悪趣味万歳
昨日まで人間だった人が怪物化していくマンガをセレクトしました。基本的には姿形は人間のまま行動だけが化け物になることが望ましいですが、人間形→進化形といった例もありますので、必ずしもこの限りではありません。
人間型で怪物ならいいというわけではなく、例えば「東京喰種」は基本的に喰種が感染しないので別枠としました。あとこれは微妙な線なんですが、「これはゾンビものとして紹介してはいけない」と判断したものとかも抜いてあります。
僕はあまりディープなゾンビものファンではない、というかあんまり見ないほうなんですが、最近また流行ってるのか普通に読んでたら普通にたくさんあったので、がんばってまとめてみました。
アイアムアヒーロー(花沢健吾)
というわけで、まずは今一番知名度の高そうなところから。これはもうさすがにここで紹介してOKだと判断しました。1巻ラストの展開で話題を呼んだ2010年代を代表するゾンビマンガです。
登場するゾンビはZQNと呼ばれ、外見上知能は低く、動作は非常に機敏で走ることも可能。噛まれることで感染するタイプです。
丁寧な分メリハリがわかりにくく、どことなくのっぺりとしたマンガだという印象も受けますが、「化け物に変貌した人間を見たい欲」みたいなのはしっかりと満たしてくれます。「ビッグコミックスピリッツ」で2009~2017年連載、全22巻で完結。
試し読み ビッグコミックBROS.
屍鬼(藤崎竜)
原作は小野不由美。これに関しては、先に小説で読んだほうがいいかもな……と正直思います。あっちのほうが怖い。
とはいえこの漫画版がとっつきやすいのは事実。ストーリーも少し違います。
舞台は外界から隔絶された小さな村。村人の不審な死体が発見されるが、原因は不明。さらに次々と死者は増えていき、村の医者はある仮説を立てるが……。
「ジャンプスクエア」で2008~2011年連載。全11巻、文庫版全6巻で完結。
試し読み eBookJapan
屍町アンデッド(磐秋ハル)
人を襲う「屍体」を巨大な黒い箱の中に封じ込め、かりそめの平和な日々を送るX県鹿羽市鹿羽町。しかし地下道に好奇心で足を踏み入れた少年たちが持ち帰ったウイルスが、箱の外へ新たな地獄を拡大していく。感染した「屍体」に対して普段の温和な性格から想像もつかない暴力性を見せ、その身体を切りとる高校の化学教師・葛城柘榴の目的とは――
完全に人間型ではなく少し変形しますが、ゾンビマンガ好きならそこそこおすすめ。ただグロシーン多い割に読んでて「痛く」ないな、とは感じます。それもあってホラーとしては(このカテゴリ内では)さほどですが、キャラの感じなどちょっと女性向けなので、彼女をゾンビ道に引きずり込みたい場合など有用な作品かと思います。全4巻で完結。
試し読み となりのヤングジャンプ
就職難!! ゾンビ取りガール(福満しげゆき)
これも噛まれると感染するタイプです。ゾンビが普通に徘徊する社会を舞台に、それを駆除する業者たちの活躍を描く作品。
とこう描くとなんかハードそうですが全体のノリはかなりユルく、道具開発マニアの中堅社員と、新人バイト女子のラブコメ要素がメインであり、危険が薄いと判断されたゾンビはそのへんにいても普通に放置されてたりします。
前身となる短編「日本のアルバイト」を2003年「アックス」で発表(「カワイコちゃんを2度見る」収録)後、「モーニング」および「週刊Dモーニング」で2012~2014年連載、全2巻で完結。短い中でかなり満足度の高い内容です。もっと続いて欲しかった。
試し読み モーニング公式サイト
べっちんとまんだら(松本次郎)
この世とあの世の中継地点、杉並区のとある河川敷で、戦車の中で寝泊まりする女子高生べっちんと、その友人(?)まんだら。今日も河川敷には空中から、いくつもの死体やものが降ってくる。そして夜になると死体はゆっくりと起き上がり……。
バイトとしてゾンビ狩りをする彼女たちは、なぜここにいるのか。謎が謎を呼び、大体の謎は謎のまま終わる不可思議なエログロ女子高生アクション。
個人的にはかなり好きなんですが人に勧めるかというと決してそんなことはなく、ピンとくる人だけこっそり読んでひそかに楽しむような作品だと思っております。全1巻で完結。
試し読み 大田出版公式サイト
こころ オブ・ザ・デッド(原作:夏目漱石 アメイジング翻案:架神恭介 漫画:目黒三吉)
こんなん笑うに決まってんだろ。しがないゾンビハンターだった「私」が、先生と出会うところから物語は始まる。中略、「K」や坊ちゃんが登場し、彼らは半ゾンビ化したお嬢さんを救うために次々とゾンビを屠りながら旅を続けていくことになる……まじめにあらすじ書くのも嫌になるんですが、大体そういう感じです。現状無料で読めます。→こころ オブ・ザ・デッド
ちょっと前に「高慢と偏見」という名作にゾンビをブッコんだ「高慢と偏見とゾンビ」という作品が海外で出版されまして、めちゃくちゃ売れてしまったんですがその系譜ということになると思います。アレとは違ってこちらは大分アメイジングに翻案されていますが。「吾輩は猫である」翻案の猫の存在感のなさといったらもう……。
バイバイ人類(原作:渡辺恒造 漫画:萩原あさ美)
「あるび田市」で廃校探険に来た少女四人は、そこで「奴ら」が人を襲っている現場を目撃してしまう。間一髪逃げ延びた彼女たちだったが、それは日常の崩壊の前触れに過ぎなかった……。
爆弾作りを得意とするぼっち女子真山真矢を主人公に据え、コミュニティを形作り、知性を持つ「奴ら」と人類との水面下での争いを描く、テロリズム系感染サスペンス。
「奴ら」について詳細は不明ですが、会話が成立し、外見的にも人間と見分けがつきません。
主人公たちのスペックは高く、ホラー演出も控えめ(スプラッタ描写もほとんどないです)。そのためあまりハラハラすることがなく、「この窮地をどう脱出するのか?」みたいな部分に焦点が当たっているという若干変わり種の作品です。
そんなわけで結構面白いと思うんですけど、心理描写をあまりしないので感情移入ができず、読者がおいてけぼりになるという現象が起きてる作品でもあります。「寄生獣」とかと設定上ちょっと似てますが、たぶん一番違うのがそこ。
試し読み ジャンプ+公式サイト
不良のはらわた YANKEE OF THE DEAD(今村KSK)
全国の不良たちが最後に流れ着く最凶の場所・私立淨寺高等学校狼命露(ロメロ)館。鉄の拳を持つ男・邑楽真剣と、1巻では名前が判明しないツッコミ担当の小太り、この二人が転入してきた日は奇しくも、謎の隕石の影響で不良たちの一部がゾンビ化し始めた日でもあった。
ホラー要素ビタイチないのでこのカテゴリに置くのもはばかられるのですが、漱石もいるしまあいいかっつって置いてます。
「月刊少年チャンピオン」で2015~2017年連載、全4巻で完結。
試し読み ソク読み
フードンビ(栗原正尚)
大手通販サイト「Nile」の出荷センターで働く主人公・柏木春人。キックボクシングの経験を持つも「そんなものは社会では必要ない」とけなされる彼だったが、食堂で肉を食べた職員たちが次々とゾンビ化していくとこれが大変役に立つ。原因は未認可の成長薬だというが……?
前門のゾンビ、後門のクズ人間の挟み撃ちに合う、人間関係ドロドロゾンビアクション。
全2巻で完結。紹介しといてなんですがレビューでかなり低評価の作品で、無理ねーなとは思います。なんかこう何もかも不自然というか、ゲームみたいなマンガです。この作品に限った話でもないですが、中途半端にジョジョっぽいのも痛々しい。
ゾン100 ~ゾンビになるまでにしたい100のこと~(原作:麻生羽呂 漫画:高田康太郎)
冗談みたいなブラック企業に勤める天道輝から見れば、ゾンビ映画の世界など会社に比べれば天国。今日も絶望とともに出社しようとした輝だったが、いつの間にか世界はゾンビが跋扈し、もう会社に行かないでいい状況になっていた。
快哉を叫び、死者が増殖する世界で生きることを思い出した男が、やりたいことをひとつずつ叶えていく現代的ゾンビもの。
やりたいこと、たとえば親友と酒を飲むとか、実家で親と過ごすとかそういうのは相手が生きている必要があり、「相手が死ぬまでに叶えたいリスト」にもなっている、という視点がクレバー。マンガの形を借りて麻生先生が言いたいことを言っているようなところがあり、このへんが刺さる人とひっかかる人で分かれそうです。
「月刊サンデーGX」で2018年~連載。
類似作 死ぬまでにしたい10のこと(映画)、最高の人生の見つけ方(映画)など
試し読み サンデーうぇぶり
リビドーズ(笠原真樹)
誰の中にも性という名の怪物は潜んでいる。ぱっとしない毎日を送る高校二年生の脇谷イサムは、突然日常に入り込んできた「リビド」感染者との接触により、性的興奮で右半身のみ怪物化する体質へと変化してしまう。コントロールできない衝動に飲み込まれていく人々の中で、なぜ彼だけがこの化け物を制御できているのか――?
正直話はかなり適当だと思いますが、絵はいい感じです。血管の浮き出た太った怪物は「アイアムアヒーロー」序盤のアシの女の子を彷彿とさせますし、感染者は人間時もリビドの繁殖のために行動をコントロールされるようで、このへんの中途半端に化け物化した人間とかの描写も好みです。
試し読み 週刊ヤングジャンプ公式サイト
他にもこんなマンガが人だった頃の顔をして笑っています
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