これもひとつの愛の形だ。題材として実は面白い、オタクが主人公のおすすめマンガ

己の山道を

札束が宙を舞い屋根のあたりに水蒸気で雲ができる、オタク漫画のおすすめセレクションです。ひと昔前だとオタクはほぼ犯罪者みたいな扱いでしたがなんか時代もすっかり変わったというか、そのへんは寛容な社会になってきたのか作品数も随分と増えました。親世代の人にオタクの人が増えたからかな、という気もします。
オタクとひとくくりにしてますがマニアでもギークでもよくて、要は「何かひとつのジャンルに異様な情熱と知識量を持つ人」ならOK。とはいえアニメ・マンガ・ゲームあたりがメインとはなります。
腐女子は別カテゴリですが、他のジャンルを含む場合ここで紹介することもあります。

ヲタクに恋は難しい(ふじた)

pixivで連載開始後着実に知名度を上げ、コミックスされるや「このマンガがすごい!」2015年オンナ編1位を獲得、一気にメジャー作品となった感のある会社員オタクカップルの生態を描いた恋愛マンガです。

メインキャラはできる眼鏡にしてゲーム廃人の二藤宏嵩、美人だが隠れ腐女子の桃瀬成海、ふたりの同僚で顔は怖いがアニメ好きの樺倉太郎、同じく同僚で実は有名コスプレイヤーの一面を持つ小柳花子の四名。タイトルからして恋愛マンガ……のはずなんですが、どっちかと言うとアーパー寄りの日常系オタクマンガといった仕上がり。

amazon1巻のレビューが☆1つばっかりでいっそ壮観ですが、僕は普通に楽しんで読みました。このタイトルでなんの葛藤もなく話が進むので、そこで反感を持つ人が多いのは一応わかります。

試し読み pixivコミック

オレが腐女子でアイツが百合オタで(アジイチ)

百合好き男子高校生の吉田くんと腐女子の保科さんが、ヤベェ名前の幽霊の呪いで身体が入れ替わってしまう人格転移系オタクスクールコメディです。全4巻と短めでサクッと終わりますがこれがなかなか。

心は男ですが体は女なわけで、その気になれば百合展開に突入できるわけですがそこで葛藤する吉田の主張がなかなか熱い。「百合男子」が好きな人にもおすすめ。

ヒロインも地味にやってることめちゃくちゃで、割とニヤニヤしながら読みました。

試し読み BOOK☆WALKER

【オススメ】マキとマミ ~上司が衰退ジャンルのオタ仲間だった話~(町田粥)

公式からの供給がストップした衰退ジャンルに未だ褪せぬ情熱を持ち続ける古参オタ・森山マミ。そんな彼女はある日できる女上司の間宮マキに呼び出され、自分も同類であることを明かされる――全国の衰退ジャンリストたちの熱い支持を集めた感のある、楽し気な悲壮感が漂うオタクコメディの名作。

マキとマミ ~上司が衰退ジャンルのオタ仲間だった話~

第44話”学くんの好きなもの”(4巻収録)より

正直あまり共感できずに読んでましたが、そういえばアレとかアレとか……読む人それぞれの美しい思い出と喪失の悲しみを掘り起こすとより楽しめる作品です(やり過ぎるとしばらく帰ってこれなくなるので注意)。現在進行形で沼の中の人はもう、共感するところしきりかと。


特にマキさんが優秀なのにアレなお姉さんぶり全開で、言うことなすこと面白いです。1巻はナンバリングされてないですが話は続き、「このマンガがすごい!2019」オンナ編8位などを受賞、(題材に反して?)メジャー作品となりました。pixivコミックで2017~2020年連載、全4巻で完結

試し読み pixivコミック

隠れオタクの恋愛戦略(大場玲耶)

隠れオタクの成海春斗は、同じクラスの進藤結衣を隠れオタクだと推定した。隠れオタクの進藤結衣は、自分の好きなものを好きと公言することに抵抗がある。成海はオタ友が欲しく、彼女にオタクだということをカミングアウトして欲しい。進藤は成海にオタクだとバレたくない。なぜかというと、アニメ嫌い(ということになっている)の彼のことが好きだから……ふたりがひたすらすれ違うオタクあるある系ラブコメ。掲載誌は月マガですがやっぱりpixivで読めます。

カラオケの選曲だのLINEのアイコンだのいちいち悩ましい隠れオタクの生態をうまく切り取っていて、「あ、わかんないけどわかる」みたいな感じで色々ニヤニヤしながら読めるマンガでした。全2巻で完結。

試し読み pixivコミック

ポテン・ヒット・ガール(丸顔めめ)

アラサー直前男っ気なし、給料は野球観戦に吸い込まれるOLの佐々木はるこ(DeNAベイスターズファン)。類は友を呼ぶというのか、彼女の友人たちもなかなかいずれも濃い人格をお持ちのようで、ガールズトークはさながら趣味性の坩堝。さらに球場で新たなる友達とどう見てもヤクザの幹部なオニーサンとの出会いもあり……悲喜こもごもの野球系日常コミック。

異常に細かい字で描かれたオタク系OLの生態を眺めるマンガです。全2巻で完結。1巻からなんとなく恋愛ものにいきそうな布石を張ってましたが、さてその結末は……?

これは野球観戦好きな人(できればベイスターズファン)なら楽しいだろうな、と思うくすぐりが盛りだくさん、売りがどこかといったらまずそこです。あとはるこの間の抜けた笑顔がなんか好きですね。

いちいちせいち(汐里)

卓越したビジネスセンス、クールで知的な風貌から「氷の帝王」の異名を取るジョシュア・ゴードン。大手文具メーカーに新しい社長として現れた彼の秘書となった吉川夏は、なぜかアニメやドラマの聖地巡りに付き合わされ、ちょっと想像とは違った形で彼の信頼を獲得していくことになる。そんなこんなでしだいに心の距離を狭めていく二人だったが……?

序盤に懐かしめのドラマが集中していて一見おっさんホイホイですが、登場作品は「東京ラブストーリー」「あの花」「耳をすませば」「シン・ゴジラ」「ひぐらしのなく頃に」などなんでもありです。ただの聖地巡礼だけでなく、その物語の魅力や見どころを作者自身の言葉で解説し、ストーリー上の問題にその解釈によって気付きがもたらされる、あるいは参照した作品をなぞるように物語が動く……という隙のない構成。


地味ながらも中毒性のある良品です。「聖地巡礼って何が楽しいの?」と思ってたんですけど、こう見せられるとアリのような気にさせられますね。全3巻で完結

試し読み モアイ

すべての人類を破壊する。それらは再生できない。(原作:伊瀬勝良 漫画:横田卓馬 監修・協力:ウィザーズ・オブ・ザ・コースト)

来年アンゴルモアの大王がやってきて、世界は滅びると言われていた時代。そんなこと誰も信じてないけどどこか終末感のある1998年、TCG「マジック・ザ・ギャザリング」にどハマりしている中学生の神納はじめは、ある日ゲームショップで優等生の沢渡慧美と遭遇する。ノスタルジーあふれるMTGラブストーリー。

さくら大戦、YAT安心!宇宙旅行、聖剣伝説3といった、90年代末の流行りものや文化が多く登場するおっさんホイホイ要素が魅力のひとつ。神納くんはたぶんカードダスと筋ケシも大量に持ってますね。


タイトル見てパッと「ああ、MTGのマンガか」とわかる人がメインターゲットっぽいですが、未来からこの時期を振り返ったような描写も挿入され、少しミステリアスで懐古的なラブコメとしても興味を引くのでお若い方もどうぞ。「月刊少年エース」で2019年~連載。

試し読み ComicWalker

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