽霊がメインである(妖怪とかとセットでない)ことぐらいで、色々こちら側の世界にご招待する形で作品数を増加させていきたい所存です。霊能者ものはオカルトカテゴリでも扱います。

【オススメ】まじめな時間(清家雪子)

高校生の植村一紗は幽霊として目を覚ます――そして交通事故で帰らぬ人となったことを知り、自分を轢いたトラックの運転手も、心臓発作で亡くなっていたことを知る。詰まる所運以外の理由なく彼女は死んだ。文字通り宙ぶらりんの彼女は、好きな男の子の後をなんとなく尾行してみたり、更衣室を除く変態幽霊を蹴っ飛ばしたり。それぞれにお別れを済ませた人々は彼女を過去へ置き去りにし、日常へと戻っていく。それは寂しいことだけど、必要なことでもあった――

まじめな時間

第3話”厳格な変奏曲”(1巻収録)より

幽霊ものとしてはクラシックな作りですが、とにかく上手いです。特に序盤、「死」にまつわる話にも関わらず軽妙なユーモアで重苦しさを感じさせず、まずは場を和ませてから本題に切り込んでいく敏腕営業マンのような話運びの流麗さは特筆すべきものだと思います。

割とよく名前を聞く作品で、清家先生だとダントツこれが僕は好き。コミカルな展開から後半は一変、マンガで泣かされそうになった数少ない作品のひとつでもあります。

【オススメ】青野くんに触りたいから死にたい(椎名うみ)

彼女はふいに恋に落ちた。付き合うことになった。そしてその後すぐに彼は死んだ――若干メンヘラのヒロインが自分も死を選ぼうとした時、青野くんが幽霊となって現れる! しかし青野くんの中には、「違う」青野くんも潜んでいて……シュールなギャグと痛々しいラブ、そして意外にも盛り上がるホラー要素と盛り込みまくった内容で独特の世界を構築する、戦慄のラブストーリー。

青野くん

第4話”もう一人の青野くん”(1巻収録)より


次どう来るか全く予想がつかないというのが初読の印象。そしてめちゃめちゃ面白い。ほとんど妄信的に青野くんへの恋へ突き進むヒロインが、幽霊となった青野くんを受け入れようとすることで引き起こされる展開はコミカルな描写との強いギャップがあり、「死」の気配を濃厚に漂わせます。さらに現象は他の人間を巻き込むようになり……。

愛した人が幽霊となって現れて、あなたを「求めた」時にどうするか? 普遍的でありながら斬新な切り口で迫る怪作です。オススメ。

試し読み アフタヌーン公式サイト

黄昏乙女×アムネジア(めいびい)

長い歴史を誇る丘の上の私立誠教学園、旧校舎の薄暗がり――1年生の新谷貞一は、そこで「旧校舎の幽霊」こと庚夕子と遭遇する。長い黒髪と猫のような眼、人懐こい態度と時折見せる陰。学園に伝わる七不思議の謎を追いながら、夕子は貞一にあけすけな好意を寄せ始め、しだいに貞一も彼女に惹かれ始める。初期「月刊ガンガンJOKER」で好評を博した新感覚幽霊譚、全10巻。

ヤンデレというか死ンデレというかゾンデレというか、とにかく多面的で表情豊かな夕子さんの存在が最大の魅力。着替えはするわ飯は喰うはで幽霊というかほぼ透明人間、ただし貞一くん以外からするとただの女の子ではなく……?

特に2巻好きですね。相当思い切ったことをしてます。「新感覚」という定番フレーズをあらすじに使ってますが、実はこのサイトでほぼ使ったことないワードです。

試し読み ガンガンJOKER公式サイト

幽子さんは見られたい(若林稔弥)

「見える」ことを知られれば、幽霊につきまとわれる。だから里見は幽子さんを無視する。しかしこの話の作者はラブコメの名手若林先生、必然そうなれば始まるのは、ウザ絡みする女子とそれをシカトする男子の攻防戦……!

幽子さんは見られたい

2巻より

同人誌を電子書籍化したものということで、とりあえずめちゃくちゃ短いです。20Pぐらい。ノリ的には「徒然チルドレン」の出張版という感じで、ホラー要素はほぼゼロ。「黄昏乙女×アムネジア」系の幽霊ラブコメが読みたければ読むとちょっとだけ幸せになれます。


2018年発表、全2巻。同じく若林先生の短編だと「クラスメイトが悪霊退治してた話」(無料)というのもあり、後書きによるとクロスオーバーする可能性もあるそうで、一応続編が出る可能性が残されてます。Kindle Unlimited対象作品、他いろんなとこで読めます。

試し読み スキマ

夜人(岡部閏)

悪霊たちが目に見える少女・恩田衣子。彼女は同級生が幽体離脱できることを知り、自分の部屋に居座る悪霊(通称ウノ子)の退治を依頼する。彼ら夜にのみ幽体離脱できる人間たちは「夜人」と呼ばれ、ある動画をきっかけに能力に目覚めるらしいのだが……。

夜人

第1話(1巻収録)より

読者を時に恐怖させ、時に笑いの渦に叩き込む意外性が売り。毎回毎回引きで何かしら仕掛けてくるのですが、本当に色んな形で驚きを提供してくれて、定期的に期待が満たされる心地よさがあります。


「世界鬼」の作者らしいちょっと倫理観の外れた世界観、唐突な絶望描写なども健在。2018年末より作者病気療養のため休載中。

試し読み 裏サンデー

見える子ちゃん(泉朝樹)

見てはならない悪霊たちがバリバリ見えてしまう系女子・みこ。もしやつらに「見えている」とバレたら、どうなっちゃうのかわからない。家の中でも授業中でも見て見ぬフリをし続ける、みこの受難を描くシチュエーション・コメディ。

見える子ちゃん

第2話(1巻収録)より

他のマンガなら霊能者に泣きつきそうな状況ですが、圧倒的スルースキルによりその手前で踏みとどまってるマンガ。「見えているものが人間か幽霊か判別する術がない」「周りの人間に対しても演技しないといけない」ので、どんな状況でもスリリングに(あるいはシュールに)変貌させることができますが、反面気を抜くとワンパターンに陥りやすい設定でもあります。


序盤は正直さほど。その後徐々に設定を積み上げていき、一度それをザッと消化する3巻が割と好きです。気色悪い幽霊を描く画力も高め。一冊読むとお化け屋敷を通過したような読後感ですが、ちょっといい話もちょいちょいあります。レビュー見る感じ、微妙なエロスに反応してる人も多いようで。2018年~Web各媒体で連載。

試し読み pixivコミック

不老姉弟(師走ゆき)

生まれつきの霊媒体質で、それぞれ一人ずつだと悪霊に襲われるが、ふたり揃うと幽霊を吹き飛ばす力を持つ不老恭子・大輔の姉弟(双子)。しかし高校生ともなった今、あまりにも常にベタベタ一緒にいるふたりは、いささか周囲から奇異の目で見られることに。思うところあり、恭子は姉弟離れを心に決めるが……。

不老姉弟

第1話より

師走先生は「アテナ新人大賞」で大賞を受賞して本作でデビューしたんですが、この賞は滅多に大賞が出ない(最近はそうでもないけど)ことで有名で、編集部の期待の高さが伺えます。のちにヒット作となる「高嶺と花」の片鱗が伺える……というか、すでにかなり面白い。幽霊ものの特性を生かし、ツイストのきいたエピソードが多めです。


2010~2011年「花とゆめ」に連載、全1巻で完結


最初の話なんかは、「好きな人が女の子とデートしてるのを目撃! →妹でした」みたいなパターンの亜種だと思いますが、変なひねりかたしてくるなあと。終わり方も恋愛もの風に締めてるし一話で心中未遂してるし、さりげなくアブノーマルな雰囲気がある作品でした。少女漫画はなにげに近親恋愛ネタ多いし、わざとなのかな。

試し読み 白泉社公式ページ

カコとニセ探偵(光永康則)

あらゆる難事件を快刀乱麻に解決する(元)少年探偵・六波羅覚。その神がかった推理とは、実は死者の姿を見て、そのメッセージを「翻訳」することで成立していた。
暗部に切り込み過ぎて敵を多く作り、家庭は離散、学校では孤立……そんな彼の前に現れたのは、カコと名乗る謎の自縛霊。怨霊を祓う力を持つ彼女の力を借りて、覚は事件の背後に潜む超常現象にまで挑んでいくことになる。光永康則流オカルト系ミステリ。

カコとニセ探偵

第24話”掴めぬ正体”(3巻収録)より

比較的あっさり終わり、完成度的には「怪物王女」「アヴァルト」のほうがおすすめ。しかし露骨にコナン君やデスノートをパクるパロディ精神、油断してると意外と怖いホラー要素、「主観」の世界の謎を追う3巻の展開の新鮮さなど見どころは多く、変ミス好きなら一読の価値はあります。

あと序盤はそうでもないですが、途中からパンチラがやたら増えます。浮遊霊でパンチラはまだしも、土下座してパンチラはほんと光永先生さあ……と思いました。
「週刊ヤングジャンプ」で2014年読みきり掲載、2015年連載、全4巻で完結

類似作 心霊探偵八雲(神永学、小説)、兄妹 少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿(木々津克久)

試し読み コミックシーモア

ゆめのかよいじ(大野安之)

古くて広くて複雑な構造の木造校舎。その一室で、彼女はひっそりと佇む少女の幽霊と出会う。古びていく景色、そこにこめられた人々の思念、日常的な営みが折り重なった街並みの密度。やがて失われていくとしても、形を変えて伝えられていくものもある――
使い込まれて黒光りする木の床に寝転んで静かな時間を満喫する主人公の姿は、建物の取り壊し、近代化を喜ぶ周囲の生徒から大きく乖離しています。

ゆめのかよいじ

Vol.1″音楽室”より

概ね民俗学系百合ファンタジーなんですが、最後突然SFになって仰天しました。マンガ図書館Zで読めます。

派手な作品ではないですが、刺さる人には刺さるかと。リメイクされたバージョンもあり、こちらではSF部分がカットされて別の話が挿入され、話の統一化が図られたようです。絵的にもかなり今風になっていて、旧来のファンからはあまり評判が良くないようですが(下記リンクはリメイク版)。

空想郵便局(朝陽昇)

毎日同じことの繰り返し。これがいつまでも続くのか――そんなことを思っていた矢先、バイク事故で意識不明の重体となったごく普通の少年・真今。99%死んでいる彼だったが、箱や手紙の形をした「奇跡」を届ける仕事をすることで命を稼げば、生き返ることができるという。かくして喋る鳩を相棒(上司)に配達人となった真今だったが、基本的に怪しまれて荷物を受け取ってもらえず、色々策を弄することに――そもそも、彼が届けている「奇跡」とはなんなのか? 時として歯車の狂う人の人生を左右する一瞬を描く、オムニバスヒューマン漫画。

空想郵便局

第三話”賭ける”(1巻収録)より

設定はまあよくあるやつですがかなりこれ好きで、面白いの読んだー! テンション上がったー! という感じではなく、じわりと「いいな……」という感想が残りました。ホラーとかサスペンスは割とやることやってれば誰でも作れるんですが、こういうよくできたヒューマンは人間性というかセンスが問われ、選ばれた民の作品だなーと感じます。話の締めくくりかた、セリフ回しが実にいい。


普通に人と会話ができてご飯も食べられる珍しい幽霊もの、全3巻。ほぼ外れの話もなく後味もよく、終わり方もいい感じで完成度は相当高いです。表紙が地味でどうかな、と思って読んだんですが、これは正解でした。

幽霊の正体見たり、枯れ頭。(小花オト)

高校生にしてイケメンにして学校の人気者にして凄腕霊媒師、法霊崎帝は、美少女の姿となった怨霊に不覚にもときめいてしまう。すったもんだあって彼女と「遊んであげる」ことになった法霊崎の手をネトネトした手が握り、美少女だったものはおそるべき変化を遂げた。ホラー要素皆無の幽霊ギャグ漫画。

幽霊の正体見たり、枯れ頭。

願い事 其の一(1巻収録)より

どちらかと言えば同作者の「翼くんはあかぬけたいのに」のほうがおすすめですけど、こちらもよろしければ。僕は最初から小花先生だと知ってて読みましたが、何も知らないでこれ読むとなかなかの表紙詐欺かもしれません。
絶対タイトルから設定考えてる画面の絶望的落差と、飛び道具的な言語センスで連射されるギャグが見どころ。


「月刊ビッグガンガン」で2016~2018年連載、全2巻で完結

試し読み BOOK☆WALKER

それは霊のしわざです(Noise)

やや対人関係を諦め気味の少年・鳥居望の前に現れた転校生は、誰もが目を惹かれる美少女・霧島京子――と、その後ろにいる、望にしか見えない見るからにヤバそうな背後霊。この霊は彼女の命を削る悪霊なのか、それともこう見えてふたりの恋のキューピッドなのか?

それは霊のしわざです

第1話”出会いは突然に”(1巻収録)より

初期の悪霊ムーブが嘘のように守護霊っぽくなっていく背後霊さんですが、目的は不明、素性も不明、見た目はほぼ貞子でご都合ラブコメの本作におけるトリックスター役、実質的な主人公ぐらいの活躍を見せてくれます。ラブコメと見せかけた悪霊萌えマンガと言っても過言ではない。


主人公とヒロインは悪霊に比べると没個性的で、ラブコメとしてもサクサクめ。このふたりがどうというより、周りにいる妹とか、怪しげな和尚とかで話をにぎやかすような作りです。
プロトタイプはDAYSNEO投稿作品のようで、キャラデザが結構ちがいます。「コミックDAYS」で2020年~連載。

試し読み マガポケ

おなクラの幽霊さん(あどべんちゃら)

学年一位の学力と強気な性格、絵に描いたような風紀委員の影崎きさらには、眠りに落ちると幽体離脱するという特殊体質があった。同じく幽霊が見える体質を持つ同じクラスの人気者、蓮見葉一と付き合うことになった彼女だが、嘘だらけの自分が作った設定に縛られて、自分が「幽霊さん」であると恋人(相手はそれを知らない)に打ち明けることができない。
しかも学校には男女交際禁止の校則があり、立場上きさらは葉一と「幽霊さん」の恋に反対しないと不自然で――自縄自縛の特殊設定ラブコメ。

おなクラの幽霊さん

第2話(1巻収録)より

状況設定に強制されて演技し続けるヒロインという時点でテクニカルですが、それに加えてヒロインと恋愛の障害が同一人物というのが面白い設定。それにより葉一の前で常に演技を強いられ、秘かに喜んだり怒ったりと忙しいきさらのかわいさ、話転がしの巧みさが見どころ。「勘違い」や「口が滑る」展開も織り交ぜ、あの手この手でストーリーをこじらせてくれます。

そういう構造的な面白さや心理描写メインの評価で、純粋に恋愛ものを読みたい方向けではないかも。個人的には結構好き。
「まんがタイムきららフォワード」で2018~2019年連載、全3巻で完結

試し読み コミックシーモア

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