「日常」は当たり前のものだった、少し前までは。新日常系おすすめマンガ選

基本鬱

通常の日常系に対し、「日常系の後ろで何か悲惨な出来事が起きている」「実は切羽つまった状況である」「だんだんひどいことになっていく」などの要素により日常のかけがえのなさを痛感させる作品を指して新日常系と呼ぶそうです。アニメ「結城友奈は勇者である」(通称ゆゆゆ)の製作局プロデューサーの方が提言した概念で、新しいジャンルなので定義が割と曖昧(そもそも日常系自体も曖昧)。過去作にも該当するものがあれば追加していきます。
「日常系でいたいけどいられない」という特質上、日常系とは違い物語はどこか違う地点を目指そうとすることが多いです。このサイトでは「日常系描写がメイン」かつ「それを脅かす脅威が存在する」ことを基準にセレクトしています。

※このカテゴリの性質上、紹介作品に対するネタバレ要素を含みます(というか、このカテゴリで紹介すること自体がネタバレになる)。ご了承ください。

【オススメ】最終兵器彼女(高橋しん)

かわいくてちょっとどんくさい普通の女子高生・ちせと、目つきが悪くぶっきらぼうだが実は優しいシュウジ。地球最後の恋は、北海道の小さな街で産声をあげた――

最終兵器彼女

第四章″ふゆみ先輩(1)”(2巻収録)より

第一話のほのぼのとしたラブストーリーから一転、超展開の第二話から凄まじい鬱展開を見せていく終末系恋愛ドラマ。「いいひと。」からのこれなので、当時かなり驚きました。

通称「サイカノ」。セカイ系でも鬱作品でも終末SFでもトップを張れるよーな作品ですが、日常の貴重さを痛感させられるという意味でやっぱこのカテゴリかなーと。
作中の重要な出来事について、なぜそうなったのかという設定的な説明はなされません。あくまで人間ドラマが主軸のマンガです。読み進めるのが割ときついので注意。
「ビッグコミックスピリッツ」で2000~2001年連載、全7巻+外伝1巻で完結

試し読み BookLive

がっこうぐらし!(原作:海法紀光(ニトロプラス) 漫画:千葉サドル)

学校の中で友人たちと寝泊まりする部活、「学園生活部」に所属する丈槍由紀。遠足や肝試しといったイベントも盛りだくさん、楽しい学校生活のはずだけど、大切な何かを忘れているような気がする……。
どっちかというアニメのはっちゃけた演出で話題を呼びました。できればwikiやレビューを極力見ないで1巻を読んで欲しいところです。

新日常系の代表格のひとつと見做される作品です。「ニトロプラス」という文字を見た瞬間に嫌な予感がしましたが期待を裏切りませんでした。

もうなんかいたるところでネタバレされてるので、ここで初見の人はラッキーです(あんまりそういう人はいないでしょうが)。

ミサイルとプランクトン(原作:田中ロミオ 漫画:筒井大志)

■■した世界で、実動ミサイルの作成を目指す謎の部活「ミサイル部」。そこに集う部員たちは、それぞれ明日への不安や絶望を内に抱えている。部長の青海翔太に恋をする達子祥もまた、人に言えない秘密を隠しながら、青海のためにミサイル建設に精を出す日々を送っていた。しかし青海の目的は、ミサイル建設そのものではなく――
特殊な世界観を舞台とした、群像学園変形ラブコメ。

ミサイルとプランクトン

01″ミサイル部”(1巻収録)より

わきあいあいとした日常にSFや心の闇が忍び寄るロミオ先生らしい作風。筒井先生らしい明るいドタバタが意外にブラックなストーリーと好対照になっています。後半急ぎ足ですがメッセージ性も明快。

元は「電撃大王」に2013年掲載の読み切り(リンク先ネタバレあり)を連載用にブラッシュアップし、同誌に2014~2016年連載、全3巻で完結。ストーリー監修を務めた「うるわし怪盗アリス」以外だとロミオ先生唯一のマンガ原作作品で、筒井先生は「ぼくたちは勉強ができない」でヒットするちょっと前の作品。

類似作 がっこうぐらし!

試し読み ComicWalker

【オススメ】この世界の片隅に(こうの史代)

昭和19年、呉――戦時中の広島近辺を舞台に、ひとりの女性の結婚、続いていく日常を描く戦時中マンガです。相当な数の文献をあたられたようで、戦中生活についてコマ外で細々とした説明がなされ、一見穏やかな日々の裏側で何が起こっているのかを不足なく読者に知らしめてくれる丁寧な作り。ほのぼのしたこうの作品の世界に戦中スローガンが入り込み、食事が粗末になり、登場人物が作中から消えていきます。

悲惨さを主張するような作品ではなく、むしろユーモアを前面に出してくるために、かえって暗幕の後ろの現実が一瞬覗いた時の恐怖が背筋を冷やします。人の死も大げさに扱われず、日常の一コマとして淡々と処理され、同じページでもう次のギャグが始まる姿はかなりクール。

こうの先生の作品では毒が何層にも膜に包まれて提示される印象ですが、このマンガではそれが剥き出しの形で露呈する瞬間があり、再び穏やかな日常描写に戻りつつも心臓のあたりに棘が残ります。

エイリアン9(富沢ひとし)

小学生がなりなくない係ナンバー1・エイリアン対策係にされてしまった小学6年生の大谷ゆり。共生型のエイリアン・ボウグを頭にかぶり、しっかりものの川村くみ、明るい天才型の遠峰かすみとともに学校に現れるエイリアンを捕まえる毎日は、「予定外」のエイリアンが現れて一線を越えていく。アニメ化もされた富沢ひとしの代表作。

序盤はまだどうにか平和ですが、しだいに僕の知ってる日常とちがうという違和感がたちのぼり、不気味なエイリアンに小学生が立ち向かう姿には不安感が漂います。ボウグのキャラクターも愛嬌がありつつ得体が知れない。終盤のいびつさはゾクゾクします。

一度読んだだけだとよくわからなかったんですが、しばらく考えたり読み返したりすると色々発見がありました。無印3巻、続編のエミュレイター1巻、ネクスト連載中、コンプリートは無印3巻+描き下ろし付きです。話としては無印で完結するので、残りはお好みであれば。

試し読み ソク読み スキマ(ネクスト)

【オススメ】とつくにの少女(ながべ)

人を人外へと変える呪いの感染を恐れ、「内」と「外」に分けられた世界――とつくにで暮らすたしなめ系幼女・シーヴァと大真面目な「せんせい」の、ありうべくもない穏やかな日々。ふたりは不器用に家事をこなし、やがて来る何かを待っている。

絵がめっちゃいい! 凄く上手い! そして物語もちゃんとしてます。


これはこのカテゴリに置くのでいいのか少し迷いますが超オススメ。鬱系なのかは未知数ですが、ゴーリー風の絵本のようなタッチの中で優しくも冷酷な世界を描くややダークメルヘンな作風です。

試し読み MAGCOMI

義母と娘のブルース(桜沢鈴)

のんびり屋の父・良一が連れてきた再婚相手は、超やり手キャリアウーマンの岩木亜希子。仕事はできるが子育てはズレまくってる彼女に反発する娘・みゆきだったが、なんだかんだで段々家族らしくなっていく。しかし実は、ふたりの結婚には隠された事情があって……。

桜沢先生がやりたいことを追求した結果「4コマでやってはいけないことを片っ端からやる」マンガとなっており、そのひとつとしてこのマンガには時間経過があります。ふつーにギャグ寄りの4コマ読んでたつもりがまさかの感動作。このカテゴリで紹介することになるとは思いませんでした。

連載終了数年後に綾瀬はるか主演でドラマ化され、これに合わせて新装版が発売されました。元版のfinalが新装版の下巻にあたり、全2巻で完結。

試し読み コミックシーモア

他にもこんなマンガでありふれた日常に罅が入っています

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