戦争は嫌いだけど兵器は好き
国内外問わず現実の戦争を題材としたマンガのコーナーです。戦記に限らず戦時下の生活もOK。黎明期の漫画家には戦争体験を持つ方も多く、60年代には戦記ものマンガのブームもあったらしいですが、現在読めるものがどれほど残っているやら。軍艦とかヒコーキとか出てくる近代~現代以降の戦争が対象で、それより前のものは歴史マンガのほうに置いてます。また実際の戦争を舞台にしても空想要素の強いものは架空戦記、あるいは該当する各ジャンルに振り分けます。
冷戦とかの物理的にドンパチやってないけど対立状態にあるようなのも、他に行き場がなければここに来るかと思います。
紙の砦(手塚治虫)
昭和十九年、大阪――大寒鉄郎と岡本京子は出会い、お互いの夢を語り合う。自分は漫画家になる、あたしはオペラ歌手になる。爆撃の中でもマンガを描き続ける大寒だったが、やがて注意人物として罰則を押しつけられるようになり……(”紙の砦”)。
漫画家を目指す少年の目から戦時下・戦争直後を描く、自伝的短編集。
収録作は表題作の他「がちゃぼい一代記」「すきっ腹のブルース」「トキワ荘物語」「という手紙がきた」「動物つれづれ草」「どついたれ(抜粋)」。どついたれは未完作品を再構成したものです。古典的なギャグが満載のがちゃぼいなんかは、若い人が読むと逆に新鮮に感じるんじゃないでしょうか。
試し読み 手塚治虫と戦争
総員玉砕せよ!(水木しげる)
南方戦線、ニューブリテン島(パプアニューギニア)……「天国のような場所」といわれるバイエンにたどり着いた田所支隊は、体罰を受けたり魚を獲ったり人が死んだりしながら、淡々と日常を送っていく。やがて島は戦場へと変わり、兵士たちは無謀な玉砕作戦を命じられることになる……作者自身の体験(「丸山」は水木先生がモデル)を元に綴られた、九割実話の戦記ものの名作。
「自作の劇画や漫画の中で、最も愛着深い作品はと聞かれれば、『総員玉砕せよ!』と答える」と水木先生は著書で書かれています。出征先のラバウルで「この世の地獄」を見られた自らの戦争体験と重ね合わせて描かれた『総員玉砕せよ!』。その直筆原画をご覧いただき、水木先生の思いを感じてください。 pic.twitter.com/oWrG3rejAo
— 水木しげる 魂の漫画展@京都 (@mizuki_ryumuse) November 22, 2018
水木先生自身も戦地で左腕を失っています。足立倫行氏の解説によると「数十編の短編戦記マンガを手掛けた後、満を持して世に問うた」作品。全1巻で完結。
試し読み 講談社コミックプラス
風太郎不戦日記(原作:山田風太郎 漫画:勝田文)
後には「忍法帖」シリーズでベストセラー作家となる山田風太郎も、「その年」昭和二十年には一介の医大生に過ぎなかった。かろうじて繋がる先行き不透明な毎日と、それでも時々訪れるトボけた日常、そしてうねりをあげて変化する情勢――稀代のメモ魔が遺した膨大な日記から立ち昇る、ただただ続く戦中学生の日常のリアル。
うっすら敗戦の予感を感じつつ、日本への愛着を強く持ち勝利にこだわる山田の姿は危うくもあり、羨ましくもあり。
元が日記なので文字量多め。3巻巻末に原作の紹介がありますので、お気に召した方は本編前後の話も原著でどうぞ。
ちなみに高須家で布石張ってる啓子嬢は、後に山田先生の奥様となります。「モーニング」で2019~2021年連載、全3巻で完結。
試し読み モーニング公式サイト
ぼくは、せんそうをしらない。(カメントツ)
定食屋で、たまたま相席になった年老いた男。食事をとる作者の前でテレビを見ていた老人は、突然衝撃の一言を呟いた――第一話が大反響を招き、ついにカメントツ先生をメジャー作家に押し上げそうな気配を見せつつも数カ月の沈黙に入った、忘られゆく「日本の戦争」にまつわるルポ漫画。
「ぼくは、せんそうをしらない」という連載がリイドカフェさんで始まりました。
戦争体験というシビアなテーマを僕が描くという必然性について色々考えながら描きました。読んでください。https://t.co/Zp3bK8WF9l pic.twitter.com/7ybTD7vHR0— カメントツ🍰こぐまのケーキ屋さん (@Computerozi) May 21, 2016
なのでまあ短編として楽しむ感じですが、一話が非常に良かったので。
試し読み リイドカフェ
西武新宿戦線異状なし(原作:押井守 漫画:大野安之)
自衛隊叛乱軍、突如都心を制圧――東京に「解放区」が生まれて日本は分断国家となった。国道16号は日本と解放区を分ける軍事境界線となり、とはいえ日常はあまり変わらず……ごく普通の高校生・丸輪零はそんな世情でオルグされ、境界線を越えて革命軍の一員となる。しかし彼が配属された戦車回収小隊は、革命への熱情もへったくれもないスクラップ拾い(または火事場泥棒)のバタ屋兼ヤミ屋集団だった。
圧巻はアクション描写で非常にアニメ的、これはなかなか普通のマンガ描きには切れないネームです。主人公はいわゆる「メガネ」的キャラで無邪気、どっちかというとマムシ的なサブキャラのおっさんが印象に残ります。
戦車好きか押井監督好きなら割とおすすめ。もとは1987年近藤和久作画で「B-CLUB」連載でしたがこれが頓挫、その後大野先生作画で「DRAGON RETRIEVER」と副題を添え、「ネオファンタジー」「コンバットコミック」で1992~1993年連載。日本が一流経済国家だった頃のマンガですね。
その後「月刊少年エース」で2002年に番外編を掲載、これを含めて完全版として再販されているのでそちらで読むのを薦めます。全1巻で完結。
類似作 機動警察パトレイバー2 the Movie(映画)
他にもこんなマンガで青いバナナも黄色く熟れています
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